第五話 魂祓者
2024年 4月24日
1
「ありがとうございます。」
弁慶は二人に感謝を伝える。
義輝が答える。
「いえいえ、困ったときはお互い様だよね。」
「そうですよ。お互い様。ところであなた方も魂祓者なんですかぁ?」
ナイチンゲールが話した。
俺は魂祓者、という言葉の意味が分からなかった。そこで俺は二人に質問をしようとした。 しかし、それを遮るように弁慶が一歩前に出て喋る。
「そうです。我々も魂祓者です。」
俺は次こそ問う。
「魂祓者ってなんだ?」
すると、ナイチンゲール口を開く。
「魂祓者を知らないのですか?魂祓者とは悪魂を祓う人のことをいいます。」
シンプルで分かりやすい。
「なるほどねぇ。」
ナイチンゲールが続ける。
「また、その魂祓者には階層というものが存在します。強い順から偉人、将軍、大名、武士、農民です。これは、魂の生前の役職とは関係ありません。完全に実力になります。」
なるほど。
つまり、弁慶は偉人だがそれは無視されるという訳か。
じゃあ弁慶はどれぐらいなのか。俺は一つ問う。
「それは、どうやって決まるんだ?あと、弁慶はさの階級は何だ?」
次は義輝が答える。
「祓った悪魂の階級に上がるんだよぉ。シンプルだよね。偉人クラスの悪魂を祓えば祓った者は偉人クラスに昇格するんだ。」
話しているうちにいつの間にか太陽の顔が半分隠れていた。
その時、弁慶が突然、重たそうに口を開く。
「ちょっと…すみません。私、行きたい所があるんですけど…いいですか?」
2
俺たちはある建物にたどり着いた。
そこに置いてある「看板」に目を落とす。
「仏教カフェ」
何でやねん。よりによって行きたい所がカフェだなんて。何で弁慶はカフェに来たんだ。
どうやらみんな同じ疑問を持っているようだ。看板を見て体が固まっている。
俺たちはカフェに入る。
入ったらすぐにカウンターがあって、壁沿いには椅子と机が置いてある。壁には大仏や神様の絵が沢山飾ってあり、棚や机の上には大仏の置物が置いてある。
奇妙な雰囲気のお店だ。
「いらっしゃいませ。ご注文お決まりになりましたらそこのベルを押してください。ではごゆっくりどうぞ。」
店員が丁寧に説明する。
ついでにお水も持ってきた。一つだけ。
机の上では誰も話そうとする気配がない。みんな弁慶が何を話し出すか待っているのだ。
しかし、弁慶は何もしゃべらずにメニュー表を手に取った。
まじでこいつは何をしたいんだよ。俺はそんなことを思っていた。
すると義輝がいいにくそうに聞いた。
「弁慶さん…どうしてここに来たのかな……?」
すると弁慶はメニュー表を嬉しそうに見ながら答えた。
「パフェが食べたかった。」
(パフェが食べたかった…?)
お店の中が一瞬静まり返る。
弁慶以外のみんなは同じような顔をしていた。口を開けた驚いた顔。
「パフェが食べたくて…来たのですか?」
どうやらナイチンゲールも相当驚いているようだ。
「そう。ここのパフェが食べたくて、今日秀吉と行こうと思ってたんだよ!でももう遅くなってきたからみんなで行こうと思ってね!みんなで来ちゃった!」
相当食べたかったのだろう、しゃべり方が幼稚園児になっている。
「これだ!食べたかったやつ!バナナナナチョコホイップパフェ!バナナがめっちゃのってるの!みんなはどれにする?」
そう言って弁慶はみんなの方にメニュー表を回す。
みんなは戸惑うように好きなものを選ぶ。
「じゃあ…僕はこれで…。」
「じゃあ私は…こちらにします…。」
「じゃあ…俺はこれにするかな…。」
「おぉ!全部うまそうな!じゃあ店員さん呼ぶねぇ!」
そう言って弁慶はベルを鳴らす。
3
「ふぅ。美味しかったぁ!みんな食べ終わった?」
弁慶がお腹を膨らませながらみんなに声を掛ける。
「美味しかったね。また食べたいよ!」
「とても美味しかったです。」
「意外とうまかったなぁ。」
みんなが口を揃えて答えた。
「じゃあそろそろ行くか!」
弁慶はそう言って席を立った。
4
外は真っ暗で街頭だけが光っている。
「じゃあ僕たち帰りますね。」
弁慶が二人に向かって軽く頭を下げた。俺も真似して頭を下げた。
「帰るって行っても帰る所なんてあるのかい?」
義輝が聞く。
「えぇ。問題ないです。」
弁慶がそのまま返す。
「じゃあ良かった。二人とも…今日は会えて良かったよ。二人はこれから行かないといけない場所があるよね。これからも魂祓者として頑張ってね!」
義輝が答える。
「応援してますよ!」
ナイチンゲールも大きな声で言う。
俺たちは手を振って別れた。
また会えたらいいな…お互い生きてまた会いたいな。そう思った…。
第五話はいかがだったでしょうか。
第六話では、二人はもっと遠くまで旅を続けます。「行かないといけない場所?」どこだろう?
ぜひ第六話も見ていってください。