71.トラと一緒
キリが悪いため、本日3話更新したいと思います。
本日更新の1話目です。
この後、17時10分と19時10分に更新予約しておきます。
「大きな扉ですね。この先はどうなっているんでしょう?」
「ボス部屋だろ? 行くのか?」
カイリさんが俺のつぶやきを拾って答えてくれた。
ボス部屋かぁ、やっぱり入ったら最後、ボスを倒すまで出られないんだろうな?
「やっぱり、ボスを倒すまで扉が閉まって出られないんですか?」
「やっぱりってなんだ? 扉なんだから開けたままにして、ヤバくなったら逃げればいいだろう?」
え? 扉は締まらないし、逃げられるの?
「でも、逃げたらボスが地上まで追ってきちゃうんじゃないですか?」
「ボスはボス部屋から出られないんだ。どんなボスだか見るだけ見てみるか?」
確認して無理そうなら逃げるのも有りなのね? それなら見てみたい気がするけど、見ちゃったら倒したくなっちゃいそうな気もするんだよね。今のメンバー、みんなイケイケ状態だしね。でも気になる。
「今回は下見で来たので、見たら戦わないで帰りますね。 戦わないですからね?」
そう言って俺は扉を押した。率先して扉を開こうとする辺り、俺が一番イケイケ状態だったのかもしれない。このダンジョンでブルーブル1頭しか倒してないけど……
「あれ? びくともしないんですけど?」
この扉、全然開かない。押しても引いてもスライドさせても無理だ。
もしかして上にあげるタイプか? と思いしゃがんだところで、ポッパーさんとカイリさんも押し出した。
なんか俺だけしゃがんでるから速攻でバテたみたいになってるじゃん!
「上にあがるか確かめただけで、疲れたんじゃないんだからね!」
「何言ってんだ? それにしてもびくともしねーな!」
ポッパーさんとカイリさんが、光りながら押してもびくともしない。
もしかして、これは開かずの扉なのか?
「私もお手伝いします!」
そう言ってスピナさんが扉に手を触れた瞬間、扉が光り、目の前が真っ白になった。
目が眩み真っ暗になったが、しばらくすると目が慣れてきた。
カメラのフラッシュは、猫には眩しすぎて失明することもあると聞いたことがあるので、トラは大丈夫かなとマジックバックの上に居たトラを確認するが……居ない。
確かにさっきまで背中にトラの重みがあったはずなのだが、いったいどこに行ってしまったのだろう? 眩しすぎてどっかに隠れてしまったか?
「え? スピナさんが居ない! スピナさん! どこに居ますか!」
ブレードさんが焦り始めた。そう言われてみると、スピナさんも居ない。
そういえば扉が光ったタイミングが、スピナさんが扉に触れた時だったような気がする。
もしやスピナさんだけ扉の奥に行ってしまった? いや、でも扉はあいてないし、そんなことがあるのか?
「アタルさん! どうしてそんなに落ち着いているんですか! スピナさんが消えたんですよ!」
ブレードさん始め、グスカートさん達までパニックになってきている。
こういうときはどうしたらいいんだろう? 人は、想定外のことが起こるとパニックになる。
仕事で失敗した時もそうだ、パニックになると日頃当たり前にできたこともできなくなってしまう。ミスがミスを呼ぶ状況はパニックが原因だと俺は思う。
「ひとまずレイスに襲われないように警戒しましょう! トラもいません。もしかしたらスピナさんとトラが一緒かもしれません。私たちはここでしばらく待機することにします!」
「アタルさん……質問だが、トラが一緒だと大丈夫なのか?」
ポッパーさんが恐る恐る聞いてくる。俺が落ち着いていられる要因がトラとスピナさんが一緒だということに気が付いたのだろう。
「大丈夫です! だから待機します。2人が戻るまで待ちましょう!」
そう言って俺達はトラとスピナさんを待つことにした。