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6.社会人たるもの

 俺の異世界転生物の知識によると、エンシェントドラゴンの火魔法は、火力がやばい。

 これは火が付くと黒焦げになったり、炭も残らないような跡形もなく燃え尽きる例のあれだろう……そう! 食材が無駄になるテンプレ! 俺はこういうのに敏感だからな、先に対処法を考え、実行する!


 俺はそこら辺に転がっていた石をクラフトし、石の串をいくつか作り、シーサーペントの肉を刺す。それから、炎の周囲の地面に串を刺していく。遠赤外線で焼いていけば焦げることは無いだろう……元アウトドアマスター(自称)に抜かりはない。


「アタルは何をしておるのだ? 魔力の炎は周囲に熱を与えない。地面の草が燃えないだろう? それでは永久に肉に火が通らないだろう」


 なんだってー!

 まさかの異世界仕様だった……言われてみれば炎に近づいたけど熱さを感じなかった。湖風呂に入ったから身体が冷えて感じてないと思ってたけど、そうではなかったのか?


「すみません、こちらの魔法の仕様が良くわかってなくて……」


 ちょっと照れながら肉を焼いていく。たしかに炎に触れると焼ける。っていうか、シーサーペントの肉、めっちゃ脂出るな。見た感じ、赤身なんだけど、どこにそんな脂身があるんだ? もしかして、こいつ魚じゃねーな?


「あ、そうだ。ドラッシェン様に質問があります」


「なんだ?」


「実はここに向かうまでに股ズレになっちゃいまして、股がヒリヒリするんです。トラに回復魔法をお願いしたら下手すると消滅するみたいなこと言われまして……ドラッシェン様なら治療できます? さっき水に浸かった時もすごい痛かったんです」


「あぁ、アタルの身体はこちらの世界に定着した。大丈夫だろう。一応今回は我が治そう」


 俺の身体がうっすらと光、股の痛みが消えていく。

 あぁ、よかった。股ズレってすっごく痛いのよ。休職中、ジーンズでウォーキングしていたら初日でひどいことなったんだよね。悪夢再来だったけど、魔法のおかげで助かった!


「ありがとうございます。助かりました、トラは灯りを付けるときライトって言ってたんですけど、ドラッシェン様は魔法名言わなくても発動するんですね」


「詠唱は我には必要ない。トラも詠唱はいらないが無詠唱まではいかないのだろう」


『主もいつの間にかクラフトを無詠唱してるニャ、ちょっと異常ニャ』


 無詠唱はこの世界では難しいことなのね?

 オッケー! 了解! 把握した! 気を付けよう……


 そろそろいい感じで焼けた、初異世界料理を食べよう。

 見た感じ、赤身の肉。脂も結構落ちたし、おじさんの胃にも優しくなっただろう。俺はまだおじさんって言われる年じゃないけどな!


「いい感じで焼けたのでいただきますね。お土産ありがとうございます」


「うむ、シーサーペントの肉は、高級食材とされている。きっと満足するだろう」


 おぉ、高級食材!

 あぁ、こんな凶暴そうなやつも食材になるのね。異世界、怖い!


 シーサーペントの肉は絶品……とまではいかなかった。

 やっぱり調味料がないといまいちかな? せめて塩が欲しかった。ただ、肉としてはおいしい。高級な牛肉と豚の中間のような初めての味。しかし、魚では間違いなくない。肉質が魚じゃなかった。


「ごちそうさまでした。とてもおいしかったです。トラも食べていいよ」


 社会人たるものお土産には感謝が必要だ。

 たとえ見た目ヤバそうな魚を贈られても、味が微妙でも感謝は忘れない。


「主ー! 塩が欲しいニャ」


 猫にはわかんないよな。


「ところで、じいちゃんがいろいろクラフトしていたと言ってましたが?」


 シーサペントの肉を焼いている時、ドラッシェン様が話していたことを思い出したのだ。


「そうだ、トシオからマジックバックを預かっている。待っておれ」


 そう言い、龍の姿になり飛んでいくドラッシェン様。

 急に龍にならないで欲しいな。ビビる! そしてめっちゃ早い、あんなに大きかった龍がもう豆粒に見える。あれって何㎞くらいスピードでてるんだろ?

 なんて考えていたら、ズバンと大きな龍が目の前に現れ、人間の姿に変わっていく。

 心臓に悪い、もうちょっとゆっくり飛んできて欲しい。瞬間移動してるんじゃないかってくらい早いぞ。風圧は感じなかったから、これも何かの魔法っぽいけど。


「持って来たぞ。トシオのマジックバックだ。手を入れると中のものが頭に浮かぶ。取り出すイメージをすれば取り出せる。収納したいときは収納したいものに手を触れ、バックに入れるイメージだな。トシオがクラフトしたマジックバックは高性能だ。収納力はもちろん、バックも間口よりも大きなものも入る。大きなものを取り出すときは巻き込まれないように注意するんだな」


 と、ニヤニヤしながらドラッシェン様はマジックバックを渡してくれた。

 じいちゃん、なんかやらかしたな? ってか、巻き込まれないように注意しろっていうけど、どう注意したらいいんだ? 聞いてもニヤニヤされそうだからやめとこう。こういうのは徐々に大きくしていけばいいのだ。練習あるのみ!


「ありがとうございます。」


 受け取ったじいちゃんのマジックバックはリュックサック型だった。

 これはマジックリュックとかって名前にはならないのかな?

 リュックの方が背負えるから楽そうだけど……取り出すとき下ろさないといけないから、とっさの時使いづらくない? まぁいいか、高性能みたいだし。


「マジックバックは収納魔法には入らない、生きたものも入らないから注意が必要だ」


 と、注意事項を説明してくれる。

 ここら辺は異世界物と一緒だなぁ。じいちゃんのことだからトンデモ仕様でクラフトしてそうだけど、ルールがあるのかな?


「わかりました。大切に使いますね」


 俺はさっそくリュックの中に手を突っ込んだ。カセットコンロっぽいのや、調味料っぽいのが入ってる。これ、シーサーペント食べる前に欲しかったな。


 っていうか、多分ドラッシェン様知っていたんじゃね? 今もニヤニヤしてるし……

 なんかだんだんわかってきたぞ。このドラゴン様いたずら好きだな!

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