37.第二回パーティー会議
「それでは第二回パーティー会議を開催します。ハイ拍手~!」
パチパチパチパチ! 今回は戸惑いつつも、スピナさんが一緒に拍手してくれた。
うんうん、これだけで満足だ。このまま会議を閉会したい……
俺は今、ギルドから戻ってきたスピナさんと、トラとクランクさんの4人で食堂にいる。
本日の会議室は食堂だ!
聞かれちゃいけない情報満載の会議だが、俺が王都へ行ってしまうと、オリジナルメニューのシロギスフライも終了してしまう。カイリさん的にも死活問題だろう。カイリさん夫妻は元冒険者、口が堅いと信じて食堂で会議を行う。ちなみにカイリさんは、カウンター奥の厨房から仲間になりたそうにこちらを見ているが、聞こえちゃったらしょうがないスタンスにしているので、気が付かないようにしている。ナミさんはナギちゃんを連れて居住スペースの方へ行ってくれた。
「今回は特別ゲストにクランクさんが居ます。ちょっと問題がおきまして、王都へ行かなくてはいけなくなりました」
まったくもって行きたくないけどな!
「原因はこれです」
といい、ポカリエスをテーブルの上に置いた。カイリさんがカウンターから身を乗り出してこっちを見ているが、スルーを決め込む。
「ちょっと出来心で作ってみたこいつが伝説級だったみたいです。これを王家に売り……いや、献上しに行きます。なので王城がある王都へ向かう必要ができました」
「王都……王家……出来心」
スピナさんは混乱しているようだ。これはしばらく俺のターンが続きそうだな……
実はスピナさん、王都の教会に所属していたそうだ。聖属性のスキルを持っていることから、聖女として育てられ、訓練を受けていたが成人しても聖属性スキルを発動できなかったため、協会から追放されたと聞いた。だからスピナさんが今回王都へついてくるかは正直微妙だ。
スピナさんの双子の妹も聖属性スキルが有り、そちらの方が聖属性スキルを発動できるため、現在は妹さんが聖女として活躍しているらしい。ちなみに、子供の頃から聖女として競ってきたせいか姉妹仲は良くないらしい。
「準備ができ次第出発するのですが、スピナさんはどうしますか? 往復で2か月くらいかかるそうなので帰ってくるのは秋口。遅くとも雪が降るまでにはベイツに戻ってきたいです。ちなみに俺はここの冒険者トップなので、必ず戻ってきますよ」
そうだ、俺をベイツは離しはしないだろう。離れろと言われても離れないけど! 瞬間接着剤並みに俺は粘着質なのだ。
なかなかスピナさんの状態異常は回復しないらしい、ずっと俺のターンだ。
「こちらに残るときは生活費を置いていきます。出来るお仕事を続けてください」
主に流木拾いかな。釣りは教えていなかった。
「いえ、ついていきます!」
スピナさんは回復したようだ。スピナさんのターン!
「ちなみにクランクさんは、いつ出発したいとか希望はありますか」
「できれば早く……本日を準備期間に当てて、明日早朝にでも出発してもらえると助かります」
早いな。あぁ、旅に出るならちょっとハスンの街によって欲しい。ちょっとだけでいいから!
「えっと、カイリさん。本日からシロギスフライが提供できなくなりますが、大丈夫ですか?」
「……もともと期間限定って言ってたし大丈夫だ。今季終了って言っとけばいいだろ。ところで、護衛はいるか?」
カイリさん! シロギスフライどころか食堂まで今季終了させる気か! それとも、シロギスフライを終了のお知らせを言いたくないのか?
「正直言って、王都まで危険があるのか、ないのかわかんないんですよねぇ」
そもそも俺は未だに魔物を見たことがない。あるとしたらシーサーペントだ。ドラッシェン様のご飯だけど。
「街道なら強い魔物に合うことは少ないが、正直言ってアタルもクランクさんもスピナも強そうには見えない。野盗が心配だな」
そういうのもいるのね。こまったなぁ、トラが虎になってくれたりしないかな?
『いやニャ』
考えてたこと分かったの?なにもしゃべってないんだけど。
クランクさんも下を向いている。野盗のリスクはあるようだ。
「ちなみにカイリさんが護衛についてきてくれるとして、ナミさんとナギちゃんはどうします?」
「家で留守番だろう。アタルのおかげで余裕はあるからな。護衛完了したら報酬を貰う形でいいぜ」
Cランクの冒険者なら、野盗程度には後れを取らないのかな?
「ちょっとナミさんとナギちゃん呼んできてもらえますか? 大丈夫そうならお願いしたいです」
確認してもらったのだが、ナミさんからは即オッケーが出た。ナギちゃんが心配するかなと思ったが「トラちゃんを守ってあげてね」と、許可が出た。トラが一番強いと思うんだけどな……
皆もカイリさんが護衛についてくれると安心できるということだったのでお願いした。
「それじゃあ明日の早朝王都へ出発ってことで! 皆は旅の準備を今日中に住ませてね。解散!」
第二回パーティー会議はいろんな人を巻き込み閉会した。