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神の助け

川本孝司は夢を見ていた。


宇宙船からの記録と記憶のデータベースへのバックアップ更新の時間は、故郷の日本、東京の現在時刻、午前零時に設定していた。


火星の重力圏による宇宙船墜落は、東京時間では午後5時33分。

最終のバックアップから、17時間33分後。


加茂山淳に委託されていた新しい躯体、新しい人工頭脳への川本の記憶の復元には、墜落当日の午前零時のものが使用される。

当然だか、墜落当日の約17時間分の記憶も記録も失われる。


墜落を前提としていたわけではないが、バックアップの都合上、多少のロスは覚悟されていたはずだと、淳も考えている。


墜落の瞬間は、まだ意識はあった。

火星は大気が希薄であり、主な成分は二酸化炭素なので船体の発火はないものの、落下中の大気との摩擦熱によって、宇宙船内の機器は発火ないしは熱溶解が始まっていた。

地上への衝突時には、ほぼ全員の意識は消失していたし、ほぼ心肺機能も停止状態だったと思われる。


川本孝司は夢を見ている。


窓の外は宇宙。

船体が回転しているのか、時折、火星の褐色の大地が見える。


他の乗組員はいない。


そこへ、眩ゆく、光の塊が降りてくる。

意識にはそう映るが、実際には、熱く沸る船内の中心から、光が膨らんでいる。


光が充満すると、川本の意識は、緑の庭園を認識する。

3人の神々しき姿を見る。


川本は「転生もの」の鉄板のネタだなと、死亡に向かっていた直前の景色も忘れ、ほんのすこし口角があがる。


「川本!」

聞き覚えのある声に期待を裏切られ、川本はちょっとだけ残念な気持ちになるが、すぐに、加茂山淳に会えるという喜びで心が満たされていく。


光は収まる。

3人の神々しき姿は、1人の姿に収束してくる。

完全に消える前、川本の姿だけになってしまう前に、声ならぬ声で、聞こえた。

「生きなさい。皆とともに。」


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