東方翠漆紫 18
「霊夢!!霊夢!!」
誰よりも声をかけたのは紫だった。
「目を覚まして!!霊夢!!」
何日も泣き叫んで声が枯れている。
「っ、うぅ…ゆ、紫?」
霊夢はその瞳を見せた。
「霊夢……はぁはぁ………」
「!?」
紫は力尽きるように倒れた。それに永琳が慌てて処置を施す。
「魔理沙は?早苗は?凌雅は?」
霊夢は思ったことをすぐに口にした。
「………」
「ねえ、三人は?」
「三人は…」
痛みに耐えて僅かにしか声が出ない紫が答える。
「消息……不明。」
「!?」
「私の…スキマが壊れた…」
「!?」
「幽々子の能力も無効で」
「妹紅のも封印された。」
代わるように慧音が付け足す。
要は紫のスキマが崩壊し、幽々子の死を操ることも、妹紅の不老不死も無くなった。
「そして…」
「な、何?」
紫が苦しみに潰れながら答える。
「あなたの力も侵食…されてることを。」
「!!??」
その後は永琳が薬を飲ませて傷を回復させ、痛みを和らげたみたいだ。
「能力を元に戻す薬は無いのよね…」
「はぁはぁはぁ…文です」
文が焦ったように言う。急いで飛んできたのか息が荒い。
「早苗さんが二神を追い出した、みたいです。」
全員が驚いた。まるで、いや、本当の家族と言える守矢の一行が一日にして崩壊したのだ。
「怖い話…」
「私は、紅魔館に伝えますから」
そう言うと文は飛んでいった。疲れた身体に鞭を打って励むその姿が皆を動かす。
「紫…」
「霊夢」
「アリス」
「霊夢」
「咲夜」
「霊夢」
「慧音」
「霊夢」
「妹紅」
「霊夢」
「永琳」
「霊夢」
「鈴仙」
「霊夢」
「エミ」
「霊夢」
今、ここにいる全員を確認する。
「行くわよ!!」
九人の影が空に写り始めた。
「分かってる。」
早苗や凌雅に出会すのが先か、霊夢や神奈子に会うかが先か、それで生と死が分けられるなんて解っていた。
「最後の一秒でも笑ってやるよ。それくらい死なない覚悟はあるぜ。」
「そう。」
勇儀と萃香は溜め息を吐いた。
「な、なんだ……ぜ?」
「呆れたよ。」
勇儀にそう言われシュンと弱った魔理沙。
「けど、ほんとヤバイぜ。枯渇してるうえに体力もほぼゼロ。」
「ええ。見て解るわ。」
その時、魔理沙は視野が眩んだ。
「う、ちっ!」
萃香が慌てて支える。
「上空から落ちてんならこれは軽症と捉えるべきなんだよな?」
しかし、魔理沙には余裕などは無かった。
「だけど」
そう答えた私は言葉には出来ない一文があった。
早苗は?