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【声紋撮影者】101
人の声は各々異なり、声が空気を伝う音波の紋様も百人百様。
声紋は目に見えないが、声紋撮影者が声紋専用のカメラを用いると、声が織り成す紋様を写すことができるという。
人によってどのような紋様が出るか、同じ言葉が作る紋様の特徴など、様々な声の研究材料を写す。
【目玉の色採取者】102
眼球からこっそり微量の色素を頂戴し、小瓶に詰めてグラデーション順に並べ、コレクションするのは目玉の色採取者。
色は小瓶の中に目の形になって浮かび、色合いをも再現して保管する。
「主にドール制作者に提供しています。
目によって命が吹き込まれますからね」
生々しさにかけては右に出るものはいない。
【折り鶴放置魔】103
どこを旅しても必ず折り鶴を作って放置していく折り鶴放置魔。
ストローの包装紙や箸袋、飴やキャラメルの包み紙。
紙がなければ草を用い、草がなければ何処から召喚するのか折り紙で折り鶴を作る。
「捨てるだけの紙が、折り鶴になっているだけで、なんか捨てられない気がしてくるでしょ。
その心が大事なんです」
【呪いの宝飾品管理人】104
さるルビーの指輪は、持ち主を次々に不幸にするという。
ネックレスだったり、イヤリングだったりする、そんな呪いの宝飾品を、呪いの宝飾品管理人は保管する。
秘密の洞窟には宝飾品がざっくざく。
「時に盗賊が持ち出そうとしますが、まあ皆呪いの何かですからね」
意外と管理が楽。
【怪異反故の名人】105
幽霊の恐ろしげな冷気や物音などを、「なんだただの風か」などのどうってことない物事にすり替えるのは怪異反故の名人。
物音に怯える人の背後に猫を差し向け、ドライアイスを道端に放置しておき、恐怖の根拠を無くす。
「裏を返せば、結構本物が多いわけですけど」
怪談職人と仲が悪い。
【悪夢拓本師】106
悪夢は私が眠りの海から釣り上げますから、安心してお眠りなさい。
怖い夢と、現実に起った最悪の出来事、両方とも悪夢です。
私はその拓本を作る職人です。
もしその拓本を見たい、客観的に悪夢と向かい合いたいときは、私を探して下さいね。
きっと見せてあげますから・・・
以上が、悪夢拓本師のメッセージであった。
【苗売り】107
時空を横切って、道際を駆けて、天秤棒からぶら下げた棚に植物の苗を取り揃えている。
「なえ~なえ~」と呼びかける声は寂を帯びたる、商人は苗売りである。
明治の文明の影に滅びたと考えられていたが、時を超えて販路を広げた。
時空の旅で仕入れた植物の苗を売っている。
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