95話 少し元気すぎる?
ーガン!ガン!ガン!
あれからどれくらい撃ち込んだだろうか。
守りの話を聞いてから、足は痛い事は無くなった。
だが…さっきから全く動いてない。
「はぁ…はぁ。」
「今日は終わりじゃ。ここで無理をする事はない。」
「は、はい。あ、ありがとう…ござい、ます。」
少しでも動かしたかったが、もう魔力も無くなりそうで立ってるのがやっとだ。
正直難しく無いなって思った自分が情けなく思う。
「…ふぅー。」
「そう落ち込むで無いぞ。この数時間で翔の魔力の使い方は格段に良くなった。」
「そう、なんですかね?」
「そうは言っても気になるよの。だが忘れて貰っては困るが、ワシは学園長じゃぞ?これで負けたとあれば、大問題じゃ。」
「はい…精進します。」
「硬いのぉ〜まぁ、それが翔の良いとこなんだが。お?和歌がまだやっておるから見に行くぞ。他者を見るのも良き学びじゃぞ。」
そう言われて前を見た。
剣の音が一定のリズムで聞こえる事に気がついた。
ーカン!カン!カン!カン!
「翔か。学園長は凄かっただろう。」
「はい…びくともしませんでした。」
「落ち込んでるのか?兄を撃ち負かしといてそんな顔をするな。自信を持て。」
「は、はい。きりんさん、ありがとうございます。」
「う、うむ!」
ーカン!カン!カン!カン!
きりんさんと学園長は先輩とアメリさんの撃ち合いを見て引きつった顔をしている。
何か変わった所があるのだろうか?
先程から色んな角度から一定の間隔で撃ち込んでる様にしか見えないけど。
「網野殿。和歌はいつからあの状況なんじゃ?」
「私が見てる時には既にこの状況でした。少なくとも1時間は…。」
「あれはしんどいのぉ。アメリもきつそうじゃな。」
「1時間もこの状況って…」
俺と同じ決まりであれば一撃入れるんだよな。
一撃に重さはあまり無い様に見えるが、あの剣捌きを1時間ってやってる事に驚いた。
アメリさんは一撃受けない様に捌くのは魔力も洞察力もかなり気を使うはず。
学園長が言う通り相手はしんどいだろうなぁ。
しかも先輩は…
「たん、たん、たん、たたん♪」
まるで歌っているかの様に撃ち込み続けていて、まだまだ元気一杯に見える。
少し元気すぎる?
「……ふぅ。」
「大丈夫ですかね?」
「ふむ。兄は疲れが見えるな。あれだけの攻撃を捌いていればしょうがない。」
「そうだな。それをさせている和歌も凄いがの。」
ーカン!カン!カン!カン!
ーカン!カン!カン!カ、カン!
「ん?音が変わった。」
その後はあっという間だった。
「っく!」
「たん!たん!たたたん!」
ーカン!カン!カ、ガン!
「わ〜い。やっと当たった!」
「っく…ふはぁー負けた…はぁ、はぁ。」
「皆見てたんだ〜。」
「和歌お疲れ様。そろそろ夕方になるから戻るぞ。」
「ん〜了解。」
「…和歌先輩。」
「ん〜?」
「肩貸しましょうか?」
「…翔くん後ろ向いて。」
「はい?…おっ!?はぁ…しょうがないですね。」
「たすかるよぉ〜」
見た所物凄く疲れていそうだったので、肩を貸すと言ったのにおぶさってきた。
「まだ余裕そうに見えたが、さすがに疲れたのかの?」
「ん〜…夢中で〜…やってたら〜……。」
「俺も疲れた…。」
「に、兄様も?」
「い、いや。さすがに妹におぶさるのは…。」
「ならばワシがしようか?」
「結構だ!」
「皆さん元気ですね。和歌先輩は…。」
「…すぅ。」
「寝てますね。」
「今夜は我が部隊で使っている小屋に泊まるといい。」
「に、兄様。あ、ありがとう。」
「ふっ。きりんを夜道歩かせる訳には行かないからな。」
「網野殿は翔が万全じゃないと、迷子になるからの。」
「が、学園長!?」
「はは。翔、きりんを頼んだぞ。」
「小屋までの距離をですか?…きりんさん、手繋ぎましょうか?」
「か、翔さんまで!あ、歩きです。ま、迷いませんよ!」
学園に戻るのは厳しいと判断された俺達は、そのまま騎士部隊の小屋に泊めてもらう事になった。
さすがにこの距離で迷う訳ないか?
小屋までの道は皆で歩いて移動した。
きりんさんも無事小屋に着く事が出来ました。