第1項 ダメ貴族ルーク
俺の名はルーク。
リューベック公国が一翼。
クラム領を収めるクラム公爵家の次期当主だ。
まぁ、自分で言うのは何だが、クズだ。
異世界ファンタジー界を見渡しても、俺ほどのクズはいないと思う。
まず、何より卑屈だ。
目上の者には媚びへつらい、目下のものには尊大だ。
顔は悪い方ではないと思うんだが、暴飲暴食だからな。
もちろんメタボだ。
そして、人を人と思っていない。
正直、領民が死んでも何とも思わないし、むしろ楽しい。
先日は、ポーカーで負けた腹いせに30人ほど殺した。
死ぬ間際のあの声。
腹わたの裂ける音。
たまらない。
まぁ、民草なんて、どうせすぐ増えるしな。
どうでもいいことだ。
俺のような高貴な血の一滴と比べたら、何の価値もないゴミだろう。
そんな俺にも目の上のタンコブがいる。
それは、専属メイドのメイだ。
こいつは、何だか口うるさい。
顔が少しばかりいいからって増長してやがる。
前に、母上が亡くなった時に、俺がかわいそうだと泣いていた。
気高き俺様のために泣くなんて、上から目線で……、何様のつもりなんだ。
もしかしたら、俺の子を孕み、クラム侯爵家を乗っ取ろうとしているのかもしれない。
どいつもこいつも俺の顔色ばかり窺う。
俺様もクズだが、こいつも変わらんな。
ずっと昔からのよしみで俺様が寛容だったから、調子に乗りすぎだ。
ある日、シェフの手違いで、朝食に大嫌いなピーマンが出てきてな。
当然、ジェフは呼び出してその場で死刑。
ピーマンは床に投げ捨てたんだ。
メイに「これ掃除しとけ」というと、
メイは「ピーマンは残さないで欲しいです」と言いやがってな。
———あぁ、そうだった。メイの実家はピーマン農家だったな。
俺がメイの親父を「ピーマンなんぞ作って恥を知れ」と馬鹿にすると、
メイは「そればかりは、ルーク様でも許せません。取り消してください」なんて言いやがった。
流石に寛容な俺様もプチッと切れた。
その場で、メイに死を賜ってやったのだ。
まぁ、慰みものにしてから殺しても良かったんだがな。
付き合いが長すぎて、女として見れなくてな。
普通にサーベルで殺してやった。
なんか、最後に、涙を流しながら、俺のことをじっと見ていたな。
平民のくせに汚らわしい。
こっちみるなっつーの。
世の中のために、お前みたいなのは早く消えて正解だろう。
ああ、清々したわ。
目障りなゴミが1人消えてくれた。