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【ジュール・ヴェルヌ実証業】51
海底二万哩。八十日間世界一周。
かのロマンにあふれたサイエンスフィクション、それを実証していくのが、ジュール・ヴェルヌ実証業。
ジュール・ヴェルヌが描いた世界はそこにあったのか?
物語を携え、果てなき旅に出る。
現在気球に乗っているらしい。
【優曇華の花専門学者】52
三千年に一度咲く、稀なる花は、優曇華の花。
果てしなく気の長い観察・研究を続けるのが、優曇華の花専門学者である。
花が咲くのを待つために、まず不老長寿の研究をせねばならなかったという。
「不老長寿の薬の作り方?そんな昔のこと、忘れました!」
優曇華の花以外、眼中外。
【神様代行】53
昨今お参りにくる人が少なくなったので、直接罰を与えたり、ほめてやったりする機会が減った。
そんな神様方が神様代行を創った。
神様代行は、拠点を持たず歩き回り、直接悪を成敗し、善に報いることができる。
雑多な神様類が少しずつ何かを持ち寄って創ったので、顔は稲荷っぽく、錫杖を持ってて、赤いよだれかけみたいな着物着て、パンを手にしている。
【イソギンチャク派】54
イソギンチャク派はたった一人の派閥である。
政党かもしれない。
画風、書風かもしれない。
目玉焼きに何をかけるか、アイドルの誰が好きか。
すべてに「私はイソギンチャク派ですね!」と派閥表明をするのが、イソギンチャク派である。
誰の何に役に立つのかは不明。
【番傘職人】55
細い竹で骨を作り、油紙を丁寧に貼っていく。
番傘職人の仕事は昔と変わらない。
寡黙にして技巧は随一、町の片隅で行われる静謐な手工業である。
一見、伝統工芸を守っている職人にしか見えないが、古びた末に『傘お化け』になる傘を作れるのは、彼だけだという。
【夕焼け演出家】56
夕焼け演出家は赤色の光の粒子を調整し、日没の色合いを創り出す。
鮮やかな茜色、熟れた果物のような橙色、雲に遮られたとき飽和する金色。
これらは夕焼け演出家による、ただ一度だけの偶然なる色合い。
四季ごとの空気と混ぜて、太陽のクライマックスを仕上げる。
【琴線奏者】57
琴線奏者は好物を気付かせるきっかけを作るのが仕事。
詩や物語、歌や絵、その他もろもろ。
見た人聞いた人読んだ人のそばで、彼女が琴をポロンと鳴らせば、心の奥にある琴が共振して鳴り始める。
その響きが伝わる波によって、愛情が呼び覚まされる過程は異なる。
【電子網潜水家】58
電子網潜水家は、電子信号の作り出す仮想空間を自在に行き来する。
パソコンやタブレット、携帯電話、スマートフォン。
ファックス、電話、古くは電算機の暗号の中に潜り込んだ。
情報網を制する優越は如何にと思いきや、本人は電子の世界に潜水することが楽しくて仕方ないらしい。
【妖怪道案内】59
妖怪駆除係がいれば、駆除回避を支援する妖怪道案内もいる。
彼は赤青黄の信号を手に、四つ辻に佇む。
青い光は「移動可」、赤い光は「妖怪駆除係が近づいている」。黄色い光は「四つ辻の異界の扉が閉まります」。
信号機は人魂で出来ているという。
【雀のお宿不動産】60
雀が大家族で群れているのは常なること。
問題はお宿。住みよい大木を見つけるのは困難である。
そんな雀にお宿を斡旋するのが雀のお宿不動産。
あのすずかけの木なら全員入居できますとか、あの楠は人間が近寄りませんとか。
雀大家族に有益な情報満載のお宿を提供する。