表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/15

71~80

【文字仙人】71


誰が何と言おうとも、文字仙人は山に住む。

里に降りて世界一周、世界各国の文字を採取し、収集したらまた山に蟄居。

「死せる言語があれば、文字も然り。

誰かが話せるうちに、読めるうちに、記録しておかねば消滅する。

日本でも既に失われた文字はあるのだよ、知らないかい?」

俗世から離れられぬ、しかれども彼は文字仙人。



【金魚の国創設者】72


紅の打掛をゆらめかせ、黒い墨の如き鰭で水を溶く。

金魚の国の城郭は優雅絢爛、幾尾もの金魚が遊ぶ。

巨大な水槽を用いた、金魚の国創設者曰く、夏の夜の道楽を、楽園に導く役割を果すという。

「弄ばれた短い命、花魁のような美しい罪。

私はそれを集め、救い、最後まで見届けるのだ」

愉悦と哀愁の国哉。



【猫道開拓者】73


住宅街の屋根の上。塀の上。細い通路に、垣根の間。

猫ぐらいしか通れなさそうな道を、猫道開拓者は潜り抜ける。

猫ぐらいしか通れなさそうな道を、猫より先に見つけて、得意満面で猫に案内する。

悔しそうな顔が何より好きですにゃん。

猫撫で声で言う表情は猫そのもの。



【酩酊遊人】74


赤提灯へ、宴会へ、酩酊遊人は渡り歩く。

いつもふらふら、幸福に夢うつつ。

笛を吹けば歌もうたい、一句詠んで笑わせる。

酒の席に溶け込んで、とことん楽します。

一銭も払わず誰も問わず、もう一度酒席に呼ぼうにもなかなか捕まらない。

酔いに任せて風流吹かせ、旅行くは酩酊遊人。



【透明人間捜査官】75


透明人間になったらどうする?

途方に暮れたら、透明人間捜査官を訪ねればいい。

きっと助けてくれる。

透明なのを利用して、好き勝手やらかしたら?

透明人間捜査官が必ず見つけ出し、天誅を下すだろう。

「存在が消えてるんです。こちらが如何様にしても文句は言えないはずですよ?」

笑顔が怖い。



【時のジュース作り】76


「『時間を潰す』というのですから、時とはすなわち、果物だったのです」

と、時のジュース作りは熱弁を振るう。

彼は慣用句からヒントを得て、『時』という果実を手に入れ、潰してジュースを作るようになった。

人や場合により、甘かったり酸っぱかったりするのが、時のジュースの妙味だという。



【睡魔討伐隊隊長】77


あなたが眠くて舟を漕ぎ出すとき、睡魔討伐隊は出航する。

元凶たる睡魔は自然の摂理なれども、睡眠とはすなわち海のようなもの。

舟を漕いで進むうちは、睡魔へ果敢なる抵抗をしうる。

討伐隊隊長はそんな睡魔への闘争心で満々。

眠たいあなたの心強い味方になってくれる。



【風乗り】78


波乗りとくれば風乗りだっている。

何故なら空気には実体があり、特に風の強い日は空気が塊になって波のように進み、渦巻いているからだ。

それに乗らない手はない。

海のように動くその推進力を利用して、風乗りは特殊な風乗りボードを用い、吹き荒ぶ風に乗って、木の葉や塵と共にどこまでもゆく。



【絶叫演出家】79


主な出先は遊園地。

特にジェットコースター、お化け屋敷など。

絶叫演出家は、絶叫する。

ジェットコースターの落下と回転に合わせて「キャーッ」。

お化け屋敷のお化け出現に際し「キャーッ」。

別に遊園地の回し者でも、サクラでもないが、ここぞというときに絶叫演出をする。



【水の巡査】80


苔むす岩から染み出す最初の一滴。

寄り集まって流れる細いうねり。

徐々に広がり勢いを増す河川。

様々なものを呑み込む深さを有する河口から全容を秘す大海へ。

水の巡査は水を巡る。

水道、雨雲まで網羅し、水の詰りや氾濫などを解決する。

が、彼さえ水によって連なる一大帝国を、未だ把握できないという。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ