表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

ジョーイ軍團

〈春晩く男と女船出せり 涙次〉


 この〈涙次〉と云ふ俳人、私(永田)の分身である、鬼子母涙次(きしも・るいじ)の事。俳句業界には、私は長い。駄句を連ねて、今までやつてきた。だうかお見知り置きを-



【ⅰ】


 カンテラ、例に依り外殻(=カンテラ)に籠もつてゐた。牧野の指導あつて、悦美はめきめき料理の腕を上げたが、カンテラ、實を云ふと、外殻内で供給される灯油、から、より多くのパワーを得てゐるのは間違ひない。たゞこれ、悦美には内緒。新婚の内は、さうあからさまには新郎のエゴは通らない。


「おめでたう」とカンテラは云ひ、にやにやしてゐる。遷姫が夢に現れたからだ。「パレードの夢は俺も見たよ」と一呼吸。「あんたも戀多き女だな」「ナ、何ヲ」「金尾との事、惡いが、立ち聞きしてゐた」「ソレヂヤアぷらいばしーノ侵害デハナイカ」「まあ、さう怒りなさんな」「マア貴方ハカツテワタシガ戀シタ人、更ニ云ヘバ、上司、デモアル。ヨシトセザルヲ得ナイガ、重悟ニハ云ハナイデ慾シイ」「分かつた分かつた。俺もさう意地惡ではないよ」


 カンテラ「ところでテオくん」-とカンテラ、この夢(?)にテオも混ぜやうとしてゐる。テオ「なんすか?」テオは、谷澤景六として、今度ばかりは『かぼちやの馬車に乘つて』の次回作成功させやうと、純文學の海を、徹夜で彷徨つてゐたばかり。眠い目をこすつてゐる。



【ⅱ】


 カンテラ「折角、永田が90話もの俺たちの物語を書いてくれたんだから、(永田感激する。そんな思ひ遣りのあるカンテラだとは、思つてもみなかつた)派手なチャンバラの出來る、そんな依頼を待ちあぐねてゐたところだ。テオきみ、さう云ふ依頼が來てはいまいか、調べてくれないか?」「ラジャー」


 テオ、暫くしてから、「ジョーイ・ザ・クルセイダーが最近『ジョーイ軍團』つてのを立ち上げて、怪氣炎を吐いてゐますねえ」カン「ジョーイ・ザ・クルセイダーか... また蘇生したのか。で、例に依りフーゾク荒しでもしてゐるのかね」テ「主だつた惡さは、そんなとこなんスが、更に手を拡げて、色んな人々を恐喝(『軍團』をバックに)してゐる模様」


 カンテラ、最近ウィキペディアで、懐かしのコント馬鹿、ゴムパッチン藝の「ゆーとぴあ」のその前・その後を知つたばかり。私と同年代の讀者の皆さん(ゐるのかな?)、ホープさんが盟友、ビートたけしさんの「たけし軍團」の向かうを張つて、「ホープ軍團」つてのをやつてたのご存知? ウィキの記述には笑はせて貰つた。一讀をお薦めする。



【ⅲ】


「仕事は夜にしやう。金尾くんのゴーレムの働きに、俺、期待してるんだよねー」テオ「特に報酬が多額、と云ふ話ではないのですが。雪川組の繩張り以外に、ジョーイは手を出してますから」カンテラ「例へば?」テオ「身寄りのないお年寄りなどです。オレオレ詐欺に近い事をやつてゐる」テオのこの情報には、『をばさん』砂田御由希からのメールの内容も活かされてゐる。


「年寄り相手か... ジョーイも死中に活を見出さうと、必死なんだな」とカンテラ。「だがまあ『軍團』を引き連れてゐるとあらば、我々総出で立ち向かふべき案件だらう。この際、ギャランティーは度外視だ」


 カンテラ、テオに「をばさん」の身を寄せてゐる施設に、「張る」やうテオに命じた。



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


(けむ)を呑む我が身であればなほ可愛(かは)い童貞詩人の眞似ではあれど 平手みき〉



【ⅳ】


 ジョーイは「鉄箱のジョー」の稱號は大事にしてゐた。この術を以て、魔界を渡つてきた、名殘りであらうか。確かに「鉄箱」の脅威は、お年寄りには効くだらう。だが、その「鉄箱」のトリックは、カンテラ一味には通用しない事も、知つてゐた。


「やあやあカンテラさん、いつぞやは失禮致しました」とやけに低姿勢のジョーイ。これで一味の隙を突かうと、死にもの狂ひ。なんと云つても、魔界の盟主に成り上がれるチャンスは、今以外には訪れないだらう、との「讀み」が、そこには臭つた譯で...


「その手は食はないよ。今日は貴様の『軍團』とやらの検分に來た。さあ、貴様の奥の手、『軍團』を見せてみろ」「む、む、ぐぬう」ジョーイは、巨大なゴーレムに、自慢の「鉄箱」を潰されはしまいかと、それだけが気懸かりなのだつた。だが、結局は「軍團」を総動員、一味に立ち向かつてきた-



【ⅴ】


 じろさん「ふゝゝ。俺の好きさうな顔が揃つてるな。血祭りに上げられたくば、來い!!」軍團のメンバー、名を上げんと、じろさんに突つかゝつてはくるものゝ... 一様に関節を外され、敢へ無く壊走。


 さて、「鉄箱」、であるが、カンテラの讀み通り、ゴーレムの怪力には堪らず、その原型留めぬ處まで、捻り潰されてしまつた。ジョーイ「分かつた分かつた、あんた方には負けだ」とか云つて、「軍團」の切り札的存在は温存してゐる。毒針を吹く、「針師」がそれである。


 ジョーイは、カンテラには毒針が通用しない事、知つてゐた。人造の躰には、毒針の毒など、何でもないのだ。従つて、生身であるじろさんに、その毒針を吹くやう、「針師」に下知。

 じろさん、そんな事もあらうかと、「此井殺法・變はり身の術」を見せずにゐた。じろさんは、毒針が吹かれるや否や、事もあらうに、ジョーイの「鉄箱」(今や鉄屑に成り下がつてゐる)を身代はりにした...



【ⅵ】


 これでジョーイ、完全に追ひ詰められた。將棋で云ふところの「つみ」である。「しええええええいつ!!」ジョーイは、その身に、幾度めかのカンテラの(やいば)を受け、これまた壊走。


「ま、後は追ふまい。奴にはもう帰る場處はなからう。あゝ、やつぱり一味で暴れると、孤軍奮闘してゐるのに比べ、爽快だなあ」


 カンテラ、後の話では、施設の大元の團體からのカネは、受け取らなかつた、と云ふ。しかし、比較的余裕のあるお年寄りからの醸金だけは貰ふには貰つた。彼の口癖「俺らは慈善團體ではない」-それに飽くまで忠實な、カンテラであつた。



【ⅶ】


「ふゝゝ、遷姫、金尾くんに益々惚れた?」「ナ、何ヲ」「あんたにはやつぱり、強い男が似合つてゐるよ。衷心ながら、それだけは云つて置く」。



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈石の()に休み眞春の蝶があり 涙次〉



 今回はこれにて。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ