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ブラッドファング  作者: ことりピヨネ
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N.どこをほっつき歩いているのかわからないファング

 まったく冗談じゃありませんわ。


「ああああああああああああああああああああああああああああ、もう!!」


 六体の牙獣に追われながら、私、思わずはしたない大声を出してしまいましたわ。


 横に並んで走るオセロット。

 すべて、こいつのせいなのですわよ。


「いやぁ。悪い悪い。ヘッへへ」


 笑うな。


「なんで、あんたは毎度毎度、余計なことばかりするの!」

「いやだって、まとめてやったほうがラクじゃね?」


 そのあげく、このざまですわ。


 アマンダの待つ合流地点まで、牙獣をおびき寄せようというところまではよかったのですが、こいつが何もかもメチャクチャにしやがりまくったのでございますわよ。


「おびき寄せようって話をしてたのに、何が『撃てば気づくんじゃね』よ!!」

「いや、だってさ」

「だって、だって、だって、だって、だって、だって……あんたは、いつもそう!」


 ここぞとばかりに、元相棒に鬱憤をぶつけてやりましたわ。


「いつもいつもいつもいつも……その場の思いつきで、ひっかきまわして」

「そんなにいつもじゃねえってば」


 こんな状況でなんだって、ヘラヘラ笑っていられるのか理解に苦しみますわ。


「っていうかさ。コンビ解消してから、おまえ口悪くなってね?」

「お黙り」

「前みたいにさ、ナントカですわとか言ってるほうが……おっと」


 牙獣の攻撃が、オセロットの耳の横をかすめていきましたの。惜しい。


 っていうか、あいつらちょっと近づきすぎじゃありませんこと。


「ちょっと減らすか」

「はいはい」


 オセロットが銃を抜いたので、私も銃を抜きましたの。なんでしたっけ、この銃のお名前。STなんとかマーロダー。高いやつ。


 面倒でしたので、前を向いたまま肩越しに二、三発ほど適当に撃ってやりましたわ。


 私がけん制の射撃を行うと、合図もしてないのにオセロットのやつはタイミングを重ねてきやがりましたわ。


「ないすぅ!!」


 ひと声放ってくるりと旋回すると、数発の連射で牙獣を一匹しとめましたの。


 あいかわらず、こういうところの呼吸をあわせるのだけは上手で、まったく腹が立ちますわね。


 でもまあ、正直に言うと私だって、コンビを解消したくてしたわけじゃないんですのよ。あの子の件さえなければ。


 そもそも半年前ぐらいだったかしら―――。


 ある日、突然オセロットのやつが、事務所に若い男の子を連れてきましたの。


「おい。ペギー。こいつ、うちで働いてもらうことにしたから」


 なんか頼りない感じの少年、というのが第一印象でしたわ。そのあと試しに銃を撃たせてみもろくに当たらないし、なんかこりゃダメだわって感じでしたのよ。


「却下!!」

「んじゃ、どーしろってんだよ。ウチにはタダ飯食らいなんか置いとく余裕ねーんだぞ」

「だったら働かせればいいじゃありませんの」


 というわけで、その子は隣のダイナーでアルバイトすることになりましたわ。


 めでたしめでたし。

 と、思っていたら十日だか二週間ぐらいしたところで、オセロットがまた私にこう言いましたの。


「おい。ペギー。こいつ、うちで働いてもらうことにしたから」


 ちょっとちょっと。

 こないだダメって言ったばかりなのに、なんでまた同じことするんですの。


 もしかして、私が覚えていないと思っていらっしゃる?

 いくら私が忘れっぽいからって、そりゃあんまりじゃありませんこと。


「ふざけるのはおよしになってほしいですわぁーっ!!」

「いきなりキレんな。ハイソかぶれのパチモンお嬢様がよ」

「なんですってー!」


 とまあ、そこからは売り言葉に買い言葉というやつでして。


 普段からオセロットの素行のせいでたまっていった鬱憤もございましてね。

 私、とうとう言ってやることにいたしましたの。


「こうなったら、コンビ解消ですわ!!」

「しょうがねえなあ。んじゃ、そうすっか」

「……は?」


 思わず目が丸くなりましたわ。


 私には、ここまで言えばわかってもらえるだろう、という思いが少なからずあったわけでございますのよ。


 それなのに、長年の相棒をあっさりと切り捨てやがりましたわ、こいつ。

 ついこないだ拾ってきたばかりの男の子一人のために。


 まったくありえませんわ。くやしくて地団駄を踏んでワルツでも踊ってしまいそうな気分ですわよ。


「んじゃ、コンビ解消ってことで」

「ちょっ……」


 そこで、オセロットの脇にいた男の子が口を開きましたの。


「おいおい。待てよ、オセロット。たしかにペギーは腕が立つけど、他はからきしなんだぜ。あんまり冷たくするなよ」


 なんか、私のほうが面倒なやつみたいに言われましたわ。


 たしかにこの二週間ほど、この子にはいくらか世話を焼いてもらいましたけど。


 でも、それだってたいしたことじゃありませんでしたわ。

 お紅茶をこぼしたあとの掃除とか、洗濯物を洗わせたりとか、壁に頭をぶつけたから絆創膏を貼ってもらったとか、散らかった部屋の掃除をさせたりとか、管理局に届ける書類の書き方がわからないから書くのを手伝ってもらったとか、部屋に虫が出たから退治してもらったとか、絨毯に足をひっかけて転んだから助け起こしてもらったとか、シャワーのお湯が出ないから修理してもらったとか、夜中に目が覚めてしまったからホットミルクを作らせたとか、クッキーを買いに行かせたとか、爪を切ってヤスリをかけてもらったとか、破れた服を繕ってもらったとか、怖い映画を見て夜一人で眠れなくなったから添い寝してもらったとか、ほんとにその程度ですのよ。


 それなのに、この子ったら恩着せがましい言い方をするじゃありませんの。


「考え直せよ、オセロット。ペギーを一人でなんて、ほっとけないだろ。危なっかしいしさ」

「でも、こいつ、一回言い出したら聞かねえしな」

「もう結構ですわ!!」


 そういうわけで私、オセロットとはコンビ解消。

 晴れて事務所から出ていくことになりましたわ。


 とはいえ、別にまったく困ったりなんかしませんのよ。

 車に乗って銃を撃って、牙獣を狩って稼ぐだけ。これまでと、まったく変わらない日常を送るだけですわ。


 新しい生活が数日ほど続いた、ある日のこと―――。


「あら……?」


 先週、支払ったばかりのローンの請求書がまた来ていたのですわ。


 請求書の送り主は銃砲店。

 去年、オセロットと二人で銃を新調したときに使ったお店ですわ。


 そのときの私は銃器の種類に詳しくなかったので、オセロットに選んでもらいましたの。

 まあ私からしてみれば、銃なんて適当にトリガーを引けば絶対当たるものなので。どれを使ったって同じことですわ。


 そしたらあいつ、やたら高い銃を人に買わせやがったんですのよ。

 それも、自分で買った銃の十倍ぐらいの値段のやつを。まったく油断も隙もありませんわ。


「思い出したら、ムシャクシャしてきましたわっ……!!」


 そのとき怒った勢いでソファを蹴った爪先が痛くて、しばらくのたうちまわってから、私お電話で請求書がダブって来ているとお店に伝えましたの。


「確認いたしましたが、今月の支払いは未納となっております。銀行の口座を確認してみてはいかがですか」


 事務的な返事を聞いて、イラッと来たのですがそこは私も大人ですから。


 と、銀行の口座を確認したらビックリ。

 残高が減っておりませんでしたわ。


 いったいこれは、どういうことなのでしょう。

 いくら私にうっかりしたところがあると言っても、お金のことはそうそう間違えたりしないはずですわ。たぶん。


 とはいえ、支払ったはずだけどお金が減っていないのは、わけがわかりませんの。お金が減っていないのだから、やっぱり払っていないということになり、頭がゴチャゴチャしてきましたわ。


「ああもう! 何もかもオセロットのせいですわっ……!」


 ソファを蹴ってのたうち回ったあと、私は復讐を決意しましたの。


 復讐の相手は、もちろんオセロットですわ。

 そして、ターゲットは―――ファングという、あの少年。


 あの子をオセロットから奪ったら、さぞかし胸のすく思いがすることでしょう。


 そういうわけで髪も口調も服装も変え、大人の魅力であの子をメロメロにしてやる計画を立てたのですわ。


「―――なのに、もう!! どこに行ってるのよ、あのぼうや!」

「おいおい。ペギー、そろそろだぜ」


 オセロットが親指で頭上を示しましたの。


 いろいろ思い出しながら走っているうちに、待機しているアマンダの狙撃位置まで近づいたようですわ。


「やるぜ!!」

「はいはい」


 あいかわらず威勢だけはいいオセロットのかけ声に、あくびが出そうですわ。


 ステップを踏んで、二人で同時にUターン。

 左右に分かれて疾走しながら、先頭の牙獣に私が二発、オセロットが三発。


 そいつはあっけなく、黒い塵に変わってしまいましたの。


「よし一匹!」


 オセロットが喜んでいる間に、高所からの狙撃が牙獣を貫く―――アマンダが一匹。


 残りは三匹。

 馬に乗った人間を模した、その姿めがけてトリガーを三度、ゆっくりと引きましたの。タン、タン、タンッと、肩胴足の三ヶ所を狙うと牙獣は左手の盾で弾丸を防いだ。


 防御姿勢をとった牙獣の背後から、オセロットが躊躇なく撃った。きたない。


「残り二匹だぞ!!」

「いちいち数えなくてもわかるわよ!」


 そのうちの一匹が繰り出してくる牙から、地面を転がって逃げつつ、オセロットに怒鳴り返してやりましたわ。


 と、そこでオセロットを追っていた牙獣が、狙撃を受けて倒されましたの。


「こっちもー!」

「うひゃひゃひゃひゃひゃ。走れ、走れ」


 必死で逃げてる私を見て、オセロットのやつがバカ笑いしてやがってますわ。


 バキュッ……!!


 オセロットの足元で、アスファルトがはじけましたの。


「うおっ。何しやがんだテメー!!」


 頭上の狙撃手に怒鳴るオセロット。そのまま脳味噌をぶちまければよかったのに。


「っていうか、サボってないでこっちを援護しなさいよ」

「わかったよ、わかった」


 催促すると、ようやくオセロットのやつが私を追ってくる牙獣に銃を向けましたわ。


 牽制の数発で騎馬の動きが止まったところ、私がとどめを―――アマンダに譲ってやることにしましたの。誰ですの、目の前で獲物をかっ攫われたとか言ってるのは。


「あーあ。あいつに三匹も持ってかれちゃったじゃん。ダッセェの」

「たかが牙獣の一匹や二匹で、ガタガタ言わないでほしいですわ」

「お、それそれ」


 オセロットの顔に、にまぁと満面の笑み。


「やっぱり、そのナントカですわのほうが、おまえらしいぜ」

「お黙り、山猫」

「ヘヘッ。ファングぼうやが独りでやっていけるようになったら、ヨリを戻すか」

「で? 肝心のぼうやはどこなのさ」

「さあねえ」


 まったく、どこをほっつき歩いているんだか。


「まあ、このパターンだと死んでないことだけは間違いないな」

「なにそれ?」

「言わなくてもわかるって、信じてるぜ。相棒、じゃなくて元相棒か」


 さっぱりわかりませんわ。


 まあ、前からオセロットのお脳の調子がよろしくないとは、わかっていますけど。

 ファングぼうやと組むようになってから、悪化の一途をたどってることだけは間違いありませんわね。


 ―――と、そこで遠くからパトカーのサイレンが響いてきましたの。


「みつかると厄介そうだね。ズラかるよ、オセロット……ん?」


 数メートル先を走る後ろ姿が見えましたわ。


「こっちだ、ペギー!! さっさとしねえと置いてくぞ!」

「待ちなさいよ……ったく」


 ほんと逃げ足だけは速くて困りますわ。


 相棒、じゃなくて元相棒を追って、全力ダッシュですの。


 まったく、これだから。

 追いかけるほうの身にもなってほしいですわね。


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 一人称の練習で書いています。

 読みにくい部分が多く、たいへん申し訳ありません。

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・校正をなさってくださる方へ

 お手数ですが、ご指摘等をなさっていただく際には、下記の例文にならって記載をお願いいたします。


(例文)

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>~(←ココに修正箇所を引用する)

この部分は、(あきらかな誤用orきわめてわかりにくい表現or前後の文脈にそぐわない内容、等)であるため、「~(←ココに修正の内容を記入する)」と変更してみてはいかがでしょうか。

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 以上の形式で送っていただければ、こちらで妥当と判断した場合にのみ、本文に修正を加えます。

 みだりに修正を試みることなく、校閲作業者としての節度を保ってお読みいただけると幸いです。

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