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楽園  作者: 茄子
楽園*オムニバス*
8/38

楽園#6人目

後半で名前がつくので、前半部分はどっちの目線なのかわかりにくいです。

『1人』



 双子は昔から忌み嫌われる存在であった。


悪魔の仕業、呪い、そう言われ双子を中心に回りの家族までもが迫害を受ける事がある。


僕達は1人の人間だ。


 今日も何人の男をヌいたかな。口の中も、ナカもドロドロの液体だらけだ。隣でもう一人の僕が男の上に乗って腰を振っている。僕は持久力がないのかも。この男は結構溜まって何度もイッているが、なんせ短小すぎてつまらない。


仕事が終わり着替えながら


 「毎日sex漬けでも気持ちいいから別にいいけど、そろそろ飽きた」


 「僕もだよ」


 「さぁ、もう行こうか」


僕はもう一人の僕の手を引いてこの屋敷を出た。



***


 僕はもう一人の僕に手を引かれ小高い山へ向かった。同じ手を同じ手でしっかりと繋ぐ


むしろここまで普通に外に出られた事が凄いと思う。幸い彼等は狩りに行っている時間。何年も性欲処理の仕事として働かされているかいだけあって彼等の行動はわかっていた。


 「僕達も森で捕まってこんな事になったし・・でも・・」


 「家に帰りたい、そうでしょ?」


もう一人の僕の考えている事くらい簡単にわかる。


 「うん。一度行ってみよう」


だって僕達は僕達1人の人間だからだ。


そうしてかつて住んでいた森の家に向かった。



***


 僕はもう一人の手を強く握った。同時にもう一人の僕も僕の手を強く握った。


目の前には白骨化した二つの骸が横たわっており、家の中は散乱していた。互いに手を離すこともなく二つの骸に近づき、1つの銃弾を拾った。


 「これは・・あのおじさんの銃弾」


 「この銃弾は狩り用の弾。それを持っているのは、あのおじさんしかいない」


 「おじさん、母さんの事好きだったからね」


おじさん、というのは近くに住む猟師である。その人と父さんは昔ながらの付き合いだったらしく、又、お互い母さんの事を好いており母さんは父さんを選んだ。


 「違ったとしても、僕達をこんな目に合わせたきっかけはおじさんさ」


おじさんが嘘の言伝をし、僕達は森の奥へ行くと知らない大人達が僕達を誘拐した。


先ほど埋葬した両親に最後の挨拶を頭に浮かべながら猟師の家へ向かった。



***


 両親が大好きであったかと言われると、首を縦に振ることは僕達はない。


双子としてこの世に生まれ、町には居られなくなった両親は昔からの友人の猟師の近くの家を提供してもらいそこに住んだ。両親は僕達に愛を注ぐことはなく虐待はなかった。僕達は誰にも認められる事もなく、両親も僕達を見てくれなかった。


家をノックし、猟師が驚きを隠せない顔をしながら扉を開ける。


 「ど、どうして・・。しかも、おまえ達何故そんな格好してるんだ?」


そんな格好だなんて失礼だなぁ。そんな格好にさせた奴は目の前にいるんだが。


 「そんな事はどうでもいいんだ。ねぇ、おじさん僕達と遊ばない?」


少しの間が空き、戸惑いつつも家に入れてくれた。


そしてベッドにお互い座りおじさんに手招きをする。


 「時が過ぎる内に連れていかれてよかったなって思ったんだ。そしてそのおじさんにお礼をしに来たんだよ!」


 「・・・」


手慣れたようにおじさんの衣服を脱がせ互いの片手でソレの形をなぞる。おじさんが驚きつつもまんざらでもなさ気な態度をみせる


 「いいねぇ。ならそのお礼を味わう事にさせてもらおうかな」


2人でソレに舐め合い、交代にしゃぶる。


 「おじさんの太くてすっごいいい・・」


 「僕のナカに入れて」


もう一人の僕が誘惑する。


 「あぁ、いいぜ」


そしてもう一人の僕とおじさんが突き合ってる間、僕はおじさんの体にキスを落としながら眉間に最後のキスを落とした。


 「っく・・もう・・イク・・次はお前だからな・・はぁっ・・」


そう言い、キスをする僕の足をなぞりながらニタニタと笑う猟師


 「うん!おじさんのちょーだい!だから・・早く逝って」


―パァン!―


猟師の顔にはさっきまでの笑みと、眉間に穴が空いていた。


 「死ぬ前にイかせてあげればよかったのに」


 「逝かせたでしょ」


二人で笑い合う。


家の扉を開け、新しい場所を求め、互いに手を強く握りながら山へ向かった。



***


 山での生活に慣れてきた頃、度々悪戯をしに他の家に行くことがあった。


―ガッ―


 「っ・・」


もう一人の僕が笑いながら唾を吐く。運悪く捕まってしまい、大柄な男に暴行を受けた


 「最近被害が遭い続起こっているのはお前達のせいか・・双子はやはり悪魔なのだ!」


―バキッ―


次は僕が蹴られ床に叩きつけられる。


 「しかも何故そのような・・まるで・・」


 「「羊」」

声を揃えお互いが大男の顔をじっと見る。


互いの頭には渦を巻いたクリーム色の角が二対耳の上辺りに生え、お尻の上に白い巻き毛の尻尾がある。これは全て誘拐され人体実験のモルモットにされたから。こんな姿にした男は“また駄目だった”と言っていた事から、過去にも同じような事があり、僕達のような人間と動物の中間の生物が居るということだ。だがそんなの関係ない。僕が居ればいい。それだけだ。


 「これは悪魔の呪いなのである・・殺さなければ」


目をギラつかせた男が近づきもう一人の僕に手を伸ばし首を締め始める


―ギリギリ―


 「かっ・・あ・・うァっ・・」


 「貴様っ!」


もう一人の僕口から一滴の涎が落ちる。駄目だ、一人じゃ意味がない。僕が居て一人なんだ。欠ける事は許されない。


 「その子が死ぬ方が早いか、貴方が死ぬ方どちらが早いかしら」


僕達3人にしか居なかった所に1つの女性の声が男の後ろから聞こえた。


 「げほっ・・ゴホッゴホッ・・」


青ざめた男はもう一人の僕の首から手を離し両手を上げ後ずさった。


 「未だ昔の古臭い考えは根付いているものね。大分衰退してきたけど」


 「この姿!まさしく悪魔じゃないか!」


 「山羊の角じゃないわよ」


 「しかし・・!」


 「どこからが人間の基準になるのか教えてくれるのかしら?」


女性は男の喉元にナイフを当てながら静かに声色が変わった。


 「さ、行きましょう。話てていても拉致があかないわ」


そう言い僕達の縄を持っていたナイフで解き、背中をポンと軽く押し外へ誘導された。


 「悪戯をしたのはこの子達だから罰を与えて当然、けれど変な考えで殺すのは見過ごせない。お代は置いておいたからそれで許して頂戴な」


男は懐にいつの間にか入っていた巾着を見つけた。多分お金。


 「けれど、罪のない子を殺そうとしようとしたならば貴方の命はないと思っていて頂戴」


そう言いこの人に僕達は背中を押され歩き始めた。



***ティヌス***


廊下に僕達の足音が響く。廊下の途中途中には花が活けてある花瓶が規則正しく並んでいる。 


 「此処の部屋を使って頂戴」


助けてもらった後、一度家に戻り姉さんの“楽園”への話にのった。


“どこからが人間の基準になるのか”その言葉に何故か魅かれた。僕達はいつも2人で1人だった。お互いが居れば成り立つ世界、他の物なんてただのお飾り、そう思っていた。けれどそれは一番思うべきな事だっただろうし、本当はお互い思っていたのに勝手に蓋をしていた疑問・感情だったのだと思う。それにもう一人の僕・・いや、ビバーナムも思った筈だ。


楽園について、初めて名を貰った。僕はティヌス、そしてもう一人の僕はビバーナムという名だ。この名には「私を見て」という花言葉?と言われる意味があるらしい。姉さんは、何故か僕達の願いをわかっていたかのように言った。両親には「おまえ」で全て事が成立していた。見てくれない所か、名前さえもつけられなかったのだ。


だからこそ、姉さんは1人を見てくれる。もちろん、僕達を見てくれる。僕達という1人を見てくれる。


 「ふかふか」


部屋にあるベッドに座りビバーナムが撫でている。僕も座り、姉さんを手招いた。


 「なあに?・・!?」


シーツの上に姉さんの髪が広がりシワが寄る。僕達は姉さんを見降ろしながら顔を近づける。 


 「お礼がしたいんだ。女性を相手するのは稀だけれど、気持ちよくさせてあげる!」


 「姉さんシよう」


すると姉さんは笑いながら体を起こし僕達を抱きしめた。


 「それはありがたいわ。けれどまたの機会にでもね。それに、お礼ならもう貰ってるわ」


あげた記憶なんてなかった。よくわからず姉さんを見つめていると、姉さんの目元が緩み


 「貴方達が生まれ、私の目の前にいる。それだけで幸せよ」


そう言い姉さんが立ち上がり僕達の頬にキスをし


 「少しゆっくりしなさいな。夕食になったら呼びに来るから、探検してても良いわよ」


 「待って」


ビバーナムが姉さんを止める


 「助けてもらった時、山羊の角じゃない、ってどういう意味?」


 「山羊の頭をした悪魔、名をバフォメットというのが居てね・・。まぁ、私はそこまで宗教沙汰に興味はないから・・」


そう残し部屋を後にした。それを知って何になるのか、と言いたかったがビバーナムにしては発言をした方だったからやめておいた。


姉さんに抱きしめられた時の匂いはまだ鼻に残っており、未だに部屋の中に充満している。


酷く甘い匂い。どこかで嗅いだ事のある匂いだったが、思い出せなかった。



***


 まさかアニゴザントスと同じ子が居るとは。


自室に戻り外を眺め庭のベンチで小鳥と歌っているアニゴザントスを見る。経緯を聞く限り同じ所であろう・・。という事は成功しない限り、この世にはまだ似たような子が居るという訳になる。


左目を隠す髪の長いビバーナム。右目を隠す髪の長いティヌス。金髪で翡翠の眼が鮮やかに光る。経緯が経緯だからか、あんなに脚を開くような子には逆に開くことに躊躇いを持たせるようにしたいものだ。これもまた、開発していかなければならないだろう。


二人で一つ、この時代の双子の扱いからしてその考えに至るのは不思議ではない。きっとどれだけの孤独を分かち合ったのだろう。2人だから乗り越えれた、2人だからできたこと。


 「1人だとどうなるのだろうね・・」


ひとまずは活動メンバーに情報を伝えなければ。アニゴザントスがこちらに気が付く事なくそのまま歌い続けている。



    =続く

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