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『5階にトラック突撃!?ポンコツ女神の使役権と地球通販を得た医学生、辺境の村でワスプ薙刀と現代医療を駆使し最強防衛ライフを始める』  作者: 月神世一


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29/90

EP 9

武道館ジャック!伝説の『LOVE&Money』熱唱と熱狂の渦

音が消えた日本武道館。

数万人の困惑と静寂の中、マイクを捨てた魚人族の少女・リーザは、美しく通る声で高らかに宣言した。

「さあ! 音楽が止まったなら、私が歌うわ! アタシと一緒に愛を叫んで!」

伴奏はない。PAのスピーカーも死んでいる。

しかし、リーザがステップを踏み、手拍子を煽ると、そのリズムは不思議な魔力(魚人族特有の共鳴効果)を帯びて、すり鉢状の武道館全体へと波及していった。

パンッ! パンッ! パパンッ!

最初は戸惑っていた数万人の観客たちが、リーザの堂々たるパフォーマンスに引っ張られ、無意識に手拍子を合わせ始める。

会場の空気が一つになった瞬間、リーザは極上の笑顔を弾けさせ、武道館の天井を突き破るような声量で歌い出した。

「♪愛! アイ! 愛! アイ! ラ〜ブラブ!」

圧倒的なソプラノボイス。マイクを通していないとは思えないほどの音圧が、観客の鼓膜を心地よく震わせる。

「さあ、そこの男の子も女の子も! 大きな声で!」

リーザが客席を指差して煽ると、アイドルのライブで鍛え抜かれたファンたちが、反射的に合いの手を返した。

「(Fu Fu!)」

「♪マネー! マネ! ローン! ダーリン! グ!」

「(Yeah!!)」

武道館が揺れた。謎の乱入者の歌う、あまりにも現金ストレートすぎる歌詞に、会場のボルテージが一気に爆発したのだ。

「♪朝に目覚ましがなったわ(ジリリリ!)

 ♪私はまだ眠いわ(おはよー!)

 ♪朝シャンしなきゃ(Fu!) 朝メニュー食べなきゃ(パクパク!)

 ♪鏡の前で メイクをしなきゃ(魔法をかけて〜!)」

ステージ上を所狭しと駆け回りながら、完璧なステップで歌い踊るリーザ。

その横で立ち尽くしていた朝倉月人も、プロのアイドルとして彼女の底知れぬ才能に戦慄していた。

(なんだこの子……!? 伴奏もマイクもないのに、たった一人で数万人の空気を完全に支配している……! これが、本物の『天才』……!)

「♪さぁショーの始まりよ(It’s Show Time!)

 ♪のんびりな私は 1LDKに置いて行くわ(バイバイ!)

 ♪扉を開ければ 私が主人公」

リーザがアリーナ席に向かってバチン! とウインクを飛ばすと、最前列付近のファンたちが狂ったように叫んだ。

「オ・レ・の! アイドルー!!」

「あいつ……完全にトーキョーのオタクどもを手懐けやがった……!」

最前列の柵にしがみつきながら、顔面からメロンアイスの匂いを漂わせる優太は、ただただ呆然とステージを見上げていた。

その横では、気絶から復活した魔王ラスティアが「おおおっ……! 月人くんのステージを救う聖女が現れたぞ!」と、バルログ持ちのペンライトをリーザに向けて振り回し始めている。

「♪今日も私の為に世界が動く(まわって! まわって!)

 ♪全て上手くいくわ(絶対!)

 ♪愛も富も一つの物(どっちもちょーだい!)

 ♪ダイヤが欲しい♪ 土地も欲しい♪(Want You! Want You!)」

サバイバルで培われた圧倒的な強欲さが、逆に「清々しいほどのアイドル性」として観客の心を鷲掴みにする。

『貴方のとキャッシュで生きていける』と歌い上げるリーザの姿は、まさしく女神だった。

「♪だから私は 銀河の果てまで歌って行けるわ

 ♪だから、何処までもついて来てね♡

 (一生ついていくよー!!)

 ♪ダーリン!(チュッ♡)」

武道館に数万人の野太い歓声が轟く。

「リーザちゃん最高ー!!」

「口座番号教えてー!!」

もはや誰も、PAトラブルのことなど気にしていない。

リーザがCメロで「綺麗なドレスも ガラスの靴も 維持費がかかるのよ」と少しだけ切なげに(ルナミス帝国での極貧生活を思い出しながら)歌うと、会場からは「そうだー!!」という地鳴りのような同情と共感のコールが湧き上がった。

「だから……もっともっと、愛して(課金して)ね? 覚悟はいい?」

リーザが挑発的に微笑むと、武道館のボルテージは最高潮に達した。

「♪世界中が私の為に愛を叫ぶ(まわって! まわって!)

 ♪全部抱きしめるわ(最強!)

 ♪愛も富も同じ輝き(どっちも本物ー!)

 ♪ダイヤも株も♪ 土地も愛も♪(All Need! All Need!)

 ♪貴方の全て(人生)を背負って生きていける(Fuuu〜!)」

ラストフレーズ。

リーザはステージの中央で、天高く右手を突き上げた。

「♪だから私は 銀河の果てまで歌って行けるわ

 ♪だから、何処までもついて来てね♡

 (一生ついていくよー!!)

 ♪ダーリン!(チュッ♡)」

チャリーン♪

リーザの投げキッスと共に、誰もいないはずのステージに、幻聴のように美しい小銭の音が響き渡った(気がした)。

「「「ウオォォォォォォォォォォォォォッッ!!!」」」

日本武道館の屋根を吹き飛ばさんばかりの、割れんばかりの大歓声。

マイクを持たない一人の少女が、数万人の観客の心と、そして日本のエンターテインメントの歴史を、その手で完全に『ジャック』した瞬間であった。

「……はぁ。アイドルのプライドを捨てたとか言ってたが……結局お前は、どこにいてもアイドルなんだな」

歓声の渦の中。優太はメロンまみれの顔を少しだけ拭いながら、ステージ上で誇らしげに微笑む同居人サバイバーを見て、ほんの少しだけ口角を上げた。

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