1 俺の魔法は足属性
俺の魔法は足属性。足属性とは全身や地面などから足を出現されることができる属性魔法だ。基本的には火、水、土、風、雷、木しか属性はない。
が、たまに俺みたいに変な属性の素養を持った人間が生まれてくるらしい。まあ、それにしても変すぎるような気もするが、アレコレ考えていても仕方がない。
「とりゃりゃりゃりゃりゃー!!どうじゃ!」
「なんだあのキモい男は!逃げろー!」
「キモいとか言うな!というか、逃げられるわけがないだろ?」
俺は全身に足を生やして芋虫みたいに這うように進んでいた。
当たり前だが、足がたくさんある分その方が足が速くなる。もはや空中に浮かんでいるかのようなスピードでモンスターたちを討伐しようとする俺。
『ロキシー・シュタイン』。
彼は足属性魔法の使い手だった。
『ラピス』という国の中でも指折りの実力者。
だったが、全然周囲には評価などされていなかった。
なので、どれだけの戦果を上げたとしても全線の使い捨ての駒と同じような扱いをされる。が、そんなことなんて関係ないように毎回毎回どの戦場でも大活躍するのだった。
俺は逃げようとするモンスターの行く手に足を生やした。
しかもそれは巨人の足で、退かすことも遠回りすることもできない。
いきなりの壁にぶち当たった彼は俺に向き直る。
が、その隙に背後の足によってゴブリン、オーク、ゴーレムのモンスターの御三家たちを“ダバダバ”となぎ倒してしまう。なんで強いんだよ、この属性。
「ロキ。今日も絶好調だな」
ロキシーに話しかけたのは『アルバート・スミス』。
彼は首属性の魔法を使う冒険者だった。
彼らは国が組織する軍事的なモンスター討伐に駆り出されていた。
普段は自由に冒険をして生きている彼らも、国から招聘されると必ずそこに参加しなければならない。が、そこで戦果を上げると出世できたり、報酬がもらえたりする。
もちろん二人とも報酬は得ていた。
が、出世することはないのだった。
なぜならば、やはりその力が気持ち悪いから。
アルバートなんてそこそこイケメンなのに首魔法とかいうよくわからない魔法を使っているせいで全然モテないのだった。優しいし、身長も高いし、清潔感もあるのに。
「アルの方はどうなんだ?」
ロキシーはアルバートのことを『アル』。
アルバートはロキシーのことを『ロキ』。
お互いにそう呼び合う仲だった。
変な能力のせいで評価されない者同士、自然と仲良くなっていって、今では戦友でも相棒でも親友でもなんでも該当するような関係性になっていた。
「俺も俺で絶好調だよ。ほらな!」
アルバートはその首をろくろ首のように思いっきり伸ばす。
そして、それで遠くにいたギガンテスの首を絞めるのだった。
すると、それだけでその巨人は倒れ込んでしまう。
全く抵抗することもできずに、彼の首魔法によってやられてしまうのだった。その様子を周囲のモンスター、そして冒険者たちが(キモいなぁ)とか思いながら見守る。
それもそのはずだ。
普通の人は火球で攻撃したり、風で攻撃したりしている。
その一方で、戦場の変わり者二人は首と足を使うのだ。
ちなみに、足魔法の『あし』には『脚』も入っている。
なので、足だけではなくて、脚を出現させることもできるのだ。というか、さっきからずっと足だけでなくて脚を使って攻撃したり、移動したりしていた。
「まあ、これで大体終わったんじゃないか?」
「そうだな。今回も褒美が楽しみだよ」
「でも、出世はできないんだもんなぁ」
「変なところに行くよりかはこうして戦ってる方がいいよ。昔の知り合いなんかに話を聞くと、やっぱり管理職とかって大変らしいぜ?色々と」
ロキシーは二十代後半程度の年齢だ。
しかし、この世界では十代の中盤頃から冒険するのが当たり前だ。
だから、もうすでに十年以上はこうして足で戦ってきた。
横にいるアルバートも同世代くらいだった。
実力のある二人は結構なお金持ちで、もうすでに持ち家も買っていた。しかも一括で買っていた。冒険者は儲かる人はどこまでも儲かるのだ。
「まあ、帰るとするか」
「そうだな。これ以上ここに居てもなんにもならないし」
キモい属性の二人は帰る。
近くにいたモンスターが二人に手を出す気配はない。
あまりにも意味不明な魔法はそもそもどうやって対処したらいいのかわからないのだった。だから、こうして一度その実力を見せると、後はもう誰もが前に出たがらなくなる。
どう考えても強かった。
どう考えても尊敬されるべき二人だった。
が、やはりその属性の奇妙さから全然だった。
時にはパーティーから追放されることもあった。
理由はキモすぎて一緒のパーティーに居たくないからとかいう、理由があるのかないのかよくわからないような理由で追放されたりすることもあったのだった。
「それにしても俺たちの能力って変な能力だよな。まあ、強いし、モンスターも討伐できるし、成功してるからいいんだけどさ。でも、ちょっともうちょっと尊敬してくれててもいいよな?」
ヤバイ!年が明ける!
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