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迷宮の魔王さま  作者: 井戸端 康成
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第二十五話 新たな力

 静けさ漂う大空間。暗く、闇に閉ざされたその奥で今まさにクラスアップの儀式が始まろうとしていた。


「それではクラスアップの儀式を始めるわ。まずはそこの紅い髪の娘から」


「はい!」


 シェリカは混沌神の前まで強張った足取りで歩いていった。すると混沌神は彼女の額に手を当てて何事かぶつぶつとつぶやき出す。


「剣術がメインみたいね……。でも魔力もそれなりにあるし、使わないのはもったいないわ……」


 混沌神はしばらく考え込んだ。その様子をシェリカは緊張しながら見守る。そしてその額から汗が落ちた時、ようやく混沌神はシェリカの職業を決めた。


「……決めた、あなたの職業は『魔法戦士』よ! それで構わないかしら?」


「もちろんです!」


「よし、なら早速クラスアップしましょう……」


 混沌神はシェリカの肩に手を乗せると、目を閉じて呪文を唱え始めた。七色の光がシェリカを中心に渦巻き、その身体に吸い込まれていく。その時のシェリカは心地好いのか、風呂にでも入っているような顔をしていた。


「……これでおしまいっと。これであなたは魔法戦士よ。新たに魔法剣という技が使えるようになってるから、使ってみなさい」


「ありがとうございました!」


 シェリカはぺこっと頭を下げると、後ろに戻っていった。それを混沌神は微笑みながら見送る。そしてまた次の者を呼んだ。


「次はそこの着物の娘。こっちに来なさい」


「次は私か。はい、いま参ります」


 サクラが前に出て行くと、シェリカの時と同じように儀式が行われた。その結果、彼女は『侍』という職業に就く。これは刀を使って戦うと能力が上がるという職業であった。


★★★★★★★★


 その後も特に何事もなく儀式は進行していった。シアもエルマも無事にそれぞれ『僧侶』と『銃士』という職業につく。


 そしていよいよ最後、魔王の順番がまわってきた。彼はシェリカたちの暖かい視線に見送られながら混沌神のもとへと歩み寄る。すると混沌神は待ってましたと言わんばかりの顔をした。


「魔王、あなたの職はすでに決まっているわ」


「ほう……。いったい何なのだ?」


「混沌魔法士よ」


「混沌魔法士? 聞いたことがないな」


 魔王はわずかに眉を寄せた。長く生きてきた彼にもそんな職業、聞いたことがなかったのだ。すると混沌神は両手から色とりどりの魔力の球を出して言う。


「混沌魔法士というのは、複数の属性の魔法を重ねて使える魔法使いのことよ。まあちょっと見てて」


 混沌神はそういうと手の平を前に突き出した。するとさきほど出した魔力球が集まり重なっていく。やがてそれは虹色にきらめく光の塊となった。


「この世を支えし七つのエレメントよ、我が手に集まり力を示せ! アブソリュート・ブレイク!!」


 光の球が勢いよく放たれた。迷宮の闇を貫き、一条の白線を引く。そして、光の塊は岩壁に突き刺さり目を覆わんばかりの爆発を巻き起こした。


「すっ、すごい……」


「迷宮に穴が……」


「強烈すぎやで」


 爆発の後に残されていたのは、一直線に続く長い長いトンネルであった。一体どこまで続いているのかその果てを見ることができない。シェリカたちはそれを覗き込んで、にわかに顔を青くした。


 その一方、混沌神はしれっとした顔をしていた。さらに魔王もにやりと口もとを緩める。彼の表情はどこか楽しそうですらあった。


「面白い能力だ」


「でしょう? じゃあ早速クラスアップするわね」


 混沌神はさきほどと同じように魔王の肩に手を置き、呪文を唱えた。するとどこからか紫の靄が沸き起こり魔王を包む。だがそれはどこか暖かで心地好いものであった。


「これで終了。じゃあね。……ああいけない、忘れるとこだったわ」


 混沌神はふと気がついたように袖の隙間を漁った。するとどこに入っていたのだろう、長い銀色の槍が出てくる。その槍はところどころ赤錆が浮いていて、お世辞にも綺麗なものではなかった。だがそれを見た瞬間、魔王の目の色が変わる。


「……ずいぶんと物騒な物を持っているのだな」


「まあね。で、これをあなたに預かって欲しいのよ」


「これを余にだと?」


 魔王は鋭い目を混沌神に向けた。混沌神はいつもの飄々とした態度は崩さない。だがしかし、その目は澄み切っていて曇るところがなかった。


「何か仔細があるようだが良いだろう。この槍、しばらく預からせてもらう」


「ありがと。それじゃあ今度こそさよなら」


 混沌神は手を微笑みながら手を振った。その姿がだんだんと薄らいでいき、やがて神聖な気配だけを残して消える。魔王はそれを、割合真剣な顔で見送った。


「さて……帰るか」


「そうね、帰りしょう」


 魔王は槍を手品のようにマントの中へしまうと、ゆっくり歩き始めた。それにシェリカたちも続いていく。


 こうして魔王たちは迷宮から帰還し、家へと帰ったのであった。



 次回からいよいよ武道大会編に突入するのですが……。実はまだ決勝に出場する選手が決まっておりません(汗)


一応、候補は……


残像を使いこなす俊足の剣士


扇から炎、雷、暴風を出して戦う女武道家


超音波で敵に攻撃する音楽家


仮面を取り替えると性格の変わる仮面の魔法使い


……の四名と魔王、アイリスまでは決まっています。ですが予定の人数まであと二名足りません(涙)。もし読者の皆さんに良いアイデアがありましたらお願いします。



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