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迷宮の魔王さま  作者: 井戸端 康成
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第十話 仲間の必要性?

 今回はちょっと急展開かも知れません……。

第十話 仲間の必要性?


 魔王の迷宮初探索から一週間が経った。あれから二人は順調に探索を続け、今日も朝から迷宮に潜っている。


「エイ! ヤアア!」


 薄暗い鍾乳洞のような迷宮第三十二階層。岩だらけで狭いそこで、シェリカと魔王は襲い掛かかってきたモンスターと戦っていた。暗闇に剣の剣先が光り、杖が唸っている。


 二人に襲い掛かっているのはダークゴブリンというモンスター。黒い小さな子供のような姿をしていて、岩陰から飛び出して攻撃してくるモンスターだ。だが小さな身体に反してその腕力は強く、手に持つこん棒での打撃が厄介なモンスターである。


 それをシェリカと魔王はさきほどからずっと相手にしていた。迫るこん棒を巧にかわし、すれ違い様に剣や杖での一撃を放つ。そうして一体一体倒しているのだが、なかなか数が減らない。相当大きな群れに当たってしまったようだ。


「魔王、私はもうちょっと限界よ! 一人でなんとかできる?」


「任せておけ」


 腕が動かなくなってきたシェリカは魔王に後を任せた。後を任された魔王はシェリカの前に立つと、杖を構えて呪文を紡ぎ出す。


「カッター・ストーム」


 暴風と風の刃がダークゴブリンに襲い掛かかった。彼らは一瞬で八つ裂きどころか百裂きぐらいにされて魔力球へと姿を変える。だが、蝙蝠とは違って彼らには多少の知恵があった。いくらかのダークゴブリンがすばやく岩に隠れて刃の嵐をやり過ごす。


「少しは頭が回るか。ならば……」


 魔王の口が今度は違う呪文を紡いだ。辺りの空気がゾワリとして、ダークゴブリンたちはキィキィと奇声を上げる。


「ファイア・フロッド」


 魔王の杖から炎が巻き起こった。炎は迷宮の中を赤々と照らし、熱の大洪水を起こしていく。ダークゴブリンたちはまたもや岩に隠れてやり過ごそうとしたが、圧倒的な熱波の前に岩の盾は役に立たなかった。耳を引っ掻くような悲鳴を上げて彼らはみな焼け死んでいく。


「終わったな」


 魔王は焦げ臭い臭いに顔をしかめながらそうつぶやいた。その言葉に後ろにいたシェリカもホッと一息つく。そして二人は残された大量の魔力球の回収を始めた。


「にしてもずいぶんたくさん居たわね。普通は出ても四匹がいいとこよ」


「他のモンスターにも良く遭遇したからな。何かあるのやも知れん」


 魔力球を拾いながら、シェリカと魔王は眉を歪めた。いつもと比べてその数が多過ぎるのだ。モンスターというのは変化に敏感だ、こういう場合は何かある。嫌な予感を二人は覚えた。二人の背筋がひんやりとする。


 その後二人は、大量に現れるモンスターたちに辟易しながらも、三十四階まで潜った。そして、シェリカが集中力と体力が限界を迎えたので二人は今日の探索を打ち切る。


「騒がしいわね。何かあったのかしら!」


 二人が転移の間に戻ってくると、辺りは騒然としていた。シーカーたちが集まり、人だかりを作っている。シェリカは魔王の手を引っ張って人を掻き分けていった。


「ど、どうしたのよこれ!」


 シェリカが人だかりの中心に行ってみると、そこには数人のシーカーが横たわっていた。彼らはみな一様に血に濡れている。着ている鎧は大きくひしゃげ、息は絶え絶え。顔面は蒼白で今にも息絶えそうだ。


「おい神官! 神官はいないか!」


「わ、私神官です!」


「僕もです!」


 瀕死のシーカーに駆け寄っていた男たちが、神官を呼ぶべく叫びを上げた。それに、何人かの神官が応え、シーカーたちに治療を施していく。暖かい光が彼らの手から発っせられて、シーカーたちの顔色がわずかだが回復し始めた。


「ぐっ……はあはあ……」


 一人のシーカーが意識を取り戻した。彼は何かを言おうと口をぱくぱくとさせる。それに気がついた周囲のシーカーたちは口を閉じ、彼の言葉に耳を傾けた。騒がしかった場がにわかに静まる。


「岩……龍が……目覚め……た……」


 シーカーはそれだけ言うとまた意識を失った。しかし、そのたった一言で周囲は大混乱に陥った。それはシェリカも例外ではなく、顔を青くして身体を硬直させる。


「どうしたのだ? 顔色が悪いぞ」


「あんたは知らないから呑気なのよ……」


 一人だけ呑気な魔王に、シェリカは険しい口調でそう言った。そして大きく深呼吸して、魔王の方に向き直る。


「あのね、たぶんあの人は岩龍が目覚めたって言ったわ」


「ああ、そうであろうな。だが、それがどうしたというのだ」


「岩龍っていうのは五十階層に住んでいる巨大なドラゴンよ。岩みたいに動かないからそう呼ばれてたんだけど……」


 シェリカはそう言うと言葉を詰まらせた。魔王はその様子からだいたいの事情を察する。恐らく、その岩龍という強力なモンスターが暴れ出したのだろう。だからシーカーたちはこんなにも動揺しているし、モンスターたちも様子がおかしかったのだ。


 魔王がそこまで考えを及ぼしているうちにシェリカが回復した。まだ若干違和感があるが、おおよそいつもの様子に戻っている。だが、その顔は歪められたままだった。


「五十階に行く前に私はレベルを上げて鍛えなきゃね。あと、仲間も集める必要がありそう……」


 シェリカはそうしんみりとつぶやいた。すると、魔王はよく考えたあとゆっくりと頷いたのだった。



 やっぱり展開に無理があったかなあ……。でも後悔はしてませんよ。



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