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第18項 お約束の時間です

 孤児院の扉の少し横で。

 メイが差し出したティッシュを受け取る。


 俺が目をこすっていると、

 目の前がフワッと温かくなった。


 いい匂いがする。

 目をあけると、メイの胸が目の前にあった。


 俺の頭を抱え

 両手でギュッとしてくれている。


 温かい。

 ささくれだった気持ちが癒される……。


 メイは笑顔でいう。

 「……元気はでましたか?」


 子供達には分からなかったかもしれないが、

 魔法が使える俺には分かってしまう。


 メイの身体から魔力が溢れている。

 これは、精神を回復するスピリット•ヒール。

 

 俺様も実際に使える人には会ったことがない。

 侯爵の魔法などより遥かに格上の魔法。


 絵本とかに出てくる、

 勇者に勇気を与え奮い立たせる魔法だ。


 って、この話、子供の頃から疑問だったんだけど。


 勇気をもらわないと戦えない勇者って何なのよ。


 無限の勇気があなたの取り柄なのでは?

 

 存在意味なくね?


 俺ならアイデンティティ崩壊で死にたくなっちゃうわ。きっと。



 それに。


 スピリット•ヒール(まじレア)の使い手がそばにいるってことはね。



 俺様、もしかして実は勇者なんじゃないか?

 穀潰しなところも、勇者としての素質を感じるし。


 

 「悪役貴族の俺様は3度目のループで勇者になる」



 ……。


 ないわー……。


 今から頑張っても、世界に与えた損失以上に貢献できる気しねーもん。無職だし。


 プラマイマイナスの勇者とかなしでしょ。



 それにしても、なぜ……。

 メイが? そんな魔法を。

 いや、今はいいか。

 

 知ってしまったら、一緒に居られなくなってしまう気がして。怖いよ。



 色々考えてたら疲れた。

 

 まぁ、癒されついでだ。

 メイの胸に口を押し付けて、ハムッとしてみた。



 あれ。

 思ったより大きい?



 D?


 E?


 Fくらい?


 やばい。

 なんだか無意識に頭の中で英語のレッスンがはじまった。


 溢れんばかりの教養って罪だな。



 俺様がニヤニヤしていると、メイがバッと身体を放す。

 

 そして、無表情にウジ虫を見るような冷めた目で俺のことを見た。



 え。

 

 いま、2人の時間は良い感じだったんじゃないの?


 まじ、こいつの距離感わかんねーわ。


 いや、でも。


 ……可愛いし。

 

 その冷たい目線もたまらん。

 

 

 


 メイが来たからか。

 孤児院の中から、沢山の子供が出てくる。


 子供に纏わりつかれるメイ。

 俺だったら、うざったくて殴ってしまいそうだが。


 メイは楽しそうだ。

 きっと、メイにとっては兄弟同然なのだろう。


 子供達が俺様に気づいた。

 この高貴な俺様を崇め奉るがよい。

 

 ん?


 憧憬(しょうけい)の気持ちを抑えきれない子供が何か言っているぞ。


 なになに。

 「メイねーちゃん。あそこの薄毛のデブだれ? おねーちゃんのストーカー?」


 ちょ。

 いや、後半のは否定できないけど。

 

 初対面の人に薄毛とかいっちゃダメでしょう……。


 このクソガキ!!

 成敗してくれる。


 俺様はキャーキャー言って逃げる子供を追いかける。

 息切れが激しい。


 子供がインコースで俺を引き離しにかかる。

 俺様の緊急出力増強装置ニトロの使用限界は1回。

 限界を超えると、俺の心臓は止まる。


 子供のコースがふくらんだ。

 チャンスだ!!


 おれは渾身のニトロを噴射……。

 する前にメイに怒られた。

 

 メイが注意してくれることになった。

 「リョーくん。薄毛の人に本当のこと言っちゃダメですよ? 本当のこと言われると人は傷つくのです」


 おいおい。

 お前が一番俺を傷つけてるんだが?


 そんな俺の手を握ってくる女の子がいた。

 この子は……、ブローチを売っていた子だ。


 俺にも仲間がいたのか。

 嬉しい。


 おお。心のオアシスよ。

 俺様の心は、あなたのおかげで救われました。


 と、手を離そうとすると。

 ベチャ……。


 この子、舐めた飴玉ごと俺の手を握ってますよ。

 ひーっ。


 そんな俺の様子をメイは微笑んで見ている。


  

 あのね。

 今はあなたが思ってるような、ほんわかタイムじゃないのよ?

 

 俺様、意外に潔癖でさ。

 こういうの神経質なのよ……。


 タスケテ……。

 



 続けて、建物から恰幅のいい男性と、朗らかな女性がでてきた。


 メイのご両親かな。


 男性の方は頭の上がツルンッとしてるので間違いないと思う。


 トゥクン……。


 なにげに親近感を感じてる。

 そんな自分が悲しい。


 女性はシスターかな。

 きっと、2人が両親代わりということなのだろう。


 2人に深々とお辞儀をする。

 メイを育ててくれて、感謝しかない。


 この時代、親のいない赤子はほとんど亡くなっちゃうからね。


 そのあとメイと2人でピーマン畑を手伝った。


 

 なんか久しぶりに普通に過ごせたな。


 ここの子らは。

 ある意味、世間と断絶されてるから。

 

 おれの悪名を知らなくて、気持ちが楽になるわ。


 

 そんなことを思ってると。


 メイがシュルっと、髪留めのリボンをほどく。


 そして、おれの左薬指に蝶々結びした。


 「また一緒にきましょう。約束ですよ?」

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