94話 考えた戦い方。
助走をつけた飛び蹴りを学園長に当てた。
ーガン!
「な!?」
全く動かないだと!?
簡単だと思って力を抜いた訳じゃない。
全力でやった訳でもないが。
そこが壁であっても砕くくらいの勢いはあったはず。
「色々言っていた割に容赦ないのぉ。」
「いや。遠慮は要らないって、きりんさんにも言われましたし。」
「そうなんだがのぉ。始めは小手調べで、少し様子を見ると思ったのだよ。」
「これでも様子見のつもりも少しはありましたけど。」
「…これで様子見とな?普通の人であれば吹き飛ぶだけじゃ済まない威力だったが。」
「ははは。そんな事ないと思いますよ。」
さて、どうしようか。
魔力溜めて全力でぶつかるのも考えたけど、下手すれば攻撃した俺がどうにかなりそうな硬さだったし。
さっきので全く動かないとなると、少し考えを変えた方が良いかもしれない。
「ほれ?どうした?もう手詰まりかの?時間はあるんじゃ、色々試して見ると良い。」
「そうですね。お言葉に甘えて行かせていただきます!」
ーゴン!
「…っ!」
「今のはあまり良くないの。痛そうじゃ。」
痛そうじゃない。痛いですよ。
足元から崩して見るかと、ローキック入れてみた。
膝の関節あたりを狙ったにも関わらず、少しも動かずびくともしなかった。
逆に俺の足が折れるかと思った。
「翔よ。蹴る時に魔力はどうしておるのじゃ?」
「え?んー。始めの勢いはつける為に使ってますよ。」
「そうじゃない。その勢いで使った魔力の後じゃ。」
「当たった時の為に、魔力の流れを意識してますかね。」
「具体的にどうするのじゃ?」
「そうですね。振り抜く力と支える力を魔力で補うですかね。」
「やはりな。翔はそこまで考えていると思っておったぞ。」
「何か変ですかね?」
「いや、道筋はそれで良い。そこに1つ守る事の考えを足すだけじゃ。」
「守る事ですか?」
「うむ。さっきのアメリとの手合せで、翔は無意識にそれをやってたがな。」
さっきの手合せで自身を守る事はしたか?
思い返しても攻めにしか気を配って無かったと思うけど。
「ほれ、翔がアメリの剣を折った時じゃ。」
「あーはい。木の剣でしたし、折れない事は無いかと思ってやっただけですけど。」
「実際あの剣は普通の木のじゃ無いのじゃ。蹴りで折るなんぞ普通は出来ん。」
「でも、アメリさんに剣当てた時も折れちゃいましたよ…あ、それも守る事なんですか?」
「それもそうじゃな。さて答えはいるかの?」
「…いえ、少し考えても良いですか?」
「あぁ。思った様にやってみると良い。」
剣を折った時に、折られた時に何かあるんだな。
教えて貰っても良かったんだが、それだと俺は出来ない気がして自分で少し考える事にした。
学園長もそれを思ったか分からないけど、答えがいるか聞いてくれた。
そうなると1つ確認してみたいことがある。
「少し抑えつつ…せい!」
ードゴン!
「ん、痛くは無いな。」
俺は地面を踏みつけてみた。
意識したいとは、身につけている靴に魔力で覆う事と出来るという想像。
結果は地面は砕けて、俺自身痛く無いって事実。
「何か思いついたかの?」
「物に魔力って付与出来るって事と想像するって事ですかね?」
「おぉ。付与はすぐ気付くと思ったが、もう1つはよく分かったの。」
「やっぱり想像もそうなんですか。」
「想像する事は何においても重要な事じゃ。考えてそれをやる者は少ないがな。」
「ですよね。俺もそうじゃないかと思っただけで、実際どうするかよく分からないですよ。」
「翔は考えた戦い方するみたいだからの。色々試してみると良い。」
「はい。では、いきます!」
ここまでヒントを貰ったんだ。
後は試して、身体で覚えるだけ。
学園長には申し訳ないけど、もう少し練習台になってもらおう。
そしてあの円から出してやる。




