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【夢の旅人】21
夢から夢へ渡り、自分の夢から他人の夢へも繋げることができる夢の旅人。
夢の世界に自らを装い、欺き、夢人生を生き、住まいまで持つ者もいる。
あなたの夢に現れる見覚えのない彼、彼女は、そんな夢の旅人かも知れない。
【写真写りの名人】22
美しく写真に写ることができる、というわけではない。
いや、もしかしたらそれもできる、が、主として誰かが写真を撮るときに、その演出の一部として登場するのが、上手い。
目立たず、存在を殺さず。
ごく自然に、あらゆる写真に写る。
それが写真写りの名人の、名人芸である。
【カーテン裏捜査官】23
かくれんぼでカーテン裏に隠れ、出口を見失った子供、あるいは大人を、捜索するのがカーテン裏捜査官である。
カーテンの襞と巻き付く布は目の錯覚を起こし、方向感覚を狂わし、出口を見失わせてしまう。
カーテン裏捜査官はいわばカーテン裏のエキスパート。
錯覚も方向感覚も、自分のものにして、迷子を必ず連れ戻す。
【劇場の裏方】24
劇場に住み着いているのは、怪人ではなく裏方。
劇場の装置を改造したり、新しく取り付けたりする。
事務所に取り扱い説明書をそっと置いて、また次の劇場へ、と渡り歩く。
業者の点検に乗じるので、彼の仕業と思わず劇場は装置を利用している。
さりげなさが主義だという。
【動物ネットワーク社】25
動物のドキュメンタリー番組、映画などには、珍しい動物やその習性が映るが、動物ネットワーク社がマスコミ出演の契約を事前に取り交わしている場合がある。
彼らは広い人脈ならぬ動物脈を持ち、あらゆる動物と交渉し、難しい撮影の依頼を可能にする。
その実、社員が人間に化けた狸であるという噂である。
【臭いの元総合請負人】26
例えば腐った食べ物の臭いや、腐乱死体の臭いなど。
あらゆる臭いにおいを作るのが臭いの元総合請負人である。
はた迷惑な職に思えるが。
「大事なことなんですけどね。
臭いで食べられないものや、危険なものを判断できるんですよ」
少し悲しそうに、語る。
【化石復活作家】27
シーラカンスは絶滅したといわれていた。
チューブワームの化石も発掘される。
そんな化石から生き物を復活させるのが、化石復活作家である。
シダ植物から始祖鳥、樹液に絡まれた蟻などに息を吹き込む。
シーラカンスも彼女の手によるもの。
文字通り『生きた化石』なのである。
ただし「恐竜?怖いから復活させるの嫌」かなり復活させる生物に好き嫌いあるらしい。
【七夕曇天職人】28
七夕曇天職人は、七夕の晴天を五月蝿く見張っている。
少しでも晴れようものなら、雲発生装置で雨雲を浮かべ、我々の目から星空を隠す。
「一年に一回しか会えない夫婦を、何でゆっくりさせてやらないんですかね?!」
本当は涙もろい性格の人物。
【数字取締役】29
サイコロの目、ルーレットの数字。
大勝、大負、あと1多ければ・・・という数の目、全ての数字の糸を引くのが数字取締役である。
偶然の数字はどんなものでも彼の決定による。
多くのギャンブラーを泣かせ、破滅させてきたのはこの人。
なお、本人に数字の目が人生を左右する自覚はない。
【マネキンの世話焼き】30
女もいる。男もいる。
ならばめあわせるのが筋というもの。
マネキンの世話焼きの主張はざっとそんなところである。
彼女は見合いよろしくマネキン同士を会わせて、結婚にまで導く。
「マネキンには愛がないと、誰が決めたのですか?」
と世話焼きはおかんむり。
*21 夢の旅人→
「彼女は夢の旅人」(春子と不思議な物語シリーズ)
http://ameblo.jp/midorimushi-show-bow/entry-11501911789.html/みどりむし書房のブログ
「幻影残香」(春子と不思議な物語シリーズ)
http://ameblo.jp/midorimushi-show-bow/entry-11204321562.html/みどりむし書房のブログ
*25動物ネットワーク社
「花束と記憶をつれて」(春子と不思議な物語シリーズ)
http://ncode.syosetu.com/n3339bd/27//小説家になろう投稿『春子と不思議な物語シリーズ』