5.グルグル廻してギュッとしてドン!
「こいつはシーサーペントじゃなくて、血ーサーペントだったんだ……」
『血だらけにしたのは主にゃ!』
つぶやく俺に、突っ込む猫。いや、虎みたいにでかいけどね。
ひとまずこれをどうにかしないといけない。このままだと新たな事件が発生してしまう!
「ドラッシェン様、この血ーサーペントを湖に入れて血抜きは可能ですか? もしかして、この血に誘われてさらにまも……いや、お土産が増えちゃったりしたりする感じですか?」
『めっちゃ動揺してるニャ!』
うるさい、ちょっと黙ってなさい。あなたの主は今、大事な情報を聞き出しているんです!
「いや、大丈夫だ。我がいる限り魔物は寄ってこない」
おぉ、さすがドラッシェン様だ。これで事件は続かない! 安心、安全!
「それでは、この血ーサーペントを湖に移動してもらえますか? 私の力ではちょっと難しそうです」
服も汚れそうだしね……着替えないし。
「身体強化を使えばよいだろう。我の魔力で作られたアタルには魔力がある。魔法スキルはないが無属性魔法の身体強化なら可能だろう」
魔法か、たしかに使えたら便利そうだけど使い方がわかんないんだよな。
「えっと、魔法の使い方を教えてもらえますか?」
「グルグル廻して、ギュッとしてドン! だ」
全然わかんねー!
ドラッシェン様、教えるのめっちゃ下手。これ天才にあるあれだ、感覚でできるから言語化できないやつ。しょうがない、こういう時は猫の手を借りよう。
「トラ、身体強化教えて」
『魔力をグルグル廻すと膨張するニャ、それをギュッとすると身体強化できるニャ、あとはドンニャ』
猫の手もダメだ。さっぱりわからん。
なんでスキルは考えただけでできるのに、身体強化というか魔法はこんなにややこしいのか?
もしやスキル持っていると簡単になるのか?
無属性魔法のスキルが欲しい……あぁ、スキルか、スキルならいいのね?
グルグル廻してギュッとした魔力をクラフトし、身体に付与。
「フフフ、俺は天才かもしれない。出来た気がする……」
『あ~、あれは失敗ニャ』とトラがつぶやいているが嫉妬かな?
俺は猫の手を借りないで身体魔法を手に入れた! しかもスキルでな!
「よーし、あとはこの危ないからさらに格下げされ、血の気の抜けた魚を湖に放り投げれ……」
気合を入れてシーサーペントのを掴んだとたん爆発するシーサーペント。
『身体強化しすぎニャ~』
気が付いてたなら教えてくれよ!
「さすが我の魔力で産まれただけあるな」
そんなに満足そうな顔をしないでください!
じいちゃん、事件です。血ーサーペントが爆発してベトベトです。この世界に来て早々、着替えがなくなりました。
「皆様のアドバイスのおかげで、シーサーペントは私の力でも運べるサイズになりました。ありがとうございます」
爆発し、バラバラになった肉片を集めながら身体強化魔法のお礼をする。習得できてないけどな!
『アドバイスを無視した結果がこれニャ!』
くそ! あきらかにディスってる!
身体強化は練習していくとして、まずは着替えが必要だ。こんなベトベトな服を着ながら調理なんて嫌だし、食事するのも嫌だ。
「トラ、ちなみに服をきれいにする魔法なんてある?」
異世界ものなら生活魔法とかあるだろ? 俺、知ってるんだぜ?
「服をきれいにする魔法? 知らないニャ」
無かった……仕方ない、湖で洗うか。
「ドラッシェン様、身体が汚れてしまったので先に湖できれいにしたいと思います。ついでに服も洗いますね」
「うむ、だが服ならクラフトで作り直せばよかろう?」
あー、なるほどねー。服は作り直せばいいのね?
血がついてない服のイメージできるかな?
ちょっと自信ないなー。
ひとまず服を脱ぎ、湖に入る。
「うへー、めっちゃ冷たい!」
全身を洗い、血を洗い流す。っていうか、お二人さんこっちを見ないでもらえますかね? 全然落ち着かないんですけど。
トラなんて『しばらく見ない間にお腹が出てるニャ』なんて言ってるし、中年になるとお腹は出るもんなんだよ! あと、向精神薬の副作用、あれもなかなか馬鹿にできない。
それと股ズレが痛いんですけど! ばい菌入ったりしないよね? 大丈夫?
ひとまず身体のベタベタは取れたので湖から上がったが、タオルが無い。
はぁ……とため息をつき、シャツをクラフトし、新しく作り直す。ちなみに、きれいなシャツが出来上がった。やればできるもんだな!
それで身体を拭き、濡れたシャツをクラフトで新品シャツにまた作り直した。なんか、スキルの無駄遣いしてる気がするけど仕方ない。これしか思いつかなかった。
その他、汚れた衣類もクラフトし元通りだ。これで調理に取り掛かかれる。
「ちょっと生はあれなんで、焼きたいんですけど火は……」
「それは魔法がある。トシオはクラフトで道具を作り出していたようだが、あとで探してみればよい」
と言い、拳大の炎をドラッシェン出してくれた。
トラは出せないのかなとチラッと見てみると『火魔法は専門外ニャ』と言っていた。
じゃあなにが専門なんだ?
「魔法だから薪いらないんですねー。ではさっそく焼きます。皆さんも食べますか?」
「土産だ、好きなだけ食べればよい」
ドラッシェン様は食べなくて良さそうだ。
『残ったら頂くニャ。あ、オイラは猫じゃないから調理した料理を食べるニャ!』
急に猫じゃないアピールしだしたぞ? まぁいいけど……
「わかった、熱々をご馳走してやる」
「熱いのは苦手ニャ」
猫舌か……やっぱり猫のままじゃねーか!