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年下の彼氏  作者: 桷爛
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第5話【双子の陰謀】

あの後、母さんから電話があった。

急にイギリスに用事が出来たらしい。

忙しい両親の、いつもの電話の内容だった。

今日家に帰ったら、もう母さんも父さんもいないということになる。

でも、姉やも兄やもいるから全然不都合はない。

姉やが家事をこなし、兄やが子守りをしてくれるだろう。

あたしは出された料理を食べ、部屋で勉強するだけだ。

竹下が帰った後も、しばらくあたしは弓を引いた。

朝のもやもやした気持ちは、もう既に消えていた。

時計を見ると、針は4時を指している。

そろそろ帰ろうかな。

あたしは片づけを始めることにした。

巻きわらの周りを掃除し、的を片づけて土をならす。

これだけの作業だが、一人ですると時間がかかる。

部室に戻って制服に腕を通す頃には、一時間が経っていた。

暖かくなったとはいえ、まだ5月初め。

5時を過ぎた頃には、日は既に落ちはじめていた。

自転車を漕ぐと風は長いあたしの髪を優しく揺らした。



******************



家に着いて、少し肩の力を抜くとあたしは玄関の扉を開けた。

「ただいまぁ」

…………。沈黙。

あれ?

おかしい。

聞こえない。

姉やのあの優しい、兄やのあの暖かい、『おかえり』が聞こえない。

嫌な予感がして、靴を揃えることもせず、灯りの漏れるリビングのドアへと駆け寄る。

ドアのぶを回して、中を覗いてみると、

……やっぱり。

「……あ」

小さくもれる聞きなれない高い声。子供の声。

ソファに身を委ねていた体が、あたしを見るなり強張った。

「…兄やと姉やは?」

鞄を床に置いて灯呂の顔を見ないようにして聞く。

「よく知らない…。ただ……今日は戻らないって言った」

「はあ!?」

見ないって決めたくせに、灯呂の方をすごい勢いで向いたあたしは、細い腕を掴んだ。

「何よ、それ!本当?」

顔を近づけると、灯呂の顔が迷惑そうに歪む。

な、何よ。こっちはいきなりの事態でパニくってんのよ!!

何でそんな顔されなきゃならないのよ!

「なんで俺があんたに嘘を言わなきゃならないんだよ」

「……そ、そうよね」

あまりの生意気さに、笑みがひきつる。

腕を放すと、灯呂はその腕をすばやく退いた。

何よ…。そんなに嫌がらなくたって、……いいじゃない。

灯呂は長い睫毛を少し伏せると小さな声で言った。

「別に、俺に構わなくてもいいから…。面倒とか見てくれなくったって、俺は一人で大丈夫だから……」

「ば…っ」

何かを思うより先に言葉が溢れた。

「馬っ鹿じゃないの!?何言ってるのよ!ガキのくせに、一人で大丈夫なわけないでしょ?…ご飯とか、作れないでしょうが!」

「一日ぐらい食べなくたって死なないし」

「アンタにご飯食べさせなかったって知られたら、あたしが姉やに殺されるのよ!」

「あんたが死ぬとか、それこそ俺には関係ないし」

「…っ!!もういいっ!!」

あたしは、拳を握りしめるとそれをそのまま怒りとともに壁にぶつけた。

豪快な音の後、壁から何か小さな破片とかが落ちてくる。

灯呂は目を丸くしてあたしを見る。

あたしは、嫌がられると知りながらそんなコイツの腕を再び掴むと、噛み付くように言った。

「とにかく、ついてきなさいっ」

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