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『5階にトラック突撃!?ポンコツ女神の使役権と地球通販を得た医学生、辺境の村でワスプ薙刀と現代医療を駆使し最強防衛ライフを始める』  作者: 月神世一


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EP 4

医学生のすれ違い。最強の『コンバット服(デート服)』納品

ルナミスキングのグランドオープン前夜。

村長宅のリビングには、異様なほどの期待と緊張感が漂っていた。

「はぁ……はぁ……。ど、どうしようリーザ、ルナ! 心臓が口から飛び出そうよぉ……っ!」

ウサギ耳をブルブルと震わせ、顔を真っ赤にしてソファに座るキャルル。

彼女の視線の先には、テーブルの上に置かれた『地球のロゴが入った大きな段ボール箱』があった。

「落ち着きなさいキャルル。優太がわざわざ地球の魔法ショッピングで取り寄せてくれた『一番似合う服』なんでしょ? きっと、フリフリでヒラヒラの、お姫様みたいなドレスに決まってるわ!」

リーザが自分のことのように目を輝かせている。

「ええ。優太のことだから、きっと実用性も兼ね備えた、素敵なシルクのワンピースとかかもしれないわね。ふふふ、青春ねぇ」

エルフのルナも、温かい目でキャルルを見守っていた。

コタツから顔だけ出したルチアナに至っては、「地球のブランド服かしら? 売ったら高く売れそうね」とすでに転売の算段を始めている。

(優太が、私のために選んでくれた、最高に可愛いお洋服……♡ これを着て、明日は並んでテープカットをして……ああっ、もう! 私、幸せすぎて死んじゃうかもしれないっ!)

極厚の【少女漫画フィルター】が視界をピンク色に染め上げる中、リビングのドアが開き、優太が入ってきた。

「おう、揃ってるな。キャルル、待たせたな。お前の要望通り、お前に一番似合う『地球の最先端の服』を用意したぞ」

優太は自信満々に腕を組み、段ボール箱を指差した。

その顔には、「俺は完璧な仕事をした」という医学生特有の(そして戦術マニア特有の)ドヤ顔が張り付いている。

「ゆ、優太……っ! ありがとう……! 大切に、大切に着るわね……っ!!」

キャルルは感動で涙ぐみながら、震える手で段ボール箱のテープを剥がし、パカッ! と蓋を開けた。

「「「…………え?」」」

箱の中身を見た瞬間。

キャルル、リーザ、ルナ、そしてルチアナの四人の動きが、文字通り完全にフリーズした。

そこに入っていたのは。

可憐なフリルのついたワンピースでも、美しいシルクのドレスでもなかった。

周囲の森林に完璧に溶け込む、オリーブドラブ(暗緑色)とブラウンの『迷彩柄・タクティカルコンバットシャツ』。

そしてその上に重ねて着るための、重厚なケブラー素材で作られた『米軍特殊部隊用・防刃タクティカルベスト(多数のマガジンポーチ付き)』。

さらには、泥や血を弾く『高耐久コンバットパンツ』と、関節を守る『ハードシェル・ニーパッド(膝当て)』のフルセットであった。

「……ゆ、優太……? これ……は……?」

キャルルの声が、微かに震えていた。ウサギ耳は完全に垂れ下がり、困惑で瞳孔が開いている。

「おう! どうだ、驚いたか!」

優太はキャルルの困惑を「あまりの機能美への感動」と致命的な勘違いをし、ウキウキとした声で解説を始めた。

「お前は村長として、明日は大勢の前に立つからな。いつオークの残党や暗殺者に狙われるか分からない。だから、俺のGPポイントを大奮発して、地球で買える『最強の装備』を取り寄せたんだ!」

優太はタクティカルベストを取り出し、バンバン! と手で叩いて強度をアピールする。

「このベストの防刃ケブラー素材なら、オークのナタの一撃でも致命傷を防げる! さらに、胸のポーチにはポーション(回復薬)を収納できるMOLLEモールシステムを完備! このコンバットシャツは通気性も抜群で、お前の得意な月影流の格闘戦(CQC)の動きを一切阻害しない!

まさに、前衛で戦うお前に『一番似合う(生存確率が上がる)服』だろ!!」

「…………ッ!!」

キャルルの脳内で、ピンク色に輝いていた【少女漫画フィルター】が、パリィィィィンッ!! と粉々に砕け散る音がした。

「私が……私が欲しかったのは……っ、こんな、こんなゴツゴツした戦闘服よろいじゃなぁぁぁいっ!!」

「えっ?」

「優太の、バカァァァァァァァァァァッ!! 女心が、これっぽっちも分かってない、戦術バカァァァァァッ!!」

ボロボロッと大粒の涙をこぼし、キャルルは迷彩柄のコンバットシャツを優太の顔面に力いっぱい投げつけると、そのまま「うわぁぁぁんっ!」と泣き叫びながら、自分の部屋へと走り去ってしまった。

バタンッ!! と、乱暴にドアが閉まる音がリビングに響く。

「……は? え? なんで?」

顔面にコンバットシャツを乗せたまま、優太は呆然と立ち尽くした。

軍事・医療のプロフェッショナルである彼の頭脳をもってしても、現在の状況が全く理解できない。

「……信じられない。地球の男って、みんなあんなにデリカシーがないの?」

「リーザ、地球の男が一括りかは分からないけど……少なくとも、優太の『えすこーと』は最低最悪の落第点ね」

リーザとルナが、ゴミを見るような、絶対零度の冷たい視線を優太に向けていた。

コタツのルチアナすら、「うわぁ……引くわぁ……。女の子が『一番可愛い服』っておねだりしたのに、サバゲーのフル装備渡すとか、サイコパスでしょ」とドン引きしている。

「な、なんでだよ!? 明日は不特定多数の人間が集まるんだぞ!? 万が一の襲撃に備えるのが、村長の、トップの務めだろうが!! 俺はあいつの命を守るために……っ!」

優太が必死に弁明するが、三人のヒロインたちは「はぁ……」と深いため息をつくだけだった。

「優太。キャルルはね、村長としてじゃなくて、『一人の女の子として』あなたに可愛いって思われたかったのよ。それが分からないなら、あなたはただの朴念仁バカね」

ルナが静かに、しかし決定的な一言を放つ。

「一人の……女の子……?」

その言葉に、優太の脳裏に、真っ赤になって上目遣いで「可愛いお洋服を選んでほしい」とおねだりしてきたキャルルの姿が蘇った。

(……ッ! しまった……!! 俺、とんでもない勘違いを……!!)

ようやく自分の致命的なミス(戦術的配慮の暴走)に気づいた優太は、手の中にある最高級のタクティカルベストを見て、激しい後悔と共に頭を抱えた。

ルナキンのグランドオープンまで、あと十数時間。

泣かせてしまった武闘派ウサギ村長の笑顔を取り戻すため、不器用な医学生の「命懸けの罪滅ぼし」が、幕を開けようとしていた。

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