第6項 ループ一周目のゴミカス
ループ一周目は、思ったようにはいかなかった。
俺はまず、前世の反省から、メイに優しくした。
とにかく優しくした。
無理な用事も頼まなかった。
前世のように裸で踊れなども言わなかったのだ。
重いものも持たせなかったし、ひどいことも言わなかった。
まぁ、領民への八つ当たりはやめなかったが、メイには関係のないことだ。
これが原因ではないだろう。
いや、でも、少しは手加減したのだ。
前なら、30人殺したところを、10人くらいに減らした。
殺し方も、斬殺から首吊りに変えた。
なぶり殺しもやめ、ひと思いに殺すことにした。
前は大好きだった、夫の前で慰み物にすることもやめたのだ。
我ながらに優しくなったと思う。
なのに、なのにだ!
メイは以前のような目で俺のことを見てくれない。
それどころか、5年ほどしたある日。
「あなたには呆れました。わたし、結婚します」と言って出て行ってしまった。
何なのだ、これは。
こんな結末のために悪魔と取引をした訳ではない。
俺は怒鳴る。
「悪魔よ、何なのだ、これは。やり直しだ! 俺を成人の日に戻せ」
目を開けると、またあの神殿のようなところにいた。
目の前にはリリスがいる。
俺は怒鳴る。
「なぁ、リリス。せっかく優しくしたのにうまく行かなかったぞ。どう責任とってくれる!!」
リリスは困った顔をした。
「はぁ、あなたは何故失敗したのか分からないのですか。ならば、周回特典です。地獄では余り物になっていた『良心』をあなたに与えましょう」
すると、また意識が暗転した。