東方翠漆紫 9
彼が未だ幻想卿を知らずにさ迷っていた頃、私は力を失い、もがくことすら出来ない状態だった。
私は動力である水が欲しくて凌雅に頼んだ。
「私は氷の妖精。水が有ればくれないかしら。」
「はい。」
そう差し出したのは純水だった。
「私はエミ・エノビッチ。この世界は能力が大事な頃合いで貴方に能力を授けることが出来る私はどうかしら?心に住ませて貰えるなら水の力を能えるわ。」
そう言って氷の薔薇を作った。
「是非とも。」
彼はそう言った。
「その代わりその力を振るうときは女の姿に成るのよ。その時だけと踏むなら良いけど。」
「というと性格もか?」
「ええ。」
「許可するよ。僕は小宮山凌雅…外来人か何か呼ばれるんじゃないの?」
その時、私には見えてしまった。後ろに獣がいた。
「させるか!」
私は水蒸気を操って博麗神社の鳥居まで送った。その道中に私は彼の心へ移り住み、二人して意識を失った。
「ご主人様の心の中に住むからやがては彼に姿を返す。」
エミがそう呟く。
「あんたも孤児なのね。特異な能力故に動力である水すら貰えなかったなんて。」
「チルノみたいに自製は出来ませんから。この辺りは水が多くて力を出せます。」
ホッとしたようにエミは言う。霊夢と早苗は唖然だった。
「もし、貴女が力を全て出しきると?」
早苗の止まった質問にはこう答えた。
「無論、ほぼ全域を氷に閉ざす事も出来る。」
霊夢は戦慄した。
「大丈夫よ。今の私、これからの私にはそんな悪意は無い。ご主人様の心の中が心地よくってよ。この世界の秩序を乱す事はしないわよ。」
彼女の真剣な瞳に確信した。
「「それしてもね」」
早苗と霊夢が声を揃える。
「「どうしたらそんな胸を持てるの?」」
「え?」
すっとんきょうな声を出したエミに対して興味津々な二人はゆっくり近付いてくる。
「永琳と」「慧音とで」
「な、何?」
「「巨乳三大女王と呼びましょう!」」
その時、早苗には頭突きが、霊夢には薬を飲まされて、二人とも崩れ落ちた。
「「「女王様を怒らせるからよ!!」」」
もう離れてくれなさそうなのでエミと永琳、慧音の三人はその役柄をかって出た。
その後、永琳と慧音にも説明しエミの存在は広まっていった。
凌雅の姿に変わったらそれはそれで女性の獲物になるし、エミの姿だと今度は胸の事で煽られるし……。
俺は何故かはめられた気分になった。
「エミ。お前、かなり暴れまわったか?」
(いいえ、そんなに力を振る舞った筈はないと。)
「おかしいな。」
(貴方のカッコいい姿に女性は魅せられ、私の誇りにはしたくない巨乳で変な注目を浴びるという事で……ご主人様?)
「なるほど。」
何を納得したのかは分かりませんが私の姿を表に出す指示を出した。
「ご主人様?」
(宴会だから神社にゴー。)
「惚れさせるよりかは胸で躍らせるってか。」
私の胸がそんなに強いものとは知らなかったが、もはや誇りに思わなければやってられないと判断した。
(だってあそこ二人と立ち並ぶのはネー。)
「何ですって?ご主人様?」
(ボッシュート。)
退散されてしまった。
「ついにあのエミが来たよ♪」
にとりの笑顔に誘われて私はその広間に足を踏み入れた。私を見た大抵の初見者は驚いていたが神奈子と諏訪子は何とも言わなかった。
「霊夢。」
振り返る霊夢は私を見上げて居た。あれ?私の背、高いのかな?
「170有るでしょ……うう。」
あれ?そんなに高かったっけ?私の背は。人間の姿はやはり大変だな。
「あの、女王様?」
そう言って肩を叩いたのは早苗だった。