ハンバーグ二つ
「グリルハンバーグ二つ出まーす」
ウェイターにそう呼びかけている間に、俺はライスを二つ盛る。
「直さん、シュリンプサラダいけます?」
「うん、OK!」
今日のキッチンのメンバーは最強の布陣だ。サラダ担当の大学生の直さん女性。グリル担当は同じく大学生の小林さん男性だ。最高に忙しい時間帯に滞りなく回す。バイトの醍醐味だ。夜も二十時を回り、少しずつ客足も落ち着いてきた。合間が開けば食材の補充や皿洗いに回り、効率を最優先に動く。
「美作君、友達来てるぞ」
ウェイターの室戸さんが話しかけてきた。
「友達、ですか?」
男子にも数名しか話していないこの場所に食事に来たとなると、メンツは限られてくる。
誰だろう。
俺はカウンターから身を出して室戸さんが指さした方を見る。
「美作っち~~!」
滝川加奈さん率いるヒエラルキートップ三人が来ていた。
俺は目を瞑る。
誰が教えたんだ……。
無視する訳にもいかないから、軽く手を振ると、キャーと黄色い声が上がる。
「美作君、モテモテじゃん」
背後に直さんが立った。普段は明るくてムードメーカーなのだが、滝川さんたちを見て目を細める。
直さん?
滝川さんも直さんを見て、動きが止まった。
えっ、何? この空気。
直さんは斜め後ろから顔を近づけてきた。そして俺の耳にふっと息をかける。
「ひゃあっ!」
耳は止めて、弱いの!
いきなり何をするのかと直さんを見たら、滝川さんたちに向かって冷たい笑みを湛えていた。
滝川さんも動きを止めて睨んでいる。
直さん、あんたもか!
だから嫌だったんだ、バイト先教えるの。
しかも直さんは微妙な距離に立ち、胸を俺の腕に当ててくる。少しずれても付いてくる。
「直さん……、当たってます」
「当ててんのよ」
「セ、セクハラですよ!」
「ふふっ、ハラスメントだとは思ってないくせに」
はい、ありがとうございます! いや、そうじゃない!
滞りなく進んでいたバイトも微妙な終わり方になってしまった。
バイト、変えようかな……。
すいません、出来心です(-_-;)。




