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第20項 お支払いのお時間です

 

 銀貨10枚……。

 ツケ払いの支払い期限が近づいてきた。

 

 やばいぞ。


 無職の俺様は無敵なんだがな。

 連帯保証人メイがいるから、無敵化は避けたい。


 っていうか、親父ケチすぎだ。

 残りの20枚を出すなら、全部だしてくれっていうの。


 まぁ、自立を促す親心かもしれんけど。


 この歳になって、銀貨10枚くらいじゃ俺様の精神構造はどうにもならんだろ。そんな軟弱なクズ貴族ライフ送ってきてないし。



 とりあえず、俺様いくらもってるんだ?


 ……。

 サイドボードの上にあるブタの貯金箱を壊してみるか。


 すまん。幼馴染のブタさんよ。

 走馬灯のように、ずっとこの部屋にあったブタとの幼き日々の思い出がよぎる。


 雨の日も晴れの日も、お前はここで俺様を見守ってくれたな。


 ブタを持ち上げる。


 ……軽い。


 すまん、ぶたよ。生活苦で痩せてしまったか。


 少年時代の思い出、good-by。


 ガシャン!


 ……。


 銅貨4枚。

 どうやら、これが俺の今の全財産だ。


 まぁ、こいつに金入れた記憶ないもんな。

 都合よく忘れてるのかと思ってたが。

 まだうっかり物忘れさんになる心配はなさそうだ。


 

 さて。どうするか。


 偽金でもつくるか?

 うち領主だから、そういうベクトルでもなんとかなりそうな気もするが……。


 まぁ。


 無職、すなわち、職を持っていない俺様としては、支払う方法よりも。

 払えなかった時の防御手段について重点を置くべきだろう。


 それがクズらしい次善の策っていうやつだ。


 うーん……。


 八方塞がりの閉塞感の中、会議室(寝室)のドアがノックされる。



 トントン。


 「入れ」


 メイだ。

 まぁ、俺の部屋に来る物好きはメイくらいだが。

 


 「ルーク様。ルーク様。これ、知ってますか?」

 

 あなたいつも元気ね。


 メイは一枚のビラを見せてきた。


 なになに。

 メルドルフ司教国 観光パンフレットモデル募集。


 『メルドルフ司教国では、貴国からの観光誘致のため、パンフレットを作成することになりました。それに伴い、リューベック国民の方のモデルを募集します。是非、あなたの素敵な笑顔で、メルドルフ、リューベックの平和の架け橋になりませんか?』


 メイは不思議そうだ。


 ここは俺様の知性をアピールするチャンス。

 俺様は講釈を垂れる。

 

 「メルドルフ司教国は、アヴェルラーク大陸の南西に位置する宗教国家でな。レイア教の聖地があるんだ。前法王は保守的な考え方だったんだが、数年前に法王が変わってな。方針転換して観光で外貨を獲得したいのかもな。ある話だとは思う」

 

 ビラをさらに読んでみる。


 すると、募集条件に、男性は爵位をもつこと、女性は10代であること。また男女のペアであること、とある。


 ……よしっ!!

 ナイスあほなメルドルフ企画広報部。


 なんか世が世なら社会問題になってしまいそうな差別と偏見に満ちた条件だが、俺様には好都合だ。


 爵位待ち限定となれば、相当に人数が絞られるはずだし、相手が男爵くらいの下級貴族なら、大人の圧力で辞退してもらうことも可能だ。


 すると、メイが顔を覗き込んでくる。


 「ルーク様。ルーク様。なんだかニヤニヤして。また悪クズルいことを考えてるんですか?」


 おいおい。

 つっこむなら、

 悪いと言うか、ズルいと言うかハッキリしてくれ。


 なんか、俺専用の単語みたいなの作られても困るんだが……。


 あ?

 いまの、悪いとズルいの隙間にクズっていう言葉が混ざってなかったか?


 おい。

 メイ! おまえ!

 いま、ニヤッとしたろ?

 

 ……。


 ゴホン。こいつといると脱線しまくりで、話が進まんな。


 

 選考は面接にて行うらしい。


 賞金は1位銀貨10枚と、食材詰め合わせ。

 2位は銀貨5枚。


 メイは食材詰め合わせという言葉に瞳を輝かせている。

 俄然やる気が出たようで良かった。


 さて、ここからは、取り分の交渉だな。

 俺は自他共に認めるクズだ。


 相手がメイで、その不遇な境遇を知ったとしても、手加減はしない。


 「おい! メイよ。取り分は、俺様は銀貨。お前は食い物、それでいいな? 異論は認めん!!」


 よし、おれ。

 よくビシッと言い切った!!


 すまんな。メイ。

 

 これ以上スポンサー(父上)のご機嫌を損ねると、合法ニート生活が終わってしまうかもしれないからな。


 すると、メイは目をうるうるさせて。

 「本当にいいんですか? ルーク様。ありがとうございます。院の皆んなも喜ぶと思います!!」


 え?

 なんか喜んでるんですけど。

 おれ何か間違えた?


 

 賞金の欄をよーく見た。

 すると、認識可能ギリギリなサイズで。

 「食材詰め合わせは、毎月銀貨1枚相当(計12ヶ月分)の食材が届くものです」


 メイ。

 お前、目いいな……。


 食材の方が当たり報酬じゃないか。


 脳裏に、リョータ君や飴玉の子たちの顔が浮かぶ。


 『いくら俺様でも、現段階からの取り消しは厳しい……』


 ……見えないものは、無いのも同じ。


 いや、でも、一年分って銀貨12枚相当だよな。



 ビラとメイの顔を交互に見る。


 ハァ……。


 取り分交渉は、こうしてメイの勝利で決定したのだった。

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