6.双子だろうがわからない
ぶっちゃけ金はともかく縁談は余計なお世話だと思う。
不敬だから堂々とは言わないけど。でもセシリアは礼を言って受け入れていた。
「これ以上好条件の相手なんて居ないわね」
あっさり婚約を了承した妹は、その時点では逃げ出すつもりは無かったと思う。
髪を伸ばし普段からドレスを着始めたセシリアは別人みたいに見えた。
俺たち双子じゃなくなったみたいだ。そんな馬鹿なことを口走ってしまうぐらいに。
「何よ、私はずっと私よ。変わらないわ。セレストがずっとセレストなことと同じ」
双子であることが変わるわけないでしょ。
淑女らしく微笑む彼女に自分が何て答えたかを覚えていない。
確かに妹の言うことは正しかった。俺たちはどこまでも双子だ。
だからこうやってセシリアの身代わりに花嫁にされたのだ。
「……確かあいつって公爵の事は結構気に入ってたよな?」
エストに問いかけると少し間が空いて首肯された。
「そうですね、気を遣わなくていいから楽とか、ああいうタイプの方が長続きするかもとか仰ってましたね」
「つまり、結婚する気はあったんだよな……多分」
「だと思いますが真実は本人でないとわからないですね」
「……だな、っていうかそろそろ腹減った。着替えの前に飯食いたい」
「用意します」
そう言って素早くエストは去っていく。
相手に聞こえる程度の小声というのは意外と疲れる。一人になった部屋で俺は溜息を吐いた。
沢山話したせいで喉が渇いたのでベッドサイドのテーブルに用意された冠水瓶から水を飲む。
温いが柑橘系の爽やかな香りがした。
俺は柑橘類が嫌いなので用意したのはエストじゃなく公爵家の人間だろう。
逆にセシリアは酸っぱいものが矢鱈好きなので今後デザートとかで度々出てくるかもしれない。考えただけでうんざりした。
あの人形公爵が妻になる女性の好物を知っていて、覚えていたらの話だ。
「愛してないならとことん無関心でいてくれよな」
その方が色々と楽だから。
俺は水を飲み干した。
フレーバーウォーター自体は実家の伯爵邸でも時々出て来たので飲めないことは無い。
そしてサイズが微妙に合わないネグリジェを脱いだ。
いや噛み合わないのは大きさではなく体型だ。
女顔だろうが男らしさが皆無だろうがこうやって裸になれば俺は紛れもなく男だった。
つまり女として抱かれることは絶対無理だ。
あの顔だけは良い公爵が愛は無いけど性欲は別とかほざく屑野郎でないことをカーテンは閉じたまま俺は朝日に祈った。




