東方翠漆紫 1
ではではお楽しみください!
あれからどれほどの月日が経ったんだろう。
早苗が引っ越してから早くてもう三年。出会いは確か俺の母の仕事による引越で物凄くアウェイを感じながら初めて通った高校で、一番最初に声をかけてくれたのが東風谷早苗だった。
彼女が神社の子だとはつい最近知ったものだが、クラスでは人気者でいつも俺に話を持ち込むから俺もみるみる話題になっていった。
しかし、その年の冬に早苗は引越で姿を見れなくなった。クラス中が少し嘆いていた。
あまりのショックにその日の授業を終えると俺はよく遊びに行ってた守矢神社へ走っていった。
しかし、その神社は無くなっていた。
何もかもが忽然と消えていたのだ。ショックは重ねられた。
今はもう大学生。一人暮らしを始め、それなりに毎日が楽しかった。あと、渾名が変なことに「真っ黒くん」と言われ、はたまた人気者扱いされていた。何故か女子の食い付きが凄い。
それでも未だに早苗のことが忘れられない。たった半年程度が大事な時間に思える。でも、懐かしいというかなんというか。
「なぁ、凌雅?聞いてる?」
あれ?声かけられていたとは。
「ナーニ考えてんだ?」
「何でもないよ。」
長い坂を上ってやっと神社が見えた。思わず駆けて向かった。
「早苗ちゃん!来たよー!」
参拝は勿論。早苗は僕の声には過敏な所もある。だから、直ぐに来るはず。
しかし、出てきたのは藍色の髪の縄の輪っかを背に付けてある方だった。しかも威圧感が凄かった。あまりにも吃驚したところが可愛かったのかその人は口元を緩めた。
「名前は?」
「小宮山凌雅です。」
そう言うとその人は座ってこちらに手招きをした。
「私は八坂神奈子。よろしくね。」
招かれて神奈子の隣に腰を下ろした。
「早苗は?」
「少し風邪を拗らせたみたいでね。諏訪子が看ているよ。」
なんだ、単純に風邪なのか。神奈子の話では風邪。遊びに来たけど仕方がない。
「じゃあ、ありがとうございました。」
「すまないね。またおいでよ。」
手を振ると神奈子は振り返してくれた。
休み時間に差し掛かり、友達と会話を楽しんでいた。
「お前は医学部なんだろ?」
「そうだけど?」
「大変じゃないのか?」
その時、近くのガラスが割れるような音がした。そして少しの悲鳴。慌ててその場を離れようとしたが銃を持った男に遭遇してしまった。
「よう、坊主。鬼ごっこか?」
「違うよ。」
そう言いながらちょっとずつ下がる。バレなきゃ逃げれるかも。
「おっと?何を後退してんだ?」
「気のせいじゃないか?」
すこし焦るも冷静に…。
「けどな、もっと重要な事に気付けよ?」
後ろからもう一人の犯人に銃を突き付けられた。
「何がなんだか知らないけど強盗とか、そんなもんなら斬るぜ?」
早苗の家に入ってきた強盗犯を偶然置いてあった刀ですこし声を強く上げたらそいつは倒れた。しかし、手持ちは無しだった。
「なんだお前。何もなしか?」
ギロリと睨み付けて解放すると慌てて強盗犯は逃げていった。
「あの人、やっつけたの?」
「盗んでなかったから帰した。」
「良かった…」
なんでこんなもの思い返してるんだろ……。