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妖怪ダンジョン運営記録  作者: メグミ
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「そういうことだったんですか。納得です。」

俺の説明を聞いた女の子は特に疑うこともなくすんなりとなっとくしてくれた。

普通ならちょっとは疑うと思うんだけどな。

まあ、この子自体が存在を疑われるような立場である妖怪なのだからおかしくはないのか?

「では改めて自己紹介を。私は#鴇色由利__ときいろゆり__#と申します。気軽に由利と呼んでください。種族は座敷童です。得意なことは家事全般と手芸です。」

「俺は高橋拓斗だ。得意なことは...パッと思いつかないかな?とりあえず普通の高校生だと思ってくれれば大丈夫だと思う。」

「了解です。因みに、今後の予定とか決まってたりします?」

「とりあえず外の探索かな。ここがどういう場所なのか把握しないと方針を決められないし。因みに、戦ったりとかは大丈夫?」

「任せてください!」

由利は自信満々と言った感じで答える。

見た目が可愛い女の子だったから期待していなかったけど見た目によらないらしい。

「黒い悪魔が相手なら負けなしと言っても過言ではないぐらい強いですよ私!」

「そっかそっか。それはたのもし....。」

待てよ。

黒い悪魔ってなんか聞き覚えがあるような...。

「俺の勘違いじゃなければだけど、黒い悪魔って別名Gとか言われてたりしない?」

「言われてますね。ついでに1匹見つけたら100匹はいるとも言われてます。」

「そっか....。」

「Gだけじゃなくて蜘蛛やカメムシなんかの昆虫は大体対処できます!」

由利は明らかに落胆した様子の俺に対して自分がいかに有能であるかを必死にアピールしようとする。

確かに昆虫類は基本的に苦手だからめちゃくちゃ助かる。

でもそうじゃないんだ。

「クマとかオオカミはどう?」

「対処できるわけないじゃないですか。私は座敷童ですよ?」

「デスヨネー。」

人は見た目によらないとか思ったけどあれは撤回する。

人はほぼ100%見た目通りだ。

由利は人じゃなくて妖怪だけど。

「戦闘が得意な種族なら心当たりがあるので紹介しましょうか?」

「そうしてくれるとありがたいかな。」

適当に魔物を召喚するよりもちゃんと指定をしたほうが結果的にポイントの消費も少なくなるだろう。

俺はあまり魔物の類には詳しくないからその辺りに詳しいのはとても助かる。

俺は由利に教えてもらった種族名を本に書く。

その名はがしゃ髑髏。

如何にも日本っぽい名前に髑髏と入っているぐらいだから骨が関係している妖怪かなと言う予想は出来るがそれ以外は全く予想がつかない。

因みに、消費ポイントは20ポイントと由利を召喚した時の半分以下だ。

がしゃ髑髏の消費ポイントが少ないのか。

それとも座敷童である由利が割高だったのか。

今のところは割高だったに一票かな?

そんなことを考えている間に由利を召喚した時と同様に魔法陣が出現し、光を放ち始める。

そして光が収まると、そこには天井ギリギリの大きさがある巨大な骸骨がいた。

こいつががしゃ髑髏なのか?

がしゃ髑髏は周りをグルっと見渡してから最終的に俺に視線を向ける。

....何これ怖すぎるんですけど?

理科室にある骸骨みたいなやつを想定していたのに3メートルを超える大きさとか予想外すぎる。

「おー、やっぱり貴女が召喚されましたか。久しぶりです。」

由利の声に反応してがしゃ髑髏は俺から視線を外して由利の方を見た。

そしてがしゃ髑髏はカタカタと骨を鳴らし始める。

「だ、大丈夫なの?なんか威嚇されてるみたいだけど?」

「大丈夫ですよ。彼女は威嚇しているのではなくて、私に会えて喜んでるんですよ。」

由利は「なんでわからないんですか。」とでも言いたげな表情で教えてくれる。

しかし、改めて観察してみてもまったくそうには見えない。

「そ、そうなんだ。とりあえず知り合いみたいだし、今がどういう状況で何で召喚されたのか代わりに説明してあげて。その間に俺は今後の予定を細かく詰めておくから。」

そう言い残して俺はがしゃ髑髏と由利から少し距離を取った。

予定を詰めるというのは建前。

正直に言えば少しでもがしゃ髑髏から距離を取りたかったのだ。

本には忠実な魔物を召喚すると書いてあった。

それに由利と知り合いらしいし、意思の疎通もできているようだから外に出た時に出会ったオオカミやクマよりは安全な存在であることは分かっている。

しかし、その安全であるという事実を覆すほどにがしゃ髑髏から恐怖を感じてしまっているのだ。

オオカミやクマのように直接的に殺されると言った恐怖ではない。

見てはいけないものを見た時のような忌避感とでも言えばいいのだろうか?

見た目の問題のあるのだろうけど、それだけではない気がする。

まあ、いくら考えても仕方ない。

今は建前とはいえ言ってしまったから今後の予定でも考えてみようかな。

とりあえず、外が継続的に探索するのは危険な場所だった場合の事を考えよう。

その場合は食べ物や水をポイントで出すことになる。

それに合わせていつまでも引きこもっているわけにもいかないので、戦力の拡充のためにもポイントを裂かないといけない。

現状残っている409ポイントで何とかなるのか?

俺は本で1週間分の食事と水の消費ポイントを調べる。

結果は約50ポイント。

そういえば由利は食べ物を食べるのだろうか?

食事が必要なら1週間生活するだけで2割以上のポイントを消費することになる。

もしかしてダンジョン経営って思ったよりも厳しい?

「説明終わりました!」

俺が色々と考えている間に終わったようで、由利がこちらに近づいてきた。

勿論がしゃ髑髏も一緒だ。

ん?

此方に向かってくるがしゃ髑髏を見てふと違和感を感じた。

大きな骸骨が動く様子は相変わらず恐怖感を感じるが、なんか雰囲気がさっきよりも柔らかくなっている?

「ドクロンが貴方と直接話したいそうなのでノートとペンを出してあげてください。」

ド、ドクロン?

多分がしゃ髑髏の愛称なんだろうけどまったく見た目に合ってない。

「どうしたんですか?」

「何でもない。ノートとペンね。すぐに出すよ。」

俺は由利に言われた通りノートとペンをだした。

因みに消費ポイントは1ポイントだった。

「ど、どうぞ。」

恐る恐るそれを差し出すと、がしゃ髑髏はぺこりと頭を下げてそれを受け取った。

なんか、頭を下げる巨大な骸骨ってシュールな光景だな。

と言うか、何も考えずに普通の大きさの物を渡しちゃったけど大丈夫だろうか?

少し心配になったがそれは杞憂だったようで、がしゃ髑髏は大きな手で器用にペンを操って何かを書き始める。

そして、書き終わったものを俺に手渡してきた。

『先ほどは申し訳ない。人間と接するのは久しぶりだから邪気を抑えるのを忘れていた。既に聞いていると思うけど私はがしゃ髑髏。単刀直入に言う。ダンジョン経営についてだが、由利がやる気だから協力するのもやぶさかじゃない。ただし、由利を傷つけるような真似をすれば私は容赦するつもりはない。召喚主に逆らえないと思っているのならそれは大きな間違い。自分の存在が消えても良いのであれば召喚主に一矢報いることぐらいできる。そして、由利は私にとって自分の存在を賭けるほどの価値がある。』

お、おう。

チラリとがしゃ髑髏に目を向けると、それに気づいて『どうする?』とでも言いたげな様子で首を傾けてきた。

「不当な扱いをするつもりはないから安心してほしい。だから力を貸してください。」

がしゃ髑髏は俺の答えを聞いて満足げに頷く。

元々不当な扱いをするつもりはなかったけど。尚更気を付けないとな。

「話は纏まったみたいですね!ちなみに、ドクロンはなんて書いたんですか?」

話が終わったのを見計らって由利がノートを覗き見ようと覗きこもうとしたが、直前でがしゃ髑髏が俺からノートを奪い取る。

どうやら由利には見られたくないらしい。

まあ、『私にとって自分の存在を賭けるほどの価値がある。』なんて、とらえ方によっては告白ともとれる内容だしその気持ちは分からんでもない。

と言うか、がしゃ髑髏って性別はどっちなんだろう?

骸骨だから見た目で判断できないし、ノートに書かれた口調もどちらともとれるような感じだった。

本人(?)に聞いてみるか?

でも性別を聞くのは失礼だし...。

何て、どうでもよいことを考えている間にも由利とがしゃ髑髏のやり取りは終わったようで、最終的にがしゃ髑髏が問題のページだけを黒っぽい炎で燃やして証拠を隠滅することで幕を閉じたようだった。

何もない場所から炎を出したようにみえたし、その上他のページに燃え移る様子もない。

流石は妖怪。

不思議なことを軽々とやってのけるな。

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