登校
俺は予定していた待ち合わせ時間に遅れていた。前日校門前で待ち合わせと約束したばかりなのに。バスが渋滞に嵌って停滞してしまったのだ。
拙い、秋月が怒っているかもしれない。
汗を掻きながら校門の前で待っている秋月の元に駆け寄った。
「わりぃ、遅れた」
私を待たせるなんてどういうつもり、という言葉が来ると思っていた。
「ほら、ネクタイ曲がっているわよ。私の彼氏なんだから」
そう言ってネクタイに手を伸ばす。そして整えてくれた。
一瞬首を絞められるかと思った。
「……ありがとう」
行きましょう、と手を握って来る。俺はそのまま冷たい手を繋いで校門をくぐった。
「怒ってないのか?」
「バスや電車、遅延はあるでしょ」
良かった……。こう考えると理解のある女性って重宝されるんだな。
「おい、見ろよあれ」
「あの二人付き合ったのか?」
校門をくぐった辺りから周りが騒がしい。まぁ、そうだろ。俺もこんな事になるとは思わなかった。
「バイトで忙しいんでしょ。ちゃんと宿題してきた?」
「ああ、しているよ。夜にLINEでメッセージが来なかったらもっと早く寝れたんだけどな」
つい本音が零れてしまった。まずい!
だがその言葉にも彼女は柔らかく返してくれた。
「じゃあ、十一時以降はLINE無しで」
「うん……、助かる」
「私は女子が振ってきた時、LINEのやりとりを見せる事が出来れば良いだけだから。だからたまに好きって言葉も送って欲しい」
「そんなことならお安い御用だよ」
その言葉に彼女は止まった。
え、何?
「そんなことって、美作君慣れているの?」
「ううん、文字にするだけなら簡単だと、そういう意味で」
「じゃあ、送ってくれると嬉しいわ」
「うん」
え、嬉しい?
今だ彼女の本心が掴めない。本当に告白を断るのが嫌で俺と契約しているのか、本当は俺を狙っているのか。
「そう、弁当二人分作って来たよ」
キッチンで働いているためか、料理は好きだ。家族の食事も大体、俺が作っている。
「やったあ、楽しみ!」
彼女が破顔した。これも演技なのだろうか。
その登校する二人を滝川加奈が教室から見ていた。




