楽園#0
『はじまり』
“森の奥には何かがある”そう誰かが呟き、草を踏みしめると共にアニスの花が揺れる。
そこには確かに何かがあるはずなのに何もない。
まるで、目を欺かれている様に。
森の奥に佇む1人の女性の目の前に、今までなかったはずの門が現れる。いや、正確には門は元々あったのかもしれない。
「ただいま」
閉じていた門が開き、彼女は静かに一本道を歩き始めた。
少し歩くとアーチ状の草木の道に入り、草木の間の微かな光が差し込み彼女の紅いフードに模様を写す。宝石のように光る道を歩くと大きな家が現れる。階段を上がり、扉に手をかけると静かに扉が開いた。
「おかえり“姉さん”荷物持つよ」
「ただいま。ありがとう、助かるわ」
扉を開け、声をかけてきたのは胡桃色をした眼の青年だった。
ここには彼を合わせて何人かの少年たちが住んでいる。彼らは全員悲惨な境遇を辿ってきた者達である。そしてまた彼女は“姉さん”と呼ばれているが、本当の姉ではない。
自由や愛を与えてこられなかった者へ、彼女はそれらを与える。それが彼女の役割であり、彼女自身である。この場所を彼女や彼らは「楽園」と呼んだ。
それが偽りの楽園であろうとも、それがいつかの夢であろうとも、彼女らにとっては楽園である。
世間から遮断されたように佇む大きな館の花たち
ほんの小さな歯車を見つけるのは誰か
狂っているのは誰か
それを知るのは青い薔薇だけ
はたまた、白紙のキャンパスに絵の具を垂らし、その絵の具が広がるのを見届ける者か
最後まで絵本が完成するまで見届ける者か
様々な者たちの色がぶつかり合い、絡み合う。
誰も結末を知らず、誰も結末を望まない。
永遠に続く絵の中で“自由”と“愛”を食らうだけ。
重く鐘が鳴り響く時、アニスの花が全てを欺くかの如く揺れる。
これは誰かの物語。
趣味で作品を残したいな、と思い立ったため文章能力は皆無に等しいです。
閲覧ありがとうございました。