第一話 出会い
2024年 4月24日
「おい、起きろ。おい、起きろ…起きろっ!」
「バチーンっ!」
「いってっぇぇ!」
眠っていた俺のほっぺたがいきなり熱くなった。
「いってぇよ、誰だよ!」
「俺だよ。俺、おれおれ。」
低く、太い声でおれおれ詐欺の最初に言うような台詞が聞こえた。
俺はゆっくり目を開ける。
そこには身長が2mある大男が立っていた。
「え?誰ですか。普通に怖いんですけど。」
俺は布団バッとどけて起き上がった。
「え?俺だよ。弁慶、弁慶だぞ!」
大男は怒鳴りながら僕の顔に自分の顔を近づけた。
「弁慶ぇ?誰ですか。」
俺は正直に答えた。
すると、
「はぁ?!」
「バチーンっ!」
また、思い切りほっぺを叩いてきた。
「痛っ!痛えよぉ!なにすんだよ。」
俺はほっぺたを抑えながら怒るように言った。
すると、大男は訳の分からないことを言い始めた。
「俺は叩いただけだぞ。そもそもこれに関してはお前が悪い。だってこの有名な弁慶さまを知らないんだぜ。そんなのあってはならない。」
俺はムカついた。
「はぁ?!弁慶か弁当か知らないけどよぉ。お前ただの一般人だろ?!誰がお前のこと知ってんだよ!」
すると、大男はこんなことを言い出した。
「一般人?俺は一般人じゃなくて僧兵だぞ。」
俺は『僧兵?』と聞こうとしたが叩かれそうなので、知ったかぶりをした。
「あぁ、僧兵ねぇ。知ってる。知ってる…」
「バチーンっ!」
「痛っ!」
なぜか叩かれた。
「お前知ったかぶりすんなよ。僧兵っていうのは仏教や荘園を守護していた人のことだよ。」
俺はほっぺたをさすりながら聞いた。
「それって今もあるの?」
弁慶は答えた。
「室町時代中期ぐらいだ。」
「…」
俺は黙った。普通に訳が分からない。
「はぁ?!どういうこと?」
大男は説明した。
「だから、俺は弁慶の魂でこの令和の時代に降りてきたってこと。あの頃は僧兵だっただけ。成仏されなかったんだよ。かわいそうだろ?」
俺の、頭が追いつこうとしない。
「え?どういうこと?」
大男は当たり前のように答えた。
「え?今言った通り。」
俺は興味津々に聞いた。
「じゃあ、つまり大男は幽霊ってこと?」
大男は答えた。
「まぁ、今でいうとそういうことかな。だから、普通の人には見えない。つまり、お前は普通の人よりも霊感が強いんだな。はっきり見えてるのか?」
「うん、輪郭もはっきりしてる。」
「じゃあ相当霊感が強いな。」
俺は嬉しくなった。普通の人は見えなくて自分には見える。自分が特別な人間みたいで嬉しかった。
そして大男は話し始めた。
「そこでだ、お前には悪魂の退治を手伝ってほしい。」
「悪魂?」
俺はすぐに聞いた。
大男は説明した。
「そうだ、悪魂。天には成仏されなかった死んだ人たちの魂があった。そして、天と地の境界線があったんだが…それが何者かに破壊されたんだ。そこで、魂が地に降りてきたんだ。」
大男は続けた。
「そして、そのなかでも悪魂といわれるものがある。読んで文字のごとく悪い魂だ。そこで、俺は偉い人から悪魂の退治を頼まれた、というわけだ。」
(すげぇ、そんなファンタジーみたいなことがあるんだ。)
と思った。しかし、一つ疑問に思うことがある。
「大男さん。でもどうしてあなた一人でやらないんですか?俺に協力してもらう必要はないんじゃないですか?」
大男は答えた。
「俺は魂だから、本体といわれる人がいないと物体に触れることができないんだよ。」
俺は恐る恐る聞いた。
「本体をどうするんですか…」
大男は一言答えた。
「呪う。」
「呪う!?」
俺は大きな声を出した。
大男が話す。
「でも、大丈夫。悪いことが起きたりする訳じゃないから。ただ、イメージは合体するって感じ。ちゃんと合体しても君の意識はあるよ。」
俺は安心した。
そう聞いた途端、なんか楽しみになってきた。
「じゃあ手伝うよ。なんか大男ヤバい奴みたいだけど面白そうだし。」
俺は宣言した。
「いいじゃん!じゃあよろしくね。あと…お前、俺のこと大男っていうのやめろ。弁慶でいい。」
弁慶はそう言った。
そして、よく分からない紙を差し出しだした。
「あと、これ…契約書、書いて。あなたは魂と協力し、悪魂を退治することを約束しますか。みたいなこと書いてあるから、ここに名前書いといて。」
「分かった。」
そして、俺は契約書に名前を書いた。
「そういえば、お前の名前初めて知ったな。いと…うしゅう…きって読むんか。」
俺は答えた。
「そうだよ。」
「いい名前だな。じゃあこれからはお前のことしゅうき、って呼ぶぞ!よろしくなっ!」
弁慶は初めて優しい顔を見せた。
こんにちはm(._.)m鋤沢輝と申します。
第一話はいかがだったでしょうか。
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誤字 • 脱字などのミスも指摘いただけたら大変ありがたいです。
質問はできる範囲で答えたいと思います。
第一話では、主人公である秀吉と弁慶の出会いを描きました。
第二話では、いよいよ秀吉と弁慶の冒険が始まります。
ぜひ第二話も見ていってください。
よろしくお願いします。