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『5階にトラック突撃!?ポンコツ女神の使役権と地球通販を得た医学生、辺境の村でワスプ薙刀と現代医療を駆使し最強防衛ライフを始める』  作者: 月神世一


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EP 2

異世界御一行、トーキョーに降り立つと医学生の胃痛

「うわっ……あつっ! なにこのサウナみたいな空気!」

コタツ部屋のふすま(次元のゲート)をくぐり抜けた瞬間、ルチアナが顔をしかめて手でパタパタと顔を扇いだ。

むせ返るような湿気と、アスファルトの照り返し。そして、どこからか漂ってくる排気ガスと、室外機の生ぬるい風の匂い。

「……ああっ。このコンクリートの匂い……自動販売機の放つ人工的な明かり……」

優太は、路地裏の地面に両手をつき、アスファルトに頬ずりせんばかりの勢いで感動に打ち震えていた。

間違いない。ここはアナステシアの鬱蒼とした森ではない。

現代日本、夏のトーキョーの路地裏である。

「すぅぅぅぅぅぅっ……ハァァァァァッ!!」

その横で、魔王ラスティアが突然、胸を大きく反らして深呼吸(というより吸引)を始めた。

「こ、ここが……月人くんが生まれ育ち、今まさに同じ空気を吸って吐いているという聖地……『にほん・とーきょー』!! この排気ガスすら、月人くんの吐息の一部と思うと……尊い……っ! 肺が浄化されるようじゃ!!」

「んなわけあるか。ただの光化学スモッグだ、咽せるぞ」

限界オタクと化した魔王に冷静にツッコミを入れつつ、優太はリュックを背負い直して立ち上がった。

「見て優太! あの巨大な鉄の魔獣、すごいスピードで走ってるわ! ぶつかったらタダじゃ済まないわね……私のトンファーでカチ割ってこようか!?」

大通りの方を覗き込んだキャルルが、行き交う自動車を見てウサギ耳をビンビンに逆立てながら戦闘態勢に入ろうとしている。

「やめろ! トヨタ車をトンファーで破壊するな! 損害賠償で俺が死ぬ!」

「優太様ぁ……あそこの『マクドナルド』って書かれた看板から、ものすごくジャンクで暴力的な香りがするの! リーザ、もうお腹ペコペコよぉ!」

リーザがハンバーガーショップの排気口にへばりついて涎を垂らし、ルナは「ここの大気は、随分とマナ(化学物質)が淀んでいるわね」と優雅に咳払いをしている。

「はぁ……。とりあえず、路地裏から出て落ち着ける場所を……」

優太がそう言いかけた、まさにその時だった。

「ねえねえ、あの子たちすっごくない?」

「うわ、マジだ。角とか耳の造形エグい。CGみたいじゃん」

路地裏の入り口を通りかかった女子高生の二人組が、スマホを片手にこちらを指差してヒソヒソと騒ぎ始めたのだ。

(……ッ!! しまった!!)

優太の背筋を、一気に冷や汗が流れ落ちた。

見慣れてしまっていて完全に失念していたが、今ここにいるメンバーのビジュアルは『異常』の一言に尽きる。

魔王ラスティアの頭には、禍々しくも美しい本物の「二本の角」。

キャルルの頭には、感情に合わせてピクピクと動く本物の「ウサギ耳」。

ルナの耳は長く尖った「エルフ耳」で、リーザは魚人族特有のキラキラとした瞳とエキゾチックな肌。

ついでに、ルチアナは夏なのに「ヨレヨレの長袖芋ジャージ」である。

このまま大通りに出れば、十中八九「異常者集団」あるいは「新種のテロリスト」として警察に通報される。異世界の存在がバレれば、内閣情報調査室や自衛隊が出張ってくる大国際(次元)問題だ。

「おいお前ら! 角と耳を隠せ! 今すぐだ!」

優太が小声で怒鳴る。

「えっ!? 隠すって言っても、これ生えてるのよ!?」

「わらわの誇り高き魔王の角を隠せと!? そんなことより武道館じゃ!」

「やばい優太、あそこの『コウバン』って建物の前にいるお巡りさんが、こっち見てるわよ!」

万事休す。

警官が怪訝な顔でこちらに歩み寄ってくるのを見て、優太は「終わった」と絶望で目を閉じた。

しかし、その時である。

女子高生たちの会話の続きが、優太の耳に飛び込んできた。

「今日ってアレだよね、有明のイベントの日!」

「あー、コミケね! だからあんなガチのコスプレイヤーさんがいるんだー。クオリティ高すぎ!」

(……これだッ!!!)

優太の脳内に、一筋の光明が差した。

医学生としての冷静な判断力が、瞬時に最適解を弾き出す。

「すみません、お巡りさん!」

優太は警官の前に飛び出し、満面の営業スマイルを浮かべた。

「この子たち、今日有明で開催されてる『コミックマーケット』に向かう途中のコスプレイヤーなんです! ちょっと気合い入れすぎて、角とか耳の特殊メイクが外せなくなっちゃって!」

「えっ、こすぷ……?」

キャルルが首を傾げるのを、優太が「お前らは喋るな!」と目力で制圧する。

「あー……なんだ、コスプレの人か。いや、あまりにもリアルな角だったからビックリしたよ。でも、会場外でのコスプレ歩きはあんまり感心しないねぇ。早く会場に行きなさい」

「はいっ! すぐに向かいます! ほら、お前らも行くぞ!」

警官の追及を強引に躱し、優太はラスティアとキャルルの背中を押して、路地裏から逃げるように駆け出した。

「ちょ、優太! どこに行くのよ! わらわの武道館はあっちじゃ!」

「バカ言え! 今の格好で電車にも乗れるか! ここはトーキョーで一番、お前らみたいな『異形の集団ガチレイヤー』が神として歓迎される場所……『コミケ会場』に直行するぞ!!」

かくして。

武道館へ向かうはずの異世界御一行は、なぜか真夏のオタクの祭典『コミックマーケット(東京ビッグサイト)』へと、その足を踏み入れることになってしまったのであった。

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