2 「さあ!今回の特集は、ロキシー様でーす!」
「さあ!今回の特集は、ロキシー様でーす!」
「ど、どうもー。よろしくお願いしまーす」
戦場で目覚ましい活躍を見せたロキシー。彼はテレビの取材を受けることになっていた。なので、今はテレビの“キラキラ”としたスタジオにいる。
照明魔法で過剰なまでに明るくなったその空間は、ロキシーにとっては目眩がしそうなほどに煌びやかなのだった。似合っていないと思うのだった。
スタジオには観覧のゲストもいた。
多くの人が二人の会話を見守っている。
照明の影響もあって脇汗が“ダラダラ”流れるのだった。
しかし、そんなことなど露知らず、インタビュアーとして有名なタレントはその本音を聞き出そうとする。面白いことを引き出そうとしているのだ。
「それでは、まずはお見せしていただいても?」
「もちろんですよ?あはは……」
俺は肘に脚を生やしてみせた。
そしてそれを自分の意志で自由に動かす。
それを見た観覧席のみんなは悲鳴混じりの歓声を上げる。そんなに怖がるようなもんでもないはずですけどね?普通に考えて火を突然出す方が危ないし。
「聞いた話ですと、それはどこからでも出せるそうで?」
「そうですね?ほら、このように」
俺はファンサービスのつもりで頭のてっぺんから脚を出す。
すると、悲鳴混じりの歓声が今度は笑い混じりに変わった。
まあ、ちょっと笑わせにはいってる。わざわざ頭のてっぺんに生やしたのは笑わせにいったからでもある。が、そういうピエロを演じることになったのは環境のせいだ!
「スゴいですね……それで――」
俺はそれからそのテレビでアレコレ話した。
前から俺は有名人だった。
冒険者では知らない人はいないほどの有名人だと思っていた。
が、実は、自分が思っていたよりも自分の存在はみんなに知られていなかったらしい。なので、テレビに出たことで俺はめちゃくちゃに有名人になってしまったのだ。
街を歩いていてもあちこちで悲鳴が上がる。
その悲鳴は恐らく悪い意味での悲鳴だ。
多分だけど、ネットの反応とかを見るにバケモノ扱いされている。
めちゃくちゃ、めちゃくちゃに不服ではあったが、仕方がないのだった。もうそういうのには大分慣れている。まあ、こんなに大きな規模でみんなに知られるのは初めてだからどうなるのかは知らないけど。
「どうしたらいいんだろうな?アル?」
「そういうこともあるよ。てか、お前のせいで俺までだよ」
「そうなの?でも俺よりかはマジでしょ?」
「まあ、それは間違いないね」
「お!お客さんアレじゃない!噂の足人間じゃない!ちょっとあの技見せてくれない?頭の上に足が生えるあの技!」
酒場にいたロキシーたちは店主に話しかけられる。
もうすでにバレていたが、その言葉で周囲の人も彼らを見る。
そして、みんながソレを拍手で催促してくるのだった。
もう本当にこんなことばかりだった。
悲鳴を上げられるか、笑われるか、オモチャにされるか。こんなつもりでテレビに出たわけではなかったロキシーはちょっとだけ困ってしまう。
だか、やる。
俺はそういうヤツだ。
「あははっ!本当に頭から足が生えてるよ!」
「その代わりに一杯奢ってくださいよ?」
「わかったわかった!いい見世物になったよ!」
見世物ってなんだよ。なんかあんまりいい意味ではないと思うんだけど、そっちとしてはそういう自覚はないと見てよろしいか?
しばらくは話題の中心に俺がいた。
サービス精神はある俺はあちこちから足を生やす。
そしてめちゃくちゃ笑われる。
もうめんどくさいしこれでいいのだ。どうせ悩んだって問題はなんにも解決しない。まさか俺が今から冒険者以外の仕事をするわけにもいかない。
金銭的にも能力的にも恵まれてはいるんだ。
だから大丈夫、なんだが!
それでもやっぱり酒は進むのだった。
「大変だな」
落ち着いてからアルにそう言われる。そうなんですよ、信じられないくらいに大変になってしまっているんですよ。これ、どうしたらいいですか?
「どうせならお前もバレたらいいのにな」
「俺のはそんなに面白くないよ。首生えるだけだから」
「頭は生えないんだもんな。もったいない」
「そうだな。頭が生えてたらお前よりも人気者だったかもな」
アルバートの能力は首を生やすだけの能力だ。だから、そこには頭は着いてこず、元々そこにはなにもなかったかのような跡があるだけ。
あ、そうだ。
そういえば首を伸ばす能力もあった。
どっちかっていうと首を伸ばす能力の方が使えるらしい。
まあ、偵察にも使ってるみたいだし、便利そうなのは間違いないと思うね。それに確かになんでかは知らないけど俺よりも面白くないのも確かだと思う。
体から足が生えてるのって滑稽なんだよな。
でも首が生えてると結構怖いの方が勝ってしまう。
俺も夜中とかにアルと共闘してるとたまに怖いもん。
どう考えてもおかしなところから首のような物が生えてたりするとめちゃくちゃ怖いし、夜中に首が伸びてくるとめちゃくちゃ怖い。俺みたいにみんなを笑わせないとダメですよ?って。
ヤバイ!年が明ける!
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