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20.流木ブーム到来!

「おいおい、とんでもねぇーな!」


「ほんと、規格外なんじゃないかしら?」


「アタルさん、すごーい!」


 カイリさん、ナミさん、ナミちゃんも外に出てきて、満足げに宿をながめている俺に声をかけてきた。


「スキルなら、これくらいできる人もいるんじゃないですか?」


「俺達も元Cランク冒険者だったから、少々のスキルでは驚かないつもりだったけどよ。アタルは規格外すぎるだろ! 壁どころかテーブルやイスの傷まで無くなったぞ? もしかして屋根まで変化してたりするか?」


 え? 宿を直したつもりだったけど全部? さすがに屋根は木じゃないから、直っていたりしないだろう。


「わからないです、今まで雨漏りがあったなら、なくなるかもしれませんね」


 マジかよ! みたいな顔をするカイリさん。


「家の中見てくるね!」


 といって駆けて行くナギちゃん。チェックはナギちゃんにお任せしよう。きっと全部屋確認してくれるだろう。


 俺も見える範囲を確認しながら食堂に戻った。

 宿は明るく白っぽい木材にリフォームされている、まさに劇的なんちゃらってやつだ。食堂は明るい木材に統一されたことにより清潔感と高級感を感じるな。きれいすぎて、汚れると目立ちそうだけど……そこはお掃除を頑張って貰うことにしよう。俺がいれば作り直すことができるし。


「宿がきれいになったから、まだしばらくは続けられることができそうだわ。修繕費のやりくりができなくて悩んでたのよ、アタルさんありがとう」


「そうだな! これは王都の宿にも負けないだろう。これで宿泊客が増えるといいな」


 宿なのに泊ってる客は俺だけ。夕飯時の食堂は繁盛しているようだけど、あれでは宿屋でなく飯屋だ。そりゃあやりくりはきついだろう。


「お役に立てて良かったですよ。しばらくこの街に滞在するので、辞めちゃったりしないでくださいよ」


 ペットと泊まれる宿は今のところここしか知らないのだ。


「わかってるよ! それじゃ今度こそ晩飯の仕込みにいくぜ」


 と、厨房に向かおうとするカイリさんを俺は引き止める。


「忙しいところすみません、今日タケダが大量に釣れたんですけど、買取りってできます?」


「アタルからだから買い取ってやりたいが、今日の食材は買ってしまったんだよ。明日以降余っていたら売ってくれ。その珍しい形のマジックバック、時間停止機能が付いているんだろ? それと、マジックバックは高額で取引されるから目立つ。あんまり外でポンポン物を出し入れするなよ!」


 そういって厨房へ戻っていってしまった。

 時間停止機能が付いているかはわからない……そしてやっぱりタケダって魚はいるのか。


「それでは、晩御飯まで部屋でゆっくりしてますね」


「はい、時間になったらナギを向かわせますね」


 ナミさんにそう言ってもらい自分の部屋に戻った。


「トラ、これに時間停止機能はついているのか?」


 背負ったマジックバックをトラに見せながら訪ねる。


「たぶんついていると思うニャ。トシオのマジックバックは高品質だったニャ」


「なら売りさばけなくても痛む心配はしなくていいか……」


 ほっと安心しているとトラが近寄ってきた。


「オイラのタケダを出してくれニャ」


 あぁそういえば、一匹トラにあげるって言ってたな。

 でも部屋で食べられると散らかったり臭いが残ったりしないか?


「部屋で食われると臭いとがなぁ……」


「大丈夫ニャ、マジックバックにオイラの皿があるから出してくれニャ。お腹ペコペコだったニャ」


 あぁ、やっぱり宿の食事では足りなかったのね? 生でもいいのか?

 マジックボックスの中を確認すると大きな平べったいものがある。何に使うかわからなかったけど、これはトラ状態の皿か、なるほどなるほど。


 皿の上にタケダを取り出す。


『タケダをクラフトで作り直すニャ』


 タケダを作り直すなんてヤバいな……あぁ、アニサキス的な生物が居なくなるのか? 刺身いけるじゃん。


 トラは元の虎状態になり、作り直したタケダを食べだす。虎が魚を食べているだけなんだけど、文字にするとヤバさが振り切れるな!





 ベイツの門から、人々がどんどん出ていく。

 この異常事態に、門番のタダンは冷や汗を流していた。


「いったいどうなっているんだ……」


 人々は皆、海岸の方へぞろぞろと歩いていく。

 最後尾に町長をみつけた。門番のタダンは仕事柄、ゴンとは面識がある。


「町長、これは一体……」


「あぁ、みんな流木を探してるんだ。あれがあれば家を直せる」


 え? 意味が分からない。

 流木なんて、あのおっさんくらいしか好きなやつはいなかったはずだ。しかもおっさんは、形が気に入ったとかなんとか言ってたはずだ! 本当に意味が分からない。


 お年寄りが街の外に出るなんて、今までは滅多になかった。海岸は門からも近く、見下ろせるのでそれなりの範囲を見渡すことができる。何かあった時はすぐ動けるように、タダンは気を引き締めるのであった。


 そしてこの日からベイツの街では、空前の流木採取ブームが起こったのだった。

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