22「もうひとつの村」
前回までのあらすじ
遺跡に着いたマイケル達、中の最奥部にスタイヤーを見つけた。エルドとの戦いの末、スタイヤーは死亡。アンは帰り、マイケル達は先へ進む。
マイケル達は遺跡から続く獣道を歩いていた。
パンデミック発生地にあるというのに、ゾンビはいない。
自然ばかりだ。
「自分達は、何でこんなところに居るんだ?」
ふと、マルコが言った。
「さあな…戦わなければならないからじゃないか?」
「ゾンビとか?それとも、ボスか?」
「そうだろ」
マルコは歩みを止める。
それに合わせ、マイケルたちも。
「ボスが言っただろ。自由になれって。マイケル、お前は自由ってなんだと思う?」
「さあな、哲学は苦手だ。とりあえず、今は進むべきだろう」
マイケルは歩き出す。
「何処に居るんだ?ボス」
ポツリ言った。
しばらくすると、エルドと出会った場所のような所に出た。
だが、それとは違い、穏やかな感じだ。
上半身裸の子供も走り回っている。
そして、老人が家から姿を表した。
エルドと同じような格好をした黒人だ。
エルドはその男性に駆け寄った。
『あなた方は一体』
その言語は知っているものだった。
「エルド、まさかこの言葉は」
『サーイの言葉だ…ここの村長か?名前は?』
エルドは老人の肩を両手で掴んで言った。
『いかにも私がこの村の村長。グレス・サーイ・ブレダだ。お主の名は?』
『己は…己はエルド・サーイ・ファマスだ…』
エルドは今にも溢れようとする涙を堪えて言った。
ハンセインはそれをレンズに収めた。
「サーイ族はあっちだけじゃなかったのね」
「ええ、同じ民族に会えて良かったのでしょう」
グレスとエルドはしばらく話し合っていた。
しばらくして、グレスから家に案内された。
家の入口付近には大勢の人だかりが出来ていた。
『どうぞ、お座りください』
木のベンチに座る。
『あなた方はもしかして政府の者ですか?』
「まあ、間違ってはない」
マイケル達のセリフをエルドが翻訳して伝える。
『どうしてここに?』
「話せば長くなるが、基本的に、ここらへんでとても危険なことが起きている」
『危険なこととは?』
「簡単に言うと怪物が歩き回っている。生きる屍。通称ゾンビだ」
『なるほど、村のものには遠出をするなと言っておきます』
「話が早くて助かる。それと、その他に怪物が居るが、気をつけてくれ」
『分かった。それはどうすればいい?』
「…気をつけてくれ」
マイケルはそう言うしか無かった。
グレスはマイケルの目を見ると、ゆっくりと頷いた。
あらかた話したあと、エルドは水を飲み、立ち上がった。
「どうしたエルド?」
『村長、己をここの村に居させてください!私達の村は誰も居なくなってしまったんです!』
サーイ族の方式なのだろう、頭を下げ、槍を地面に置いて言った。
『少し、待っていなさい』
グレスは家を出た。
「エルド、やっぱりそのつもりだったんだな」
「まあ良いでしょう。こちらとしても、保護すべき人が減りますから」
「エルド、お前は前に、戦いの中で生きると言ったな」
『ああ、だが大切なことを忘れていた。己等にとって戦いは神聖なものだ。己はそれを忘れていた』
「お前は、ここに残るんだな」
「ああ」
グレスが家に戻ってくる。
『今、村の者と話をした』
エルドの肩を叩く。
エルドが顔を上げると、手を差し出すグレスの姿があった。
『ありがとうございます』
エルドはその手を握る。
「エルドとはこれでおさらばか。ところで、ここから街まではどのくらいだ?」
『そうだな、歩きで半日だ』
「半日か…」
『一応車がある、政府が置いていった物だ。だが、私達は操ることが出来ない』
「借りても良いのか?」
『構わない』
「分かった。済まない。それと、ここで一泊することは出来ないか?」
『ああ、それも構わない。泊室は空いているのでね』
「ありがとう」
マイケルは頭を下げた。
マイケル達が外に出ると、村の人が大勢、マイケル達のことをじろじろと見ていた。
35kiです。
長らくお待たせした上、低クオリティですいません。
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タイトルは「マーヴェラス〜もうひとつの宝島〜」




