30.身体に元気な少年、その名もジャック
第一回パーティー会議は無事閉会した。
ほとんど俺が話していた気がするが、最初はこんなもんだろう。
将来的にはいろんな意見を出し合い、検討できる会議ができたら嬉しい
スピナさんを部屋に帰し、イスを食堂へ返し、カイリさんとナミさんにお礼を言って部屋に戻った。
ナミさんから二人分のお湯と布を受け取った、解散したのにまた呼ぶの気まずいな。
でも渡さないわけにはいかない、なぜなら俺はパーティーリーダー! ノックをし、スピナさんにお湯の使い方を説明した。多分知っていたのだろう、口を半分空けながら真剣に聞いていた。知っているなら知っていると教えて欲しい、変な気遣いはしなくて大丈夫なのに。下手すると俺の方がこの世界のことを知らないのだから……
『それにしても良くあんなこと考えつくニャ』
ん?パーティー会議のことか?
「会議はやるだろ?」
『いや、目標ニャ』
「あぁ、目標は大事なんだよ。スピナさんは聖魔法を使いたいだけの目標なら、多分どこかで挫折するだろう。今魔法が使えないってことは、かなり難しい状況なんだろ? そうなったら生きていけないと思う。この街へどういう経緯で流れてきたかわからないけど、まだなにか諦めきれなかった希望みたいなのがあったから、大陸の端まで来たんだと思う」
『そういうものかニャー? あれはアタルがいないと乗り越えられないニャ。アタルと会えたのが奇跡でスピナの最大の幸運ニャ』
心配してるならアドバイスするなり助けてくれればいいのにな! まったく猫は気まぐれでこまる。
食堂はまだにぎわっているが明日は朝市に行かなければならない、ちょっと早いが寝……魔力を動かす訓練をするか。
朝の鐘と共に起きて朝食を食べた。今日もおいしい、がんばるぞー!
朝市は冒険者ギルドよりも奥の広場でやっているらしい。何回か家の修理でこの広場は通ったが、朝市をやるための広場だったのかな?
本日の目標は、新たな食材の発掘だ! 豆を見るのはもちろん、香草とか何か新しい発見があればさらにラッキー。あと、今朝気が付いたがスピナさんは着替えがないっぽい。そして、アタルさんも着替えがない。ずっとクラフトできれいにしながら着ていたから考えたこともなかった。今まで誰も教えてくれなかったのはなんでなんだろう?怖いから考えないことにする。
「スピナさんも気になるものがあったら教えてね。これは先行投資です、遠慮はいりません」
「わ、わかりました」
完璧に遠慮しているな、全然わかってる感じがしない。
結構いろんな種類の食材があるな、ただ見たことないものが多い。あぁ、鑑定持ちになりたかった。困ったときはスピナさんを頼ろう。
ひとまず豆にターゲットを絞る。まーめまめまめまめまめまーめ♪
懐メロを口ずさんでいるいると、豆みたいなものが目に入った。
「お、大豆っぽいのあるじゃん」
「おんちゃんはダイズ知ってるのか?」
中学生くらいの少年から話しかけられた。おんちゃんとはまた反応しずらいな。にいちゃんのほうが良かったけど。っていうか、大豆はこっちの世界でも大豆なんだな。
「俺の故郷で食べてたんだけど、こっちで食べたことなかったから、知り合いに聞いたら朝市を勧められたんだ。これ大豆っていうのか?」
「そう、ダイズ。食べれるのに家畜の餌にされちゃうんだよ。ウチの村ではみんな食べてるよ。味気ないけど栄養が豊富なんだ。軟らかく煮て食べると病気が早く治るよ」
ダイズで間違いなさそうだ。栄養もあるっていうし、買っておこう。スピナさんにも食べてもらって早く健康な体を手に入れてもらおう。問題は宿の食事の他に食べれるかだ、小食だからな。
「じゃあ買おうかな。どれくらいある?」
「そこにある袋5つが大豆だよ。1袋銅貨3枚だよ」
「じゃあ全部ちょうだい」
「本当か! えっと、3枚、6枚……」
「銀貨1枚と銅貨5枚ね、ほら!」
ちょ、ちょっと待ってって言いながら少年は計算をしている、だます人とかいるのかな? ゆっくり計算をするがいい。しばらく待つと、計算が終わったのか袋を持ってきてくれた。
「ありがとう! 毎回残るから売れてよかったよ」
「そうか、ところで君の村はここから遠いのかい?」
「歩いて三刻くらいのところだよ」
そんなに遠くないな、俺なら往復一週間を一日で走れるからな! スピナさんがついてこれなくなるけど。
「村の名前教えて、気に入ったら買いに行くよ。こっちで買うより安くしてくれるだろ?」
「村の名前はハスン、もし村にくるんだったら家のダイズを買ってくれよ。もちろんおまけするよ!」
ダイズの袋を受け取りながら、「村に行ったとき忘れんなよー、知らんぷりしておまけしてくれなかったら泣いちゃうからなー」と、かるぐちを叩いて少年の露店を離れた。
ハスンにジャックね……覚えやすいようでややこしいな。