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しいな ここみ様主催企画参加作品

美毒の壺


広大な領土を持つ王国の王がお忍びで市井を視察していた時に、この世の者とは思えない程の美女を目にする。


王は従者にあの者を連れてくるように命じようとしたが、ほんのわずか目を従者の方に向けていただけなのに、目を女性の方に戻した時にはその美女の姿は消えていた。


王は懸賞金を出してその美女を探す。


だが半年経っても1年経っても見つからない。


美女は見つからなかったが、女性を絶世の美女に変えられる秘術を持つ者がいると部下の1人が聞き込んできた。


魔族の住む領域と人間の住む領域を隔てる大森林に住まう魔女が、その秘術を知る者だという。


王はその魔女を招聘するために使者をたてる。


魔女は招聘に応じた。


今、魔女は王の前に立っている。


真っ黒で大きなつばがある帽子を被り、顔全体を覆う黒いマスクを着け、黒いドレス着用しその上に同じように真っ黒なマントを羽織っている魔女が、王の前で深々と頭を下げた。


「お招き頂き参上いたしました。


実験の失敗により二目と見られない顔になっておりますので、顔を晒すのはお許しください」


「構わん、それよりよく来てくれた、理由は聞いているな?」


「はい」


魔女は返事を返しながら、赤黒く塗られた壺を差し出す。


「此の壺の中身が秘術に必要な美毒です」


「美毒? 聞き慣れない言葉だが毒なのか?」


「違います、毒ではありません。


ただ、壺の中に入っている物を得る為に、遥か昔に滅びた東の果てにあった国で行われていた、呪術に使われた蠱毒の抽出方法を参考にしましたので、美毒と名付けました」


「蠱毒とは?」


「人を呪い殺す呪術に使う最高の毒を得る為の抽出方法です。


蛇や虫などあらゆる毒を持つ生物を1つの壺に入れて争わさせ、最後に生き残った生物が最高の毒を持つ物として呪術に使われました。


それを参考にして美毒を得たのです」


王は頷きながら続けろと言うように顎をしゃくる。


「女というものは古今東西、貧富の差無く、老若の区別無く、美を求める生き物です。


ですから11〜2歳から15〜6歳の女子を数十万人集めました。


集めた女子の中には一目見て可愛いと思う者は1人も混ぜず、パーツ毎なら秀でてる物を持つ者だけを集めたのです。


例えば、目が大きい者、睫毛が長い者、唇がぷっくりしてる者、歯並びが良い者、透き通っているような肌の者、足が長い者、乳の形が良い者、人並み以上の乳の者などです。


その女子たちを毒を持つ生物が1つの壺に入れられたように、数千人ずつに分けて1の壺2の壺と言うように番号を振った建物に押し込めて争わさせました。


私の力が及ぶ範囲の中だけでですが魔法を掛けて、自分より秀でてるパーツを持つ者を殺せば、殺した者のパーツが自分の物になると言い聞かせましてね。


ただ、直ぐ殺した者が分かるような殺し方は禁じました。


それを容認したら、そういう殺しを行った者を1番の脅威と捉えた他の者たちが結束して、その者のパーツは手に入らなくても真っ先に殺す可能性が高いからです。


それでは最高の美を求める目的が達せられませんから。


まぁそのお陰で最高の劇が見られました。


他の者にバレないように己の力で相手を殺害する者、女たちの世話を任せている宦官を誑かし手伝わさせる者、少しずつ少しずつ虐めて相手を自殺に追い込む者、罠に掛かった振りをして相手を逆に罠に掛ける者など、陰湿でジメジメドロドロとした人間模様が繰り広げられたのですから。


そうやって最後に生き残った者から得たのが此の美毒なのです」


「それを聞くと確かに、美毒の名が相応しいな」


「はい、それで、此れを使う方は決められているのですか?」


「あぁ、我が妻に使う」


「それでは、陛下とお妃様、それに私だけになれる部屋を用意して頂けますか?」


「用意させよう」


3人が部屋に閉じこもった翌日、部屋から出てきた3人のうちのお妃様を見て、部屋の外で待機していた従者や護衛の騎士たちは目を見開いた。


40代の王様より少し若い程度だったお妃様が、20歳前後にしか見えない若々しく素晴らしい美女に変わっていたからだ。


王様から褒美を受け取り魔女は大森林の屋敷に帰って来た。


屋敷に足を踏み入れた魔女は顔を覆っていたマスクを外し放り出す。


マスクを外した魔女の顔は、王様がお忍びで市井の視察していた時に見た、この世の者とは思えない程の美女そのものだった。


その魔女に罵声を浴びせた者がいる。


『嘘つき!』


声を掛けたのはこの世の者とは思えない程の美女の魔女と、負けずとも劣らない素晴らしい美貌の霊。


「嘘はついてないわ、本当の事を言わなかっただけで」


『だからそれが嘘つきだ! って言うのよ』


「フン! 100年持たずして塵になるただの人間に、最高の美毒は勿体ないわ。


美毒で若返り美女になったあの女だって、20代前後の若々しい外見になったけど中身は今までと同じ30代後半のまま、長生きしてもあと4〜50年程しか生きられないだろうからね。


最高の美毒は、私のような数万数十万年生きられる者が使うのが相応しいのよ。


だから、数十万人の女たちのパーツを手に入れた貴女から得た美毒は、誰にも渡すつもりは無いわ。


それに、数千人のパーツを得られた者たちから得た美毒でも、それなりに効果があるのだから此方で十分よ」







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― 新着の感想 ―
女性の美への執着は凄いなぁと感心しました。でも、美貌の女性を望んだのは王だから、男も大概だなぁと思いました。読ませていただき、有り難うございました。
私だったら美よりも世界を滅ぼす力が欲しいな(*^^*)
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