第二十一話 緊迫の一分間
第二十一話 緊迫の一分間
迷宮の奥深くにて、サクラたち四人は額をつきあわせ話し合いをしていた。それを魔王は穏やかな表情をして見守っている。だがその瞳は絶えず、岩龍の姿を視界の端に捉えていた。
「一分、それだけ持たせれば良いんやな?」
エルマが声をひそめ、念を押すように言った。それにサクラは深く頷いて応える。
「そうだ。攻撃してくる岩龍を二人で何とか一分、持たせてくれ」
サクラの言葉は重く、抑揚がなかった。シェリカとエルマは眉間にしわを寄せ、緊張を隠せない。だがここで、シアがサクラに疑問を投げかけた。
「一分の間、隠れているのはダメなの?」
現在、岩龍はサクラたちを倒したと思って眠りについている。一分たっても起きるとは思えない。しかしサクラは首を横に振った。
「ダメだ。私は一分の間に技を放つ準備をするのだが、その時に膨大な気が発生する。それに岩龍が気づかないとは思えない」
「なるほど。そういうことなのね」
納得したシアは口を閉じた。そしてシェリカとエルマに視線を送り、そのあと祈るように手を合わせる。
「神よ、三人にご加護を」
シアのらしくない行動に三人は固まった。だが、その心づかいは伝わったのか三人は岩龍を倒すべく行動を開始する。
「では……始めるぞ」
サクラは岩陰から出ていくと、目を固く閉じて精神を集中しはじめた。サクラの身体の輪郭が蜃気楼のように揺らぎ出し、気が満ちていく。
「ぐう……ぐぎゃああ!」
ただならぬ気配に岩龍が目を覚ました。寝ぼけ眼でサクラの姿を確認するや否や咆哮を上げ、地面を踏み鳴らしながら向かっていく。
「行くわよ! 援護よろしく!」
「もちろん、ど~んと任せてや!」
シェリカとエルマが岩陰から飛び出した。エルマはサクラと反対方向に走りながら魔銃を乱射、光が岩龍の顔で炸裂したちまちその注意を引き付ける。
「岩龍はん、こっちやで~!」
「ぐぎゃあおお!」
岩龍は迷宮を揺るがす叫びとともに、エルマに向かって突っ込んでいく。大木のような前足が振り上げられ、爪が冷たく光った。
「ぐごあああ!」
「はん、こっちにもいるのよ!」
いつのまにか岩龍の顔に上っていたシェリカがその巨大な眼に剣を突き立てた。眼に切っ先がめり込み、赤く充血していく。そのあまりの痛みに岩龍はエルマどころではなくなった。
岩龍は身体を丸め、洞窟の中をのたうちまわる。地面が揺れ、天井の岩が降ってきた。その大地震のようなの揺れに立っていることすら難しい。
「うわっ、わわわ!」
間一髪、岩龍の身体から飛び降りたシェリカはエルマの元へと駆け寄った。揺れでまともに歩けないなかを、何とか彼女に近づいていく。
「シェリカはん、大丈夫やったんやね!」
「もちろん、それよりサクラは?」
「見ての通り、大丈夫や」
エルマは顔をサクラの方向に向けた。シェリカもそれに続く。すると、さきほどと変わらないサクラの姿がそこにはあった。この大揺れの中、地面に突き刺さっているかのように直立不動だ。
「ぎしゃああ!」
痛みから回復した岩龍が地を裂く雄叫びを上げた。その眼は怒りに染まり、裂けんばかりに見開かれている。その憎悪の眼差しの先にはシェリカとエルマがいた。
「これはやばいで!サクラはん、まだなんか?」
エルマがすがるような調子で尋ねた。するとサクラは目を閉じたまま、かすれた声でつぶやく。
「まだだ……あと少し……」
「仕方ないわ、あと少し頑張るわよ!」
シェリカがそういうと、岩龍が攻撃を仕掛けてきた。前足が唸り、風を切る。シェリカとエルマはすばやく後ろに飛びのいた。前足が地面にあたり、轟音とともに砕けた岩が飛び散っていく。
「しゃあああ!」
岩龍は信じ難い速さで攻撃を繰り返した。前足、尻尾、顎の牙などあらゆるものが二人を引き裂かんと迫っていった。それらを二人がかわすたびに地面が揺れ動き、砂や岩が舞い上がる。
「は、速くなってるぅぅ!」
シェリカが思わず叫んだ。なんと岩龍の攻撃速度は落ちないばかりか上がっていたのだ。岩龍の身体が風を切る音が、だんだんと洗練され硬質的になっていく。
すばやさには自信のある二人であったが、だんだんとかわすのが厳しくなってきた。余裕でかわせていた前足が、二人の長い髪を掠めていく。
「あかん、そろそろ……」
エルマの身体がいよいよ動かなくなってきた。だが、岩龍の体力に限界はないのか攻撃はなおも続いていく。そしてついに……
「くっ、痛ぁ……」
エルマの足がつった。普段は援護役で精密な動きはしても激しい動きはしない彼女。速い動きに筋肉が限界を超えた故であった。
エルマは痛みに負けず、足を引きずって何とか動こうとはした。しかしこの状況でそんなことは無意味。岩龍の爪が迫り、その柔らかい肉を裂こうとする。
「エルマぁ!」
シェリカが手に持っていた剣を岩龍の顔に投げた。岩龍がほんの一瞬、動きを止める。その時であった。
「ぐあ?」
岩龍の背後で何かの気配が爆発した。岩龍は何事かと攻撃を中断して後ろを振り向く。
するとそこには鬼気迫る表情をしたサクラが立っていた。眼光は鋭く、気も溢れて空気を揺らめかせている。そしてその手には黄金色の炎のような刀が握られていた。
「準備完了、さあ行くぞ! 裁きの星をその身に刻め、北神・星刻斬!」
気迫の篭った叫びとともに、黄金の輝きがいっそう明るさを増した。それは闇に沈む迷宮の洞窟を鮮明に照らし出す。そしてその直後、サクラの身体が空に舞い上がったのだった。
最近なろうに新しいランキングが登場しましたね。作者も少し気になるのですよ。ただ携帯からは見れなくて……。
もしもこの作品が載ってたりしたらテンション上がってシャ○も真っ青な速さで書くんだけどなあ……。




