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招魂社に眠る


序章:謎の投稿


秋の夜、Twitter上に奇妙な投稿が現れた。


@Mysterious_Cipher

「数学者も詩人も挑戦せよ。この方程式が示す場所に、かつての真実が眠っている。鍵は和歌に隠されている。」


投稿に添付されたのは連立方程式と数首の和歌だった。


方程式:

x + y = 175.462177

x - y = -104.064811


和歌:

1.『人の心の奥のくらきをのみぞ知る あさける月の影はよるらむ』

2.『道のべに 清水ながるる 柳かげ しばしとてこそ 立ちどまりつれ』

3.『み吉野の 山の白雪 ふみわけて 入りにし人の 跡ぞこひしき』

4.『やまがたの かねのひびきは おくやまに ふかくこもりて ひびくことなし』


この投稿が瞬く間に拡散され、謎を解こうとする人々が集まった。中でも、謎解き好きの4人のフォロワーたちはすぐに議論を始めた。


第一幕:方程式と座標


@MathHunter

「まずは方程式を解く。x = 35.698683、y = 139.763494…これは東京、神保町の座標だな。」


@BookAddict99

「神保町って古書の街だよね。『人の心の奥』って、書棚の奥を示唆してる気がする。」


@Codebreaker_X

「和歌に『月の影』や『柳かげ』がある。これは象徴的な地名や店名のヒントじゃないか?」


@UrbanExplorer45

「神保町にいるから、周辺を探してみるよ。」


数時間後…


@UrbanExplorer45

「『月光堂書店』って店を見つけた!棚の奥に『井田正孝少佐の回顧録』って本があった!」


第二幕:井田少佐の謎


回顧録を開くと、古い和歌と短い手記が記されていた。


@UrbanExplorer45

「こんな和歌がある:

『あきつしま ふたたびひかる ひはきたる やすらけくやどる ところぞここ』」


@BookAddict99

「『あきつしま』は日本の古称で、『やすらけくやどる』って靖国神社を示唆してる気がする。」


@MathHunter

「そもそも、井田正孝少佐って誰だ?旧陸軍の人物みたいだけど、なぜこんな形で名前が現れたんだろう。」


@Codebreaker_X

「戦争末期、旧陸軍が資金を隠したという話がある。この回顧録と和歌は、その隠し場所のヒントじゃないか?」


さらに読み進めると、こんな記述が見つかった。


回顧録の一節:

「昭和二十年、大本営移設の準備と共に、帝都に秘匿すべき財が運ばれた。英霊を祀る招魂社は、その一部を託された場所でもある。」


@UrbanExplorer45

「招魂社って、靖国神社の旧称だよね。井田少佐はそこに関わっていたのか。」


第三幕:和歌に隠された謎


さらに新たな和歌が記されていた。


@UrbanExplorer45

「『み吉野の 山の白雪 ふみわけて 入りにし人の 跡ぞこひしき』

『やまがたの かねのひびきは おくやまに ふかくこもりて ひびくことなし』」


@BookAddict99

「『かねのひびき』は金の響き…つまり財宝を暗示してる?」


@Codebreaker_X

「そして『奥山』というのは、神社の敷地内に隠された地下空間を示唆している可能性がある。」


@MathHunter

「でも、今の靖国神社は歴史的な聖域だ。発掘なんて絶対に無理だよ。」


@BookAddict99

「それでも、井田少佐は何らかのメッセージを残そうとしたんだ。和歌の中に未来への託宣を込めて。」


終幕:眠る真実


フォロワーたちは手がかりを全て検討したが、靖国神社の地下に眠るものについて確証を得ることはできなかった。


謎の投稿者もその後姿を現さなかった。


だが、井田少佐が記した和歌と記録は、旧陸軍の一端を垣間見る手がかりとして人々の記憶に残った。


静かに佇む靖国神社。そこに眠る謎は、いずれ誰かの手で解き明かされる時を待っているのかもしれない。


和歌の声は、いまだ歴史の奥で囁き続けている。


和歌一覧(古今和歌集より)

1.『人の心の奥のくらきをのみぞ知る あさける月の影はよるらむ』

2.『道のべに 清水ながるる 柳かげ しばしとてこそ 立ちどまりつれ』

3.『み吉野の 山の白雪 ふみわけて 入りにし人の 跡ぞこひしき』

4.『やまがたの かねのひびきは おくやまに ふかくこもりて ひびくことなし』

5.『あきつしま ふたたびひかる ひはきたる やすらけくやどる ところぞここ』


隠された財宝は真実か、伝説か。誰にもわからないまま、物語はそっと幕を下ろす。

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