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『5階にトラック突撃!?ポンコツ女神の使役権と地球通販を得た医学生、辺境の村でワスプ薙刀と現代医療を駆使し最強防衛ライフを始める』  作者: 月神世一


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EP 3

夏の祭典!コミケ会場の神々と、医学生の胃痛

「あつぅぅいぃぃぃ……。なにこのアスファルトの照り返し……地獄の業火よりタチが悪いんじゃが……」

真夏の東京ビッグサイト。

そびえ立つ逆三角形の巨大建造物を背景に、コスプレエリアの片隅で魔王ラスティアが舌を出してへたり込んでいた。

「文句言うな。武道館の開場時間まではまだ数時間あるんだ。それまでここで『コスプレイヤー』としてやり過ごすしかないんだよ」

優太はタオルで汗を拭いながら、周囲の視線を必死に警戒していた。

異世界ファンタジーの住人にとって、日本の夏特有の「まとわりつくような湿気」は未知のダメージだったらしい。

芋ジャージのルチアナに至っては、すでに日陰で干からびて「ガリガリ君……誰か私にガリガリ君のソーダ味を……」とゾンビのようにつぶやいている。

「ねえ優太。この『こすぷれ』っていうのは、つまり演劇のようなものかしら? 私のウサギ耳も、作り物だって言い張ればいいのよね?」

キャルルが自分の耳をピクピクと動かしながら尋ねる。

「そうだ。いいか、絶対に魔法は使うな。ただポーズを取って『そういうキャラクターです』って顔をしてればいい」

優太が念を押した、その瞬間だった。

「す、すいませんっ!! めっちゃくちゃクオリティ高いですね!! お写真、一枚撮らせてもらっていいですか!?」

フルサイズの一眼レフカメラを構えた、汗だくの青年カメコが興奮気味に駆け寄ってきたのだ。

「えっ? しゃしん? あ、ええと……」

キャルルが戸惑いながらも、ふと優太の方を見る。

(優太の故郷の文化……ここは村長として、立派に役目を果たさなきゃ!)

キャルルは大きく深呼吸をすると、ビシッ! と月影流の美しい武術の構えを取った。

「おおおっ!? 凄い、体幹ブレてない! っていうかそのウサギ耳、どういうギミックですか!? 筋肉の動きに合わせてピクピク動いてる……CGみたいだ!!」

カシャカシャカシャカシャッ!!

シャッター音が鳴り響く。

キャルルの躍動感あふれる構えと、どう見ても『本物』にしか見えないウサギ耳の連動に、周囲のカメラマンたちが次々と足を止め始めた。

「ヤバい、あっちの併せ(グループ)レベル高すぎない!?」

「角の造形エグっ! エルフ耳の子も、なんかCGのオーラみたいなの出てないか!?」

わらわらと人が集まり、あっという間に異世界御一行の周りに巨大な『囲み(撮影用の円)』が形成されてしまった。

「な、なんじゃこやつら! 黒いレンズを一斉にこちらに向けて……魔法の触媒か!?」

ラスティアが警戒して立ち上がろうとした。

「バカ、動くな! あれはただの記録装置だ! いいからお前は『威厳のある魔王』のポーズを取ってろ!」

優太が小声で指示を飛ばす。

「む? 威厳のある魔王……ふんっ、造作もないわ!」

武道館に行けない苛立ちも相まって、ラスティアはスッと目を細め、玉座から人間界を見下ろすような『絶対的支配者』の冷酷なオーラを全力で解放した。

「「「ウオォォォォォッ!!!」」」

「魔王様! 目線こっちお願いします!!」

「最高!! そのゴミを見るような冷たい目、最高です!!」

カメコたちが大熱狂し、フラッシュの嵐が巻き起こる。

ラスティアの禍々しくも美しい二本の角と、圧倒的なオーラ。それはどれほど腕の良い造形師やレイヤーでも絶対に出せない、「本物」だけが持つプレッシャーだった。

「あらあら。見知らぬ人たちに注目されるのは、少し恥ずかしいわね」

エルフのルナがふわりと微笑むと、彼女の周囲に漂う本物のマナ(魔力)が、太陽の光を反射してキラキラとエフェクトのように輝いた。

「「「ファンタジーの妖精が実在したぞォォォッ!!」」」

カメラマンの何人かが、美しさに耐えきれずその場に崩れ落ちる。

(……よし。なんとか『超絶クオリティの神レイヤー』として誤魔化しきれてるな)

優太がホッと胸を撫で下ろした、その時。

「ねえねえ! そこのカメラ持ってるお兄さんたち!」

魚人族のアイドル・リーザが、みかん箱(代わりのカラーコーン)の上に飛び乗った。

「私がいっちばん可愛くポーズを決めてあげるから! お礼に、そこの屋台で売ってる『牛串』と『焼きそば』を貢いでちょうだい! 今なら投げ銭(現金)も大歓迎よ♡」

「お、お前ぇぇぇっ!! トーキョーのど真ん中で物乞い(物理スパチャ)の営業すんなぁぁぁ!!」

優太の怒号が有明の空に響き渡る。

かくして、日本のSNS(Xなど)のトレンドには、突如として【#コミケ 神レイヤー】【#本物のエルフ】【#焼きそば要求する魚人】といったワードが爆上がりし、ポポロ村の住人たちは日本のオタクたちの間で伝説の存在となってしまったのであった。

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