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第7話 ソロ探索

 あれから一週間の時が過ぎた。

 俺は最低限の魔法を創造し、近場の森林を訪れている。

 ここは主にゴブリンが出現する森だ。

 レベル1の時は複数のゴブリンの個体、または、ワイルドウルフなどの魔物が現れたら死ぬ恐れがあった為、訪れる事ができなかった場所だ。


 最も、今もまだレベル1であるが。


 この森は薬草の質も高く、薬草以外にも満月草、臨月草、風砂草など高く売れる植物も多い。

 ここで探索と魔物の討伐ができれば冒険者として人並みの生活ができる。

 冒険者たちがレベルを上げて最初に挑戦する森であり、俺にとっては一種の憧れの森だった。


「おっ、これは……」


 早速、満月草を見つける。

 麻痺を回復できる他、錬金術にも利用できる。

 幸先がいい――と、その時。


「グギャグギャギャ」


 というゴブリン特有の鳴き声を聞く。


 3体のゴブリンが醜悪な表情を浮かべながら、森の中を我が物顔で闊歩していた。

 手に棍棒を持ち、何か獲物でも探しているのだろう。

 

 前に、冒険者に成り立ての頃に複数体のゴブリンに挑み、半殺しの目にあったことがある。

 ゴブリンは加虐心が強く、自分より弱いものはなぶり殺そうとする。

 俺のことをなぶろうと油断した所を、命からがら逃げ出した。

 いつまで経ってもレベル1のままの自分に憤懣やるかたなさを感じ、半ば自暴自棄で挑んだ結果だった。

 ゴブリンに半殺しにされたとギルドでしばらくの間、笑いものにされるというおまけ付きだった。


 いわばこれはリベンジ戦だ。


『魔力強化! それに――ファイアランス!』


 俺は同時に3つの火の槍を出現させる。

 創造魔法にはスクロールに書かれていない利点がまだあった。

 無詠唱と多重発動だ。

 創造魔法で創造された魔法はすべて無詠唱で発動でき、魔力の続く限り多重発動も可能だった。


「いっけぇーーー!」

 

 ファイアランスは同時にゴブリンに向かって放たれる。

 勢いよくゴブリンの体を貫くと、その体が燃え上がる。


「グギャーーーー!!」


 ゴブリンは断末魔上げながらそのまま次々と地面に倒れていく。


「……殺ったのか?」


 辺りには肉の焼ける嫌な匂いが漂っている。

 火力は十分だった。

 だが絶命させるには時間が足りてない気もする。

 ゴブリンに近づいて確かめる。

 うん、息をしていない。


「よし、やった!」


 俺は誰もいない森で人知れずガッツポーズをする。


 魔石と討伐証明の為、ゴブリンの耳を剥ぎ取り、また探索を再開する。


 上等な薬草を採取し、またゴブリンを数体討伐した後のことだった。


「じゃあ、もう少しで暗くなるからそろそろ帰るかな」


 背伸びし、帰路につこうと森の中で踵を返した時の事。

 強力な魔物の気配を察知する。

 距離は――まだ十分ある。

 俺は帰路に向かって森を走り出す。


 今回森を探索するにあたって俺が創造した魔法は――

 攻撃用の火魔法、怪我を負った時用の治癒魔法、魔力強化魔法、そして――探索魔法だった。

 

 俺はまだ冒険者を初めて1年くらいだが、低級の魔物が出現するエリアであっても稀に強力な魔物が現れて、全滅の憂き目にあう最悪の事態ことがあることを知っている。

 今回はよりにも最悪の事態の一歩手前を引いたらしい。

 だが気配察知さえ怠らなければ安全に探索ができることを意味している。


「はあはあ、もう十分だな」


 魔物が気配探知に引っかからないくらいに離れられた。

 気配だけでは分からなかったが一体何の魔物だったんだろうか?

 戻ったらそれとなくギルド員さんに伝えておこう。


 ゴブリン数体に上等な薬草に他にも満月草など。

 今日は久しぶりにご馳走を買って帰られそうだ。

 家族の喜ぶ姿が頭に浮かぶ。

 帰路を歩く足は心なしか弾むような足取りとなった。


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