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喋る埴輪と除霊師稼業  作者: 豚煮豚


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1/18

1 埼玉県は行田市


一家心中があったとされている山奥の一軒家。ここの所有者はこの場所が心霊スポットとして雑誌やネットなどに取り上げられることをヨシと思っていなかった。

なので、最近話題の除霊師に依頼を頼んでみたのだった。すると、やってきたのは長い前髪で瞳が隠されてしまっている大学生くらいの男性と、埴輪だった。

その埴輪は鎧などを身に付けることもない、左手を上に上げて、右手を下に下げている『踊る人々』のような埴輪。


所有者は除霊師が抱えている埴輪とキャリーケースを不思議そうに見ていた。


視線を埴輪は感じていた。


深夜の森の中で、虫の音しかないこの場所でたくさんの視線を感じていた。



「あの、すみません。ちょっと俺だけにしてもらえますか?」


「わ、わかりました。それでは、よろしくお願いします……」


除霊師の男性は一軒家の前で一人佇む。

そして、所有者が消えたことを確認すると独り言のように話し始めた。


「サキタ?この辺りに霊の気配は?」

「めちゃくちゃするぞ。めちゃくちゃ見られておる」

「そっか。まぁ、なら、結界でも張るか」


埴輪から甲高い可愛らしい声が聞こえてくる。しかし、その話し方はどこか威厳があって、昔風の感じだった。


俺は除霊師を生業としていた。

つまりはプロの除霊師ということだ。


もちろん、当然のように本物の除霊師であって、なんだかよくわからない商品を売り付けることで霊を払ったことにするようなインチキイカサマ除霊師とは全然違うのだ。


俺がちゃんと除霊をしているという証拠はある。

今も床を謎の力でホバー移動している埴輪のサキタ。

サキタは幽霊の気配を感じることができるだけでなく、幽霊と対話をしたり、幽霊を成仏させることができる。ちなみに俺も幽霊と話すことくらいはできる。



サキタの力を使ってちゃんと除霊をしているのだ。


嘘ではないぞ。


まぁ、とにかく今は俺が除霊師を稼業とすることになった経緯を説明するとしよう。


ちなみにサキタの名前の由来は幸魂サキミタマだ。

本人曰くサキタは神様みたいなものらしいからそうなった。


聞きたいから知らないが俺の名前は由良礼。

昔から「ユーレイ」とからかわれてきたものだ。


◈◈


夏のカエルとセミがうるさい中途半端な田舎。

空から降り注いでくる太陽光はメッセージを発しているようだった。

これから先の日常が大きく変わることを予感させていた。

その予感に動かされた「ユーレイ」はこの家に異変を感じる。まだ中途半端に幼い彼はこの場所で未知の存在と触れあうことになるのだ。



「おじいちゃん!なんか誰かが話してる!ヤバイ!」


「そんなわけがないじゃろうが。ここにはワシとお前しかおらんじゃろ」


埼玉県は行田市。

そこに俺の祖父は暮らしていた。

で、俺は高校の夏休みに祖父の家へ遊びに来ていた。


さすがは東京のベッドタウンである埼玉だ。

ほとんど北関東と言ってもいいこの場所にもそれなりの街がある。

車さえあれば普通になんの不便もなく暮らしていけそうな街だった。

ただ、その街的な物がある一方で行田市には有名な田んぼアートもあるのだ。行政施設のタワーから見下ろすそれは確かに立派だったが、「別に行田である必要なくね?」とも思えるのだった。


この家は築五十年ほどの家だった。そんなに歴史があるわけではないが、確かに由良家が暮らしてきた小さな歴史が積み重なっているような家。

そんな家は遥かなる歴史の上に建っていた。行田市には古墳があるので、大昔からここで人が生活していたことがわかっている。そんな歴史の上に建っていた。


俺はどこかから話し声を聞いていた。


しかし、それがどこからなのかはわからない。


それは押し入れからするような気もするし、台所からするような気もするし、天井からするような気もするし、床下から、特に床下からするような気もする。


もしかしたらこの下になにかがあるのか?


「……おーい……聞こえとるなら助けてくれー……」


「ほら!?今の聞こえなかった!?おじいちゃん!?」


「そんなの聞こえとらんわ。からかっとるのか?」


なんなんだろうか、これは。


なんにもわからない俺は頭がおかしくなっている可能性すら疑った。


でも、めちゃくちゃ聞こえていた。


「……地面だぞー!地面を掘ってくれー!……」


「地面?おじいちゃん?ちょっとこの家の地面を掘ってもいい?」


「いいが、なにをするつもりじゃ?まぁ、なんでもいいが地面を掘るつもりならスコップなりシャベルなりを小屋から持っていったらよいわい」


「ありがとう」と言って礼は小屋へと向かう。五十年前に流行っていた一軒家にはちゃんと庭がついていることが多かった。それなりの広さをした庭。


俺はそんな庭を“ガシガシ”と掘り進める。

こんなの夏休みじゃなかったら絶対にしていない。

というか、今までもここに遊びに来たことはあった。

それなのにどうして今日になって初めて声が聞こえてきたのだろうか。というか、明らかにコッチに向かって語りかけていたけどあれは一体どういうことなんだ?


あまりにも不思議すぎることが起こっている。


それを解明するために俺はとにかく地面を掘る。


もはや全身泥だらけだったし、祖父母にも変な目で見られていた。

それでも掘る掘る掘る。


「そのままだー!そのまま下に掘ってくれー!」





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(週刊少年ジ○ンプ方式)

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