56話 訓練の仕上げらしい。
俺達は午前の訓練を終えてから食堂で全員で昼食をとった。
と言っても俺は、ヘレンさんの一戦しかできなかった。
後はルカさんの話を聞かされ…聞いていたら終わってしまった。
ルカさんの話はとても勉強になったので、無駄だったとは言わない。
ただ…もっと戦ってみたかったなぁ。
そのまま昼食を終えて、1時間後に訓練の仕上げと言われ学園の外にやってきた。
「んー外は気持ちがいいね!」
「「…はぁ。」」
元気いっぱいの先輩とは別に、ローランドさんとルカさんはなんだか憂鬱そうだ。
俺は気になって2人に声をかけてみた。
「どうしたんですか?2人して溜息なんて。」
「いやな、これからの事を考えるとちょっとな。」
「そうね。私もあまり得意ではないから。」
この後何が起こるのか、少し不安になってきた。
網野さんは訓練の仕上げと言っていたが、これから何が起こるのだろうか。
「ローにルカ。そんな嫌そうにするな。これも訓練だぞ。」
「はい。頑張ります!」
「えぇ。ちゃんとやるから、お手柔らかに…ね。」
2人とも訓練するからには、本気でやるらしい。
これから何をするのだろう。
「頑張りなさい。では皆着いて来い!」
「はーい。」
「は、はい!」
網野さんは皆に言うと走り出した。
先輩はそのまま走り出し、他の人もそれに続いた。
俺も少し遅れてその後を走った。
「………」
「…これってどこまで走るんだろうね。」
「学園に沿って走ってるみたいですがどうなんでしょう?」
周りは皆無言で走っているが、今の所は学園に沿って走ってるしか分からない。
「今は網野さんに着いて行く事だけ考えますか。」
「ん。分かった。ならちゃんと着いていかないとね。」
俺と先輩はただ前を走る網野さん達を追いかける。
そして暫く走って来た俺達は学園の入り口に戻ってきた。
「あれ?戻ってきたんですかね?」
「そだね。なんだったんだろう?」
「ほぅ。割と早めに走ったんだが、ちゃんと着いて来たか。」
学園の入り口から走り始めて、また入り口に戻ってきた。
俺と先輩が疑問に思ってるが、網野さんは関心しているだけだった。
「翔に和歌。今私に着いて来てる時に魔力は使ったか?」
「俺は少し使ってますね。」
「ん?普通に走ってたと思うよ。」
「そうか。なら次は魔力を使わないように意識して着いて来てくれ。では行くぞ。」
魔力を使った事を聞いて、次は使わないようにと言ってまた走り出した。
俺はよく分からないが、そのまま網野さんの後を追った。
「「「「…。」」」」
「なんか、後ろの皆静かだよね。」
「そうですね。走り始めてからずっと無言ですね。」
「走ってる時、喋っちゃダメなのかな?」
「そんな事は無いぞ。」
後ろを走るルカさん、ヘレンさん、ローランドさん、リコさんがずっと静かだった。
俺と先輩が少し喋りつつ走っているけど、もしかしたら喋ってはいけないのか。
そう思っていたら、網野さんがそんな事は無いと言ってくれた。
「ヘレンはいつも通りだが。他の3人は単純に喋る気力がないだけだ。」
「走りながら喋るの大変ですしね。」
「確かに。でも、静かに走るのは退屈だよー。」
俺と先輩と網野さんで、少し喋りつつ走った。
入り口に戻ってきたが約3名が今にも倒れそうだ。
「皆さん大丈夫ですか?」
「「「……め…。」」」
「…だめらしい。」
「ヘレンさんは平気そうですね。」
「…あぁ。」
「よし、15分休憩したらラスト行くぞ。」
「「「…。」」」
先輩が気にして声をかけるも、ヘレンさん以外の3人はだめそうだ。
そんな3人に網野さんはまた走ると伝える。
もう喋る事すらできない3人であった。




