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2.目印は腹巻

 言われてみれば、でかくなったトラか……

 俺は恐る恐る、トラと名乗るでかい虎の近くに近寄る。

 ジギングロッドは突き出したままで警戒は解いてはいない。


『警戒しなくても襲い掛かったりしないニャ』


「でかい肉食獣に無警戒で行く人間が、この世にいるわけないだろう」


『言葉が通じても?』


「そうだ!」


『ちょっとショックニャ、トシオはすぐ信じてくれたのに』


「じいちゃんは小さいことを気にしない人間だったからな、それより触っても噛まないか?」


『だから襲い掛かったりしないニャ、主は小さいことを気にしすぎなのニャ。』


 どこが小さいことだ! めんどくさい虎だなと思いながらも、警戒しながら俺は虎の毛を撫でる。

 なかなかの触り心地だ……見た目も大きいトラに見える。あ、トラと言えば。


「ちょっと立ち上がって貰える? 確認したいことがあるんだけど」


『オイラはオスにゃ』


「見たいのはそこじゃない!」


『しょうがないニャ~』とか言いながら、ゆっくり立ち上がる虎。


 立ち上がると俺の倍くらいの高さがある。どんだけでかいんだよ!

 そして思ったよりも洞窟の高さがあることがわかった。大きな虎が立ち上がれるくらいは高さがある。もしかしてこのサイズの動物がいっぱいいるのか? ここって地球じゃないんじゃね? それよりも……俺は突き出していたジギングロッドをおろした。


「トラで間違いなさそうだ」


『ようやく信じてもらえたニャ。なんか疲れたニャ』


 俺が見たかったのはトラのお腹。

 俺が飼っていた猫は、雑種のキジトラ。黒と白のトラ模様で胸からお腹にかけて白。そしてお腹には茶色と黒の縞模様があった。このお腹の部分が腹巻に見えるのがチャームポイントだった。


 トラは俺が高校時代、新聞配達のアルバイト中に拾った猫だ。ちなみにトラはもう死んでいる。祖父のトシオも同じく亡くなっている。トラは祖父のお通夜の時、一晩中祖父の布団の横で寝ていた。俺以外に懐く猫ではなかったので、珍しいこともあるなと家族で話していたのを今でも覚えている。


 次の日、祖父の横でトラも息を引き取っていることがわかった。


 大きさは全然違うけど見た目は同じだし、じいちゃんの名前も知っている。

 多分同じ猫だろう……しゃべってるけど。


「じいちゃんもトラも死んだはずなんだけど……。お墓も建てたし、お前を一緒に墓に入れれないか和尚さんに頼んでみたけどダメだった。だから墓石に猫の足跡を刻んだんだ。お前の体は同じお寺の動物用の区画に埋めたよ」


『オイラはその時に、トシオとこの世界に来たニャ』


「ってことは、ここは地球じゃない?」


『違うニャ。オイラは話せるし、魔法もある。この洞窟を明るくしたのも魔法ニャ!』


「猫が魔法を使える世界か……、あぶなくね?」


『オイラは特別ニャ! 種族的には猫ではない! というか、この世界に猫はいないニャ』


「……後で詳しく教えて。ということは、じいちゃんもいるんでしょ? 会わせて!」


 俺はじいちゃん子だった。母子家庭で父親がいなかったし、甘えさせてくれるじいちゃんが大好きだった。ちなみに釣りを教えてくれたのも、じいちゃんだ。

 残念ながら、じいちゃんには釣りの才能がなかったようだけど……ウキが沈んで上がってきてからようやく竿を上げる人だったからね。釣りは好きだったようだけど、とにかく向いていなかった。でも、仕掛けの作り方とか教えてくれたから、釣りの師匠と言ってもいい。


『ちょっとそれは難しいニャ』


 そういってちょっと悲しげな顔をするトラ……猫だからちょっと表情がわかりにくい。

 ちょっとっていうか、わからない。猫だもんね。


「そんな悲しそうな顔すんなよ! 残念だけど会えない理由を教えてくれ」


『オイラの表情がわかるなんてさすが主にゃ!』


 いや、わかんねーけど……あれだけ、残念そうな声されるとね……


『オイラでは説明が難しいからわかる人がいるところまで案内するニャ。そもそも、頼まれて迎えに来たんだったニャ』


「そうか、お願いするよ。一人で不安だったんだ。来てくれて助かったよ」


 そう言って、さらに洞窟の奥へ歩いていくトラ。

 明るくなったのはいいけど、タックルボックス持っていくの手伝ってくれませんかね?

 こっちは猫の手も借りたいんだけど……

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