ボケたガールとツッコみボーイ 後編
本日の3話目にして完結になります。
――翌日。学校への道すがら。
「お弁当のおかずトップファイブー!」
「いえー」
「第一位!」
「いきなり一位から?」
「チーズフォンデュ」
「それはさすがにお弁当ではない」
「ここで一旦惜しくもランクインを逃したおかずの紹介です」
「一旦が早すぎる。カウントダウンでトップスリーの前にやるやつね」
「唐揚げ!」
「王道」
「たまご焼き!」
「これ上位じゃないのはおかしい」
「ちなみに私は甘い系のたまご焼き派」
「それは俺もそうだな」
「なるほど了解――ではランキングに戻って第二位!」
「はいお願いします」
「すき焼き」
「溶いた卵にさっとつけて食べておいしいってこれもお弁当ではないね」
「第三位! 三杯酢」
「それ調味料」
「三杯酢大好きなサンバイザーに大人気!」
「マヨラーみたいに言ってるけど、サンバイザーってそういう意味じゃないからね」
「第四位! ソフトクリーム」
「食べる頃には溶けてる」
「第五位! は、コメント欄で!」
「たしかにそういうショート動画あるけど。コメント欄見ても何も書いてないやつ。いやそもそもコメント欄どこにあるの?」
「あるかないか、信じるも信じないもあなた次第」
「うさんくさいね」
「ちなみに入ってて嬉しいお弁当のおかずってある?」
衣丹が俺を覗き込みながら訊く。
「んー。なんだろ? から揚げとかたまご焼きとかウインナーとかハンバーグとか? なんかめっちゃお子ちゃまなお弁当だな」
「ふんふん。好きなおにぎりの具は?」
「ツナマヨ一択」
「なるほどなるほど」
満足そうに頷く衣丹。
「話は変わるけど、昨日のあの後のことを聞いても大丈夫?」
昨日、伊枢くんをぶん殴った後、衣丹のお母さんに連絡をして伊枢くんを引き渡した。
そこまでは立ち会ったが、その先のことは何も知らない。
「あの後は伊枢くん、ずっと錯乱状態だったみたいよ」
「それは仕方ないかもね」
なにせ突然異能が使えなくなったのだ。そりゃあ錯乱もするだろう。
「異能者として登録されてなかったし、異能そのものも使えなくなってたし、私たちも何も何も起きていなかったことにしたし、異能による事件などそもそも無かったということで、伊枢くんをお家に帰したってさ」
つまり、昨日の伊枢くんによる襲撃など無かった。いいね? ということだ。
まあ、俺らが無かったことにしようと動いているので、口止めする相手なんて誰もいないんだけどね。
「じゃあ、また後でー」
教室の目の前まで来たところで衣丹と別れる。
教室内に入って見回す。
伊枢くんはどうやら居ないようだ。
休んだ理由は、異能が使えなくなったショックを受けた本人が、学校なんて行ってられないとなったか、そんな伊枢くんの錯乱した様子を見た周りの人間が止めたか、そのどちらともかといったところだろう。
そう。伊枢くんは異能を失ったのだ。
「いいかげんにしろ」というワードとともに頭をはたくことで、異能者の異能を消すことができる俺の異能によって。
他者への攻撃目的で異能を行使した人間に対する罰、なんて正義の心からではない。
俺と衣丹に攻撃しようとしたのがムカついたというだけの、俺の個人的な怒りからだ。
異能が使えなくなれば、そもそも異能による事件を起こしたという事実を認定できなくなり、伊枢くんが罪に問われることがなくなる、なんて優しさもなくはない――がほとんど無い。やはり個人的な感情が全てだ。
ちなみに、俺の異能を消す異能の存在を知っているのは、現状衣丹とその母親だけなはずなので、異能が使えなくなったと伊枢くんが喚いたところで、そもそも使えない人間の誇大妄想で済まされる。はず。
その方向に衣丹の母親が誘導しているはずだ。
俺の異能の一つ、「いいかげんにしろ」は相手の異能を消す究極のデバフだと思うが、そもそもツッコみがバフなのもおかしな話かもしれない。
「ツッコみ」には、会話やコミュニケーションを円滑に進める効果があるので、バフでもおかしくないのかもしれないが、俺のバフは今のところ、衣丹にしか効果が無い。
つまりそれは衣丹の異能によって、俺のツッコみがバフ化していると言うことなんじゃないかと思っている。
そんな衣丹の異能は「認識改変」だ。
実際は、認識にとどまらず世界そのものを変えてしまうヤバい異能だ。
異能の力で俺のツッコみを自らのバフに変えているんだろう。
衣丹は、何もない空間に何かあることにもできるし、それを踏み台にすることもできる。
ゲーム内でよくある空中二段ジャンプなんてのもできるし、三段でも五段でも十段でもいける。
丸太を俺と認識させることだってできる。
――いやさすがにあの丸太だけは謎すぎるが。
そして、この世界に異能をもたらしたのも衣丹――かもしれないと俺は思っている。
まあ、衣丹の異能が先に生まれたのか、異能がこの世界に広がったことで衣丹の異能が目覚めたのか、本当のことはわからないが。
俺の「いいかげんにしろ」を衣丹に使ったら、この世界が元に戻るのか、衣丹から異能が失われるだけなのか、衣丹の異能でそれすらもバフに変えてしまうのか。
それはわからないし、確かめるつもりもない。
仮に衣丹がこの世界の異能の起点だとしても、俺は元に戻そうとは思っていない。
だから、万が一戻ってしまう可能性のある行動は取れないし、取らない。
さて、この世界の異能の始まりとか、衣丹の異能についてとか、俺のツッコみで衣丹の異能も消えてしまうのかとか、丸太はどこから来たのかとか、この後の授業のこととか、考える事はあれこれあるが、今の俺が考えるべき重要なことはこれらではない。
学生なんだから授業は大事だろというのはわかるがさて置きだ。
俺が考えるべき最優先事項――それは、今度のデートのプランなのだから。
20年ほど前、いじられたり雑に扱われたりした主人公がハイテンションでツッコみまくるようなラノベを楽しく読みふけっていました。
テストの点数で召喚するおバカさんたちの話とか、生徒会で駄弁る人たちの話しとかですね。
そんな話を最近読んだところ、頑張ってツッコんでるなー。テンションたけえなー。ちょっともたれるなー。となりまして。
脂の多いお肉を食べて初めて胃もたれをした時の感覚を、こんなところでも味わうことになり、年を取るとハイテンションツッコみで胃もたれしてしまうのかと、ショップを受けた次第でございます。
ということで、雑にボケ、ゆるくツッコむ話でも書いてみるかとなり、こんな感じになりました。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
次の話があるとすれば、デート編ですかね? 雑なボケとゆるいツッコみを思い付きましたらば、次の話でお会いいたしましょう。




