64話 ヒーロー登場。
俺は今この森果町の外周をしている。
門で見張りを任せてきた2人が何事も無ければ…。
「…まぁ暫くは魔物もここには近づかないだろうけど。」
あれだけ道中暴れまわれば、森から正面切って突撃してくる物好きはいないだろう。
そんな訳で俺は正面以外からの外敵がいないか見に来たんだが。
「開けた草原だし、町の周りには柵は飛び越えるには高いな。」
空から魔物が飛んできたら別だと思うけど。
そう言えば空を飛んでいる魔物っていないのかな?
今まで一度も見た事無いな、後で網野さんに聞いてみよう。
「結構走った気もするが、今はどこら辺なんだろう。」
日も傾いてきたし、少しスピード上げて入り口まで戻るか。
…
……
………。
「広っ!?」
全然入り口に戻らないし。
果物を作っているからか敷地がでかいな。
始め散策しながら、ランニングしていたから終わりが見えない。
さすがに夜になったらやばいかもしれないし、マジで走るか…―。
「何も来ないねきりんちゃん。暇だねー。」
「そう言うな。平和な方がいいだろう。」
「そうなんだけど。じっとしているって苦手なんだよ。」
「まぁ翔がここを任せたんだ。戻るまで待つのも任務だ。」
「むー。私も走りたかったな。」
2人が門で見張りをしている間は何も無かったみたいだった。
ただ門を直す人達と話しながらお手伝いをしていただけらしい。
「そう言えば、あのにーちゃんはどこいったんだ?」
「翔くん?町の外周見てくるって走りに行ったよ。」
「へ?この町をか?ちょっとまずいな。」
「ん?何かあるの?」
「走ったんだろ?ここ一日で回れる大きさじゃないんだが。」
「そうなの?翔くんなら大丈夫じゃないかなー。」
「え?まぁ和歌ちゃんが言うならいいんだが…。」
「和歌ちゃんときりんちゃんが待つなら、俺らも付き合うぜ。」
「む。和歌あそこ何か動かなかったか?」
「暗くてよくわかんないけど。きりんちゃんには見えるの?」
「あぁ。あれは…―。」
辺りはすっかり暗くなってしまった。
柵を見たけど、途中でどこか入口があるかと思ったんだが。
飛び越えるには、高すぎるし。
結構走ったけど…お!柵が終わった。
右に曲がれば門の方に…ん?あれなんだ?
―キシャァァァァァ!!!!…ゴックン。
森から出てきたでかい蛇は地面に刺さっている魔物を食べている。
「しかし、よく食べるなぁ。あのまま行けば町に向かうよな。」
町の門に向かって大きな蛇は進んで行く。
おいおい。そんなに食べたら俺の分なくなるじゃないか。
じゃなくて!町には向かわせない!
―はぁぁぁぁ!せや!
―シャァァァぁぁぁ……ドーーン!!
「お、翔か。戻ってこれたみたいだな。」
「あぁー!私が倒そうとしたのにー!」
「何事も無くて良かったです。大丈夫でした?」
2人と職人達は門の修復が終わり、俺が戻ってくるのを待っていたみたいだ。
それで大きな蛇が出てきた。
じっとしていた先輩が、ウサ晴らしに…いざ倒そうとした所に俺が来たらしい。
「成る程。すいません。でも俺も走ってるしかしてないんで、一匹くらいは。」
「む。それならしょうがないか。うん。」
「町の人に聞いてかなり距離があったと聞いたが。」
「そうなんですよ。途中で入れるところもないし、飛ばしてきましたよ。」
「ふむ。明日3人で走るか?」
「偶には違うところを走るのもいいね。」
「そうですね。」
―ひそひそ。
周りに人が集まっていて、凄く注目されてる。
俺達見られてるのか?
「視線を感じるな。私達と…翔に熱い視線がちらほら。」
「…俺何かしちゃいましたか?蛇は森に飛ばしましたが。」
「多分それだと思うよー。おじちゃんに聞いてきたんだけど―。」
どうやらあの蛇が居るから、果物を運べないらしい。
町で何度か討伐しようと動いたが、造るのは得意だが戦うのは苦手だった。
困ったところに学園長がスイカが食べたいと催促した事が始まりだった。
「始まりの理由がなんとも言えないが見られていた理由は分かりました。」
「うん。だから翔くんはヒーローなんだね。」
「あぁ、それでこの視線か。納得した。」
「へ?ヒーロー?蛇蹴り飛ばしただけですが。」
「よお!中々の実力だな。これは任せてもよさそうだ。」
「町長さん。ご飯まだ―?」
「おう、準備できたから呼びに来たぞ!」
「よし、すぐ行こう。ほら翔くん!」
「はいはい。行きますから引っ張らないで下さい。」
「……ちら。ひっ!?」
「網野さんどうしました?」
「な、なんでも。こ、怖いよぉ…。」
ヒーローはさておき。
食事の準備が終わり呼びに来た町長。
先輩に引っ張られて、町長に着いて行く俺達。
網野さんは後ろから着いてくるけど、少し顔が青い気がする。
なんでも無いみたいだけど。
まぁ今日はいろいろあったし、食べてすぐ寝たいわ。