53.フリーウェイのエルマ
気分が乗らないときは、バイクにかぎる。
風を切って走るのは、やはり気分がいい。
市街の外周をぐるりとめぐる高速道路が無料なので、気軽に走ることができる。
もちろん違反で捕まるわけにはいかないので、速度制限は守るのだが。だって警察のお世話になって、罰金なんて払うの嫌だし。
とはいえバイクの電気代は、もちろん別だ。
「ここは一発、チャージャーの容量を増やしたいところだな」
バッテリーの残量が少なくなってきたので、インターを下る。
高速を下りたところから、すぐ脇にあるスタンドにバイクを止めて、給電タイムだ。
ついでに俺も燃料を補充しとこう。
行き先は、スタンドの横にあるファーストフードの店だ。そこでホットドックなんぞを買ってみる。
「むぐ。うむ、うむ……いまいち」
ベンチに座って、温めすぎてパサついたホットドッグを齧る。
バイクの充電が完了するまでの時間を潰すついでに、軽く休憩をとることにした。
「うーむ。まずはローンを終わらせてからかなあ」
端末でバイクのパーツカタログを眺めながら、ふとぼやく。
なんと言っても、まずは先立つものがないと話にならない。
この前の一件でがっぽり手に入れた結晶も、まだケインズのところに預けたままだし、あれを換金しないことには自由になる金が少ない。
管理局で結晶を換金すればいいわけだが、それにはひとつだけ問題があった。
俺は一応、ジョンジーの事務所に所属している。
なので、管理局で金を受け取ると、すべて筒抜けになってしまうのだ。
そんでもってあいつ、銭金のことだけはやたらと鼻が利くもんだから、俺がしこたま金を持ってると察するなり、すぐさま飛びついてくる。
んでもって『そろそろ事務所の家賃の支払いだなあ』とか『今月は共益費があってだな』だの『税金の支払いをしないといけなくってさぁ』などと、なんやかやと理由をつけて俺から金をふんだくっていきやがる。
そういうわけで俺の経済状況は、いつのまにやら素寒貧なのであった。ついこないだまでミララメラとつるんでいた間は、結構な稼ぎがあったはずなのだがな。
そういうわけで、だ。
今度ばかりは、俺の収入を守らなければならない。
「うーむ。オセロットに知られずに、なんとか現金化する方法でもないものか」
どうにかして、やつの監視の目から逃れる方法はないものだろうかと思案する。
いっそ知り合いのハンターに頼むとかはどうだろうか。
まあ、それはそれで問題がありそうである。
なにしろ頼み事でもしようものなら、俺の身柄まで要求しかねない連中なのだから。なんだって俺をそんなに手元に置いておきたがるのか、理解に苦しむ。
例えばだが、その状況を受け入れてジョンジーを見限って、他のハンターと組むとしよう。
そんな選択肢もあるとはいえ、それはそれで不義理がすぎるというものだ。
どっちつかずの気持ちだけが、俺の中でフラフラしてる。
結局、良い考えなどすぐに思いつくはずもなかった。
「あー、いいなあ。このバッテリーほしいなあ」
思わずこぼれる非生産的なつぶやき。
充電スタンドの横のベンチに寝転がって、ホットドッグの切れ端を口にねじ込んだとき、ふいに暖かい空気が頭上から吹きつけてきた。
「ん……?」
「こんにちは、市民」
「あっぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢゃ!!」
熱気を避けてベンチから転がり落ちる。
すると、逃げた俺を追って、浮遊するエルマがスウッと空中を移動してきた。
「個体識別。ファング、確認」
「わかったわかった!! こっちにくるな」
わずかに離れた位置を手で示す。
「ここだ。あっちに降下しろ。下りてこい」
シューッ、と両手のジェットを噴射しつつ、エルマが着地した。
「誘導に感謝」
なにが感謝だ、このロボット娘は。
こっちは、あやうく蒸し焼きにされるところだったんだぞ。
俺のこと暗殺でもしにきやがったのか。
「おまえ、どっか壊れてるんじゃねえのか」
「自己診断による問題点の検知不能」
「そうかよ。んで、何してんだ。こんなところで」
「社長からファングにメッセージが届いています」
「ジェシカから?」
いったいなんの連絡だろうか。
「わかった。読み上げてくれ」
「先日のレッドウッドパークの件にて、ご相談したいことがあります。以上」
なんだよ、ご相談って。
そんなにあらたまって伝えるようなことでも、あるってのか。
「相談の内容ってのは、なんだ」
「数量的な情報と推測」
「数量的な情報……?」
数字の話とだけ言われても、さっぱりわからん。
いや待て。
もしかすると、だ。
公園の件ってことから、察するにだ。
あのとき倒した牙獣の数についての話、ということなのだろうか。
すると、たくさん倒したから分け前をくれるとか。
報酬の分け前とか、そういうあれだ。
俺だって公園内でましろを探しているときに、わりといっぱい牙獣を倒している。もしかすると、その分を上乗せして貰えるとかだってあるかも。
つまり、つまり、だ。
金の話、ってことか。
願ってもないタイミングで、いい話が来た。
棚からぼたモチってやつか。この世界に、ぼたモチなんてあるかは知らんが。
とにかくこれはもう、さっそく行かねばなるまいて。
「いやぁ、そういうことかよ」
エルマの肩をぽんぽんとたたく。
「そういうことなら、はやく言えよなあ」
「判断不能」
「言わなくてもわかるぜ。で、振込先でも教えりゃいいのか。いや待て。入金履歴が残ると困るから、現金払いで頼むぜ。現金払い」
「社屋まで同行を要請」
「おう。わかったわかった。出社でもなんでもしてやるぜ」
上機嫌で頷いてから、バイクのバッテリーを確認する。
うまいことに、ちょうど充電は満タンになっていた。
すぐさまメットを被り、バイクに跨る。
「おっしゃ。行くぞ、エルマ」
「了解」
「あと、俺の真上を飛ぶなよ。わかったな」
「飛行ルート変更の権限提示を要求」
「ねえよ。そんなもん。っていうか俺が焼けたり、移動中にバイクで事故ったら、おまえの任務は失敗だ。わかるな」
AIのロジックに打ち勝つため、辛抱強く説得を試みる。
「了解。個体名ファングを飛行機動時の回避対象に設定」
抑揚のないエルマの声は、どうにか納得できるものだった。
っていうか今までは、どういう設定だったんだよ。
まさか、俺にぶち当たるように教育でもされているんじゃないないだろうな、こいつのAI。
その件についても、ついでに社長さんと話しておくとするか。
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一人称の練習で書いています。
読みにくい部分が多く、たいへん申し訳ありません。
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